ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

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【ペットと一緒に vol.177】by 臼井京音

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

ニッポン放送「ペットと一緒に」

犬との暮らしを待ち望んでドッグカフェに通っていた久保田充さん・妙子さん夫妻のもとに、ある日、真っ白な“ウサ耳”の保護犬との縁組の話が持ち上がりました。

今回は、約3年前に久保田家の一員になり、現在はセラピー犬としても活躍する、元保護犬のストーリーをお届けします。

 

ドッグカフェで犬との暮らしをシミュレーション

久保田さん夫妻は、犬と触れ合いたくて近所のドッグカフェに通っていました。

「我が家に犬を1日でも早く迎えられるのを夢見ながら(笑)。夫は子供時代に“りん”という名前の犬と暮らしていたそうなんですが、私は犬との生活は未経験。でも、カフェでの触れ合いでいろいろと学べました」(妙子さん)

久保田さん夫妻は、新しい飼い主を探している保護犬が多いことも知り、いつしか迎えるならば保護犬にしようという思いも固まって行ったそうです。

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

「ボクには新しいおうちはできるのかなぁ」

「いくつかの動物愛護団体の里親募集に申し込みましたが、夫婦共働きで留守番時間が長めだという点で、譲渡審査に落ち続けていました」(充さん)

保護犬を迎えることを諦めかけていた久保田さん夫妻でしたが、行きつけのドッグカフェのオーナー経由で、ある日、保護犬を紹介できるという話が舞い込んで来ました。

「オーナーもきっと、私たちの犬への思いの強さや、次第に慣れて来た犬の扱いを見て信用してくださったのでしょう。本当にうれしくて、早くそのワンちゃんに会いたくて仕方ありませんでしたね」と、妙子さんは当時を振り返ります。

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久保田夫妻が迎えることになった保護犬

ボロボロで犬種も不明の犬との初対面

久保田さん夫妻がその保護犬の写真を見てみたところ、犬種は不明。まだら模様で、連なった毛束がモップのようだったと言います。

「都内で保護されるまで、だいぶ放浪したのではないでしょうか。マイクロチップ挿入済でしたが、捜索依頼も出ていなかったようで、結局は飼い主さんを特定できなかったようです」と、充さん。

「一時預かり中の動物病院に面会しに行ったら、すでに“りんたろう”と名付けられて、かわいがられているのを知りました。夫が暮らした“りん”との縁を感じ、『これって、運命かも!』と、夫婦で盛り上がってしまいましたね(笑)」

初めて会う久保田さん夫妻にも、りんたろうくんは尻尾を振ってくれたとか。犬を迎える準備を整えていた久保田さん夫妻は、こうしてりんたろうくんを家族の一員として引き取りました。

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トリミングをしてみたら真っ白な犬だったりんたろうくん

久保田家に到着しても、りんたろうくんは緊張した様子を見せずに、すぐにリラックスしたと言います。

「ミニチュア・シュナウザーのミックスではないかと、譲渡の際に言われました。吠えやすいかもと伝えられましたが、ほとんど吠えることもありません。あ、留守番トレーニングを自宅で行ったとき、最初は少し鳴きましたね。でも、それもすぐにおさまりました」(充さん)

何の苦労もなく久保田さん夫妻になじんだ、りんたろうくん。その明るくフレンドリーな性格のおかげで、散歩に出るとすぐに“ワン友”ができたそうです。

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

推定5歳で、久保田家の一員になりました

セラピードッグの試験に挑戦

「人も犬も大好きで怖がらないから、りんたろうくんはセラピードッグに向いているんじゃない?」

久保田さん夫妻は、愛犬と高齢者施設などへの訪問活動を行っている“犬友”に、あるときこう言われたとか。

「え? りんたろうがセラピー犬に?」と、思いがけない提案に妙子さんは目を丸くしたと語ります。とは言え、興味を抱いた久保田さん夫妻はさっそくアニマルセラピーについて調べ、りんたろうくんと一緒にセラピー活動をしたいという願いが芽生え始めたそうです。

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

セラピードッグは人が好きであることが絶対条件

「人の顔を舐めてしまう犬は、適正テストに合格できないんですよ。りんたろうは、その点でも問題ありませんでした」

そこで、“ワン友”のメイちゃんが所属する「NPO法人 アニマルセラピーwithワン」のテストに向けて、お座り、お手、人と歩調を合わせてゆっくり歩くといったレッスンを開始。

こうした努力が実り、りんたろうくんは試験に合格して、セラピードッグとしての新たな“犬生”の幕も開けることになりました。

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「毎日2回の散歩は楽しみがいっぱいだよ」byりんたろうくん

りんたろうくんの稼ぎを保護犬のために寄付

大きな立ち耳を持つりんたろうくんは、散歩中に“ウサちゃん”と呼ばれることもあると言います。

「月に1回ほどセラピー活動でまわっている高齢者施設でも、『このコは、何の犬種?』、『ウサギみたいね』、『昔、うちにも白い犬がいたのよ』と、入所者の方々の目を引くようなんです。話しかけられると、りんたろうはニコニコしてそばに寄って行きます」(妙子さん)

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

特徴的な見た目で入所者を虜にする、りんたろうくん

久保田さん夫妻が印象に残っているのは、ずっと無表情で遠くを見つめ続けていたひとりの入所者のもとへ、りんたろうくんが近づいて行ったときのこと。

「そのおばあさんの顔に、りんたろうがすーっと顔を近づけたところ、りんたろうに視線が移ると同時に、にっこりと笑顔になられたんです」(充さん)

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

りんたろうくんのセラピー活動の様子

りんたろうくんが所属する団体のセラピー活動の際には、交通費などの経費が支給されます。久保田さん夫妻はそれを貯金して、あることに使おうと決意したそうです。

「犬や猫の保護活動に役立ててもらおうと思います。りんたろうの先輩セラピー犬である、メイちゃんも元保護犬です。2頭のように、セラピー犬になってくれる保護犬が増えてくれたら、うれしいですね」(妙子さん)

「保護犬は、気むずしいとか人に対して攻撃的だと思われているかもしれません。でも、りんたろうのように、人懐っこくて穏やかな性格の保護犬もたくさんいます。保護犬のことをもっとみなさんに知ってもらえるように、りんたろう、がんばろうな!」

そう口を揃え、笑顔を見せる久保田さん夫妻の真ん中にちょこんと座るりんたろうくんもまた、夫妻の顔を交互に見上げながら微笑んでいるかのようでした。

ウサ耳の保護犬がセラピー犬に~薄汚れた放浪犬が手に入れた第2の犬生~

現在8歳、これからも笑顔あふれる日々を!

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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