大館駅「から揚げ鶏めし」(650円)~真冬のみちのく・とりめし雪中行軍④【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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bl170104-1(花輪線キハ110)

花輪線のキハ110

岩手・盛岡の郊外にある好摩(こうま)と、秋田県の奥羽本線・大館(おおだて)の間100キロあまりを結ぶローカル線・花輪線。
10年前からは、JR東日本エリアではおなじみのキハ110系気動車が活躍しています。
岩手側では、全列車が好摩からIGRいわて銀河鉄道(旧東北本線)に乗り入れて、県庁所在地・盛岡まで直通運転しています。
列車は各駅停車のみで、およそ3時間をかけて全線を直通する列車は、1日わずかに6往復。
これは東北自動車道が並行しているためで、盛岡~大館間は、高速バスでも行くことが可能で、しかも、毎時1本の便が確保され、所要時間はおよそ2時間半となっています。

bl170104-2(十和田南駅)

十和田南駅

鉄道が劣勢に立たされている状況を見ると、やはり心情として、鉄道を応援したくなるもの。
飛行機、新幹線、在来線、バス、船の旅など、すべてを比較して、私の感想としては「在来線の鉄道旅」が、一番体が疲れないんです。(感想には個人差があります)
しかも在来線には、100年以上の歴史がありますから、路線自体に様々なストーリーがあって、乗っているだけでも、大いに興味がそそられます。
花輪線の中で、私が特に興味がそそられるのが、「十和田南(とわだ・みなみ)駅」。
十和田南駅は、所在する秋田県鹿角市を代表する駅ではないのですが、花輪線に特急や急行などの優等列車があったとしても、必ず停車しないといけない駅なんです。

bl170104-3(十和田南駅構内)

十和田南駅構内

実はこの駅、普通の途中駅なのに、「スイッチバック式」の駅。
このため盛岡から大館へ行く列車、大館から盛岡へ行く列車共に、必ず進行方向が変わります。
スイッチバックが今でも残っている駅の多くは、山の中など急勾配のある場所となっています。
十和田南駅は、特に勾配のある場所ではないのですが、その昔、十和田南駅から北へ鉄道を延伸する計画があったのだそう。
しかし、その計画が果たせないまま、結果としてスイッチバック式の駅が残ったというんですね。

bl170104-4(十和田南駅)

十和田南駅のホームから、その先に見える車止めを望みます。
私が乗った列車も、運転士さんと車掌さんが入れ替わるため、4分停車しました。
昔はこの停車時間に、十和田南駅でも「錦木おこわ」という手作りの駅弁が売られていました。
十和田南駅からは昔、十和田湖へのバスも発着しており、観光客の需要もあったんでしょうね。
残念ながらずいぶん昔に駅弁は無くなってしまいましたが、5年ほど前に花輪線の活性化イベントで1日限りの復活をしたことがあったようです。

bl170104-5(十和田南駅)

十和田南駅、大館方面の線路を望む

昭和63(1988)年だったと思いますが、TV番組で「錦木おこわ」の調製風景を放映していました。
当時はまだ中学生だった私ですが、1つ1つ手作りで作られていく駅弁に、「駅弁1つにここまで手間をかけているんだ!」と感銘を憶えた記憶があります。
ホンモノの駅弁は、時間が経っても、人々の記憶に残るもの。
十和田南という駅名を聞くと、今ある駅弁を1つでも多く守っていきたいという気持ちになります。

bl170104-6(から揚げ鶏めし)

から揚げ鶏めし

そんなこともあって、花輪線に乗る時は、やっぱり駅弁を食べたいのです。
今回は一昨年(2015年)登場、大館駅弁・花善の「から揚げ鶏めし」(650円)をご紹介!
お店のお客様アンケートで、食べたい鶏料理の1位が「から揚げ」だったことにちなんで、この駅弁の開発に至ったといいます。
元々、花善では、昭和36(1961)年の特急「白鳥」号の運行開始以降、昭和40年代にかけて、「若鶏弁当」の名前で唐揚げが2個入った駅弁を販売していた歴史もあります。
その意味では、歴史ある駅弁が、今風にアレンジされて復活を遂げたともいえそうです。

※参考:「花善」公式フェイスブック、「駅弁」(田崎乃武雄・著)

bl170104-7(から揚げ鶏めし)

から揚げ鶏めし

花善の「から揚げ鶏めし」をいただくのは、およそ1年ぶりですが、この1年で掛け紙がちょっと変わりました。
それというのも去年6月、この「から揚げ鶏めし」が、国際的な品評会「モンドセレクション2016」で駅弁業界初となる「銀賞」を受賞したのだそう。
これを受けて、掛け紙にも、誇らしげに「モンドセレクション」の文字が躍るようになったんですね。
弁当の構成は、花善ではおなじみの「鶏めし」が半分、残りは2種類のから揚げと筍の漬物(葱塩味)が入っています。

bl170104-8(から揚げ鶏めし)

から揚げ鶏めし

から揚げは、鶏むね肉の竜田揚げが3個と、ゆず胡椒風味の鶏手羽先1本。
むね肉には、白髪ねぎと糸唐辛子が載っていて、鶏めしの煮汁、醤油などを使って作られた、花善70余年“秘伝のタレ”をかけていただきます。
このタレをかけて食べる時の「ジュワ!」な食感がたまりません。
それでいて、「650円」という駅弁としては安価な価格設定。
思わず手を伸ばさずにはいられない、鶏肉を熟知した鶏めし屋さんのから揚げ駅弁です。

bl170104-9(花輪線キハ110)

花輪線のキハ110

盛岡から花輪線に乗る時は、列車がIGRいわて銀河鉄道のホームから発車します。
このため、JR東北本線などから乗り継ぐ場合は、盛岡の駅ビルの中を歩くため、乗り換えに若干時間がかかります。
また、「青春18きっぷ」をはじめとしたJR線のみ有効のきっぷでは、IGRいわて銀河鉄道の路線となる盛岡~好摩間(650円)が別料金となる点も注意が必要です。
でも、のんびり、ゆったり、まったりできるローカル線・花輪線の旅。
雪景色の中を走る列車の中で、駅弁片手に寛ぎの時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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