日中首脳会談~握手の裏にあるそれぞれの思惑

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月24日放送)にジャーナリストの有本香が出演。日中首脳会談での両首脳の様子を伝えるニュースについて解説した。

日中首脳会談~握手の裏にあるそれぞれの思惑

日中首脳会談=2019年12月23日 写真提供:時事通信

日中首脳会談、習近平氏「両国の関係を新たな段階へ押し上げたい」と述べる

北京を訪問中の安倍総理大臣は23日、およそ45分間にわたり習近平国家主席と首脳会談を行った。会談冒頭、習近平氏は「この1年、両国の関係が持続的に改善し、発展している。安倍総理と緊密な意思疎通を保ち、両国の関係を新たな段階に押し上げたい」と述べた。一方、総理は2020年春の習近平主席の国賓訪日を「極めて重視している」と発言している。

飯田)24日は日中韓首脳会議に出席、韓国の文在寅大統領とも首脳会談の予定ということです。新聞を見ますと、習近平氏に要求をしたと書いているのが読売、産経、日経。朝日、毎日、東京は習近平氏の国賓来日が一面の見出しというところですね。

日中首脳会談~握手の裏にあるそれぞれの思惑

中国・北京で建国70周年記念軍事パレードに参加する(前列左から)習近平国家主席、江沢民元国家主席、李克強首相(中国・北京)=2019年10月1日 写真提供:時事通信

日本国民は「日中両国の関係が改善されているという実感」を持っていない

有本)朝刊各紙を見て気づくことは、安倍総理と習近平国家主席のツーショット写真があるのですが、あちらは笑顔で、安倍さんは笑顔を見せていませんよね。かつては中国首脳によく言われたことなのですが、日本の首脳と笑顔で握手するような写真が出ると、国内で反発が大きくなるということでした。いまの日本国民の中国に対する反発は、中国の反日とは違うのですが、現在の情勢で習近平国家主席と笑顔で握手されては、あまりいい気分ではないですよね。習近平国家主席は「この1年、両国の関係が持続的に改善し、発展している」と言っているのですが、日本国民にはその実感がまったくないと思います。日本側から呼びかけて、「2020年に習近平国家主席を国賓で迎える」ということに対して、満足しているという意味で言ったのかもしれませんが、尖閣諸島に中国の公船が我が物顔で出入りするのが当たり前になっていますよね。これはずっと日本側が看過して来て、向こうは船を大きくし、接続水域に入る頻度も明らかに高くなっています。更に、中国で拘束されている日本人で、まったく経緯や理由を明確にされないまま拘束されている人が、2桁はいるわけでしょう。中国側は国内問題だと言うでしょうが、香港問題や新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する人権弾圧の問題、チベットも依然として同じような状況です。ですから日中の関係が改善したと、多くの日本国民が感じているとは思えないのです。

日中首脳会談~握手の裏にあるそれぞれの思惑

香港理工大前の路上で、大学に突入しようとする警察車両に火炎瓶を投げる若者たち=2019年11月17日夜、香港(共同) 写真提供:共同通信社

日本政府の思惑は朝鮮半島への対策

有本)なぜ日本政府はこれほど中国との関係を、あたかも改善しているかのように見せなければいけないのかという話です。特に、2020年春に習近平国家主席を国賓で呼ぶということになれば、安倍総理の底堅い支持層の人たちからは、相当の反発があると思います。それでもやらなければいけないのはなぜかと言うと、1つはやはり朝鮮半島の問題ですよね。

飯田)北朝鮮との。

有本)韓国はほとんど頼りになりません。北朝鮮情勢を動かす目論見が日米の間にあって、そのなかで中国に反発されると困るというところはあると思います。それから、もう1つはロシアです。中露がいま以上に接近するのは困るということは、これもまた日米で一致している思惑だと思います。いま軍事的・経済的に中国とロシアは距離を詰めて、蜜月的になっているようにも見えます。一定の距離を開かせておきたいということと、もう1つは2020年に相当な議論になる、まともな議論にならず反発の声だけが大きくなると思いますが、日本にミサイルを配備するということです。アメリカはアジアに配備すると言うけれど、もう日本しかないでしょう。

飯田)韓国がこれだけ頼りにならないとなると。

日中首脳会談~握手の裏にあるそれぞれの思惑

秋元司衆院議員の事務所からダンボール箱を運び出す捜査関係者ら=2019年12月19日午後、東京都江東区 写真提供:産経新聞社

東京地検特捜部が秋元議員事務所を家宅捜索~これは入り口に過ぎない

有本)それから、距離や米軍基地の状況を考えても、アジアへの新たなミサイル配備は対中国ですからね。ロシアはほとんど眼中にないわけだから、それを考えると日本に置くしかありません。事前に中国と波風を立てるよりはということで、国賓として呼ぶということもあるでしょう。日中関係が政治的によくなっているように見える一方、特捜が自民党の秋元議員の事務所に入りました。家宅捜索するということは、けっこうなことを掴んでいる。私たちから見れば、ずっとじりじりとしていたところではあるけれど、数百万円の現金を秋元さんと関係する中国系企業が持ち込んだというだけでは、特捜も家宅捜索まではしません。そこは入り口で、要するにチャイナコネクションですよ。これはむしろ、自民党のなかに濃厚にあるわけですね。与野党問わず、この辺りに司法の手が入って行くと、中国側としても面白くない部分はあるわけです。これで日本国内の政争も、相当に動くと思います。自民党のなかの勢力図も変わって行くと思います。

飯田)自民党のなかで中国との関係が強いとなると、やはり二階幹事長です。何百人と引き連れて中国へ行ったりしています。

日中首脳会談~握手の裏にあるそれぞれの思惑

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

チャイナコネクションにつながる先はどこなのか

有本)それは定例ですからね。二階幹事長は秋元議員のことを記者から質問されたときに、相当な不快感を示しておられるけれども、中国と政界との関係を取材して来た人にしてみると、やっとかと思うところはなきにしも非ずなのですよ。秋元議員のことは、周辺の情報がいろいろと出て来ています。報道で出ているのはごく一部でしかないけれど、そのなかで気にしなければいけないのは、秋元議員の政治資金収支報告書のなかに、これは旅費・交通費だと説明されていますが、香港の会社に200数十万円を旅費・交通費として支払った記録があると。この会社を調べてみると、実は実体のないペーパーカンパニーなのです。こんなことがあるでしょうか? 深圳に出張するにしたって、中国はすぐ隣の国です。旅費・交通費にそんなお金をかけるのは納得が行かないし、それを日本の会社で手配するならまだわかりますが、香港の実体のない会社に、国会議員の旅費・交通費を支払うなんてことがあると思いますか?

飯田)一体、本来の目的は何だったのだということになりますね。

有本)お金を貰ってしまったのなら言語道断ですが、そんなにわかりやすい話ではなくて、込み入った人脈とお金の流れを特捜が明らかにしてくれるのであれば、日本にとっては大きな国益に結びつきます。つまり、流れて行っている国益が止まるということです。中国に対しても、非常に大きなけん制になると思います。

飯田)表で握手しているときには、裏でいろいろなことがあるということですね。

有本)表に出て来ないことの方が多いですが、中国の場合は民間企業と言っても、政府の意向が反映されます。日本でも政界に入っているチャイナコネクションには、日本の民間人が深く関わっています。

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