アナタが描いた大切な人への「空のメッセージ」は何ですか?【雑学と音楽 ザツオン Vol.4】

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音楽にまつわる雑学を楽しむコラム【ザツオン】
今日はその第4回目

11月、里山は赤く染まり、街角は黄色い絨毯が。
天高く馬肥ゆる秋は本番。
そんなわけで!今回のザツオンは「晴れた秋の空に描いたそれぞれの想い」について。

ウォーター・マーク,アート・ガーファンクル

なのに!いきなりの海岸ジャケ写真です。すいません。
アート・ガーファンクルの3枚目のソロ・アルバムです。
名作『ウォーター・マーク』(1978年)A面1曲目「クライング・イン・マイ・スリープ」からB面ラストの「ウッデン・プレーン」まで12曲。
ポール・サイモンやジェームス・テイラーがゲスト参加したサム・クックのカバー「ワンダフル・ワールド」も素敵すぎ!
ジャズ・サクソホン巨匠のポール・デスモンドの名演奏も。
アートの幸福感あふれまくり満面笑顔な写真です。

当時、彼は1975年に出会った女性と付き合っていました。
このアルバムの素晴らしいジャケット写真を撮影した女優であり写真家だったローリー・バードです。
サイモン&ガーファンクルのヒット「4月になれば彼女は」は後年になるとローリーに捧げられた名曲となりました。
女優としてのローリー・バードの姿が観られる映画は『断絶/Two-Lane Black-Top』(1979年 監督:モンテ・ヘルマン)。
ジェームス・テイラー、デニス・ウィルソンの運転手/整備工が、ローリー扮するヒッチハイク少女と旅するロードムービーです。

断絶-Two-Lane-Black-Top

しかし!アルバム『ウォーター・マーク』をリリースした1年後の1979年、ふたりが住んでいたアパートでローリーは自らの尊い命を断ってしまうのでした。
どんなことが原因だったのでしょうか?
グラフック・デザイナー、リンダ・グロスマンとの最初の結婚に失敗していたアートがローリーとの再婚に二の足を踏んでいたからとも言われています。
アートの心はズタズタだったのでしょう。
彼女が亡くなってからリリースされた、このアルバム『シザーズ・カット』(1981年)モノクロ写真、首にバンドエイドを貼ってますね。
その裏ジャケットには顔の写っていない女性の写真。
彼女がローリー・バード。

シザーズ・カット,アート・ガーファンクル

シザーズ・カット,アート・ガーファンクル1

エンジェル・ハート,ジミー・ウェッブ

アルバムタイトル曲「シザーズ・カット」を書いたのがソングライター、ジミー・ウェッブです。
自らのアルバム『エンジェル・ハート』(1982年)ではさまざま恋に揺れる男女の姿を歌っているのですが「エンジェル・ハート」「シザーズ・カット」はアートとローリーのことを歌っているようでなりません。
そして、悲劇から立ち直れない親友のためにさらに言葉を紡いでメロディを編み上げました。
「スカイライター」という曲です。
♪この広い世界で煙を追いかけて堂々めぐり。
僕はスカイライター、まだ君のことを忘れられない。
もう地上に戻ることはないんじゃないかとさえ思う♪♪
大空に飛行機雲を作りだして文字や絵を描くパイロット。
恋人を失って心が空を浮遊し続けるやるせない気持ち。
この曲が作られたのは1987年ということですから、テニス仲間でもあったアートとジミー・ウェッブは悲劇から8年間もの長い間に悲しみと労りというラリーを無言で打ち込み打ち返していたのかも知れません。
この曲が聴けるのは『アップ・ティル・ナウ』(1993年)

アップ・ティル・ナウ,アート・ガーファンクル

リリースされていたソロ・アルバムからのヒットの他、バージョン違いや新曲を収めたコンピレーションです。
それまで「スカイライター」はライヴでは歌われていたもののスタジオ録音されたことはなく、ここで収録されているのはイギリスのロイヤル・アルバート・ホールで披露されたライブバージョンというのも印象的です。
あのジョー・コッカーの名唱でおなじみ「ユー・アー・ソー・ビューティフル」のピアニスト、ニッキー・ホプキンスの指先から溢れる美しく切ない旋律。
アートの歌が終わったあとに長いピアノの音が続くのは、パイロットが作り出した飛行機雲のようでもあります。
そして、その白い雲も時間とともに薄れやがて消えていく…。
ジミー・ウェッブは1946年生まれ。アートより5歳年下。
20歳で「恋はフェニックス」(あえて邦題で!)を発表。
「ビートでジャンプ」「ウィチタライン・マン」
「マッカーサー・パーク」「P.F.スローン」などなどなど…
人々の心を踊らたり切なくさせる数々の名曲を創り上げた超絶ウルトラ職人芸のシンガーソングライター/アレンジャーです。
アートの全米ヒット「オール・アイ・ノウ」を書いたのもジム先生です。
彼のライヴをニューヨークのライブハウス「ボトム・ライン」で観た超ラッキー経験があるのですが、あまりの感動で涙腺完全崩壊したことを記憶しています。
(それも!ローラ・ニーロとのピアノ2台なステージでした!)
ジミー・ウェッブ自身による「スカイライター」が聴けるのは『トワイライト・オブ・ザ・レネゲイズ』(2005年)
アートの歌声とはまた違った魅力です、聴いてみて下さい。

トワイライト・オブ・ザ・レネゲイズ,ジミー・ウェッブ

空に憧れて空を駆けていく あの娘の命は ひこうき雲♪
小さな溜息で、大きな叫びで、人間は晴れた秋の空にそれぞれの想いを描きます。
アナタが描いた大切な人への「空のメッセージ」は何ですか?

音楽のもうひとつの楽しみ方を暗中模索な『雑学と音楽 ザツオン』!
第4弾いかがでしたでしょうか? 次回もお楽しみに!

神部恒彦(a.k.a 北大路おさんどん)
1960年北海道生まれ。
1981年「オールナイトニッポン」のADとして放送業界で活動開始。
音楽やドキュメンタリーを中心としたテレビ・ラジオの構成/選曲を担当する。
1992年いったん全ての仕事を終了してシベリア鉄道で渡欧。
1年間に渡りフランス/スペインを拠点に欧州各国の景勝地や美術館を見て回る。
さらに渡米、自動車でアメリカ大陸を横断しながら様々な音楽聖地を巡って帰国。
幅広い音楽/雑学知識と好奇心でジャンルを問わない番組/イベント構成を手がける。
趣味:大相撲/F-1観戦、全国各地の居酒屋訪問と見知らぬ人々との会話。

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