生きるということは【瀬戸内寂聴「今日を生きるための言葉」】第139回

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波は去ったあとに、ときおり可憐な貝殻を濡れた砂に置いていったりします。
人との出逢いのあとには、必ず想い出が残されます。
たとえ傷つけ合った別れでも、想い出のなかでは美しかったことや、
なつかしかったことが渚の桜貝のようにちりばめられているものです。
生きるとは、人に出逢い、やがて別れていくこと。
限りなくくり返し渚に打ち寄せ、去っていく波の動きに似ています。

瀬戸内寂聴

撮影:斉藤ユーリ


出典:『生きる言葉 あなたへ』光文社文庫

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