米・民主党がトランプ大統領の弾劾訴追を正式表明~それでもトランプ大統領が安泰である理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月6日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米・民主党がトランプ大統領の弾劾訴追を表明したニュースについて解説した。

米・民主党がトランプ大統領の弾劾訴追を正式表明~それでもトランプ大統領が安泰である理由

米ワシントンで、弾劾訴追について述べるペロシ下院議長=2019年12月5日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

アメリカの民主党がトランプ大統領の弾劾訴追を正式に表明

アメリカの野党民主党のナンシー・ペロシ下院議長は5日、トランプ大統領に対する弾劾条項の起草を議会幹部らに指示した。これによってトランプ氏が正式に弾劾されることが確実となった。

飯田)ペロシ氏はトランプ大統領のウクライナ疑惑について、「事実に争いはない」として下院司法委員会にトランプ氏の弾劾訴追状の起草を指示したということです。「安全保障を犠牲に、個人の政治的利益のために権力を乱用した」とも語っています。

宮家)私は、今年(2019年)の1月に産経新聞でコラムを書いた際、「2019年に起きないこと」というところで、「弾劾の訴追」と書いてしまったのです。これだけは外れました。しかし、それには理由があって、当時はウクライナ問題が出て来る前でしたから、ロシアゲートだ何だと言っても決定的な証拠がなかった。そんな段階で弾劾だと言っても、逆に弾劾を政治利用しているということになり、本選挙で民主党は不利になるという判断でした。ペロシ下院議長もそう考えていたと思います。

米・民主党がトランプ大統領の弾劾訴追を正式表明~それでもトランプ大統領が安泰である理由

米ケンタッキー州の選挙集会で演説するトランプ大統領=2019年11月4日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアゲート疑惑とは質が違うウクライナ問題

宮家)ところが、このウクライナ問題は少し質が違う。大統領が電話をかけたのも事実だし、記録もあって、中身も相当ややこしいことを言っているわけですから。そうなるとペロシさんとしても、今回は対外的に十分説明できるのではないかと考えたのでしょう。これだけ証拠と材料があって、何もしないというわけには行かない。大統領選挙になっても弾劾した理由は説明できるだろうと思ったのでしょう。

しかし有罪になることはない~理由はアメリカの大統領選挙システム

宮家)ただ、「2020年に起きないことを書け」と言われたら、そのなかには「弾劾裁判有罪」と書きます。有罪にするには上院の3分の2の賛成を取らなくてはいけない。いま民主党は上院では少数、共和党が多数です。勿論民主党は3分の2を取っていないけれど、もし民主党だけではなく一部の共和党の上院議員が寝返ったら、3分の2もあり得ます。でも、そんなことは起きないだろうと言われている。

米・民主党がトランプ大統領の弾劾訴追を正式表明~それでもトランプ大統領が安泰である理由

27日、米ホワイトハウスで「イスラム国」の指導者バグダディ容疑者について話すトランプ大統領(ロイター=共同)=2019年10月27日 写真提供:共同通信社

結局トランプ大統領は安泰

宮家)その最大の理由は、アメリカの大統領選挙のシステムです。上院は任期が6年で、2年おきに3分の1ずつ改選される。100人ですから、33人が改選されるわけです。今回は、改選を迎える共和党の上院議員が20数人いますが、彼らは再選しなくてはいけない。ところがアメリカの大統領選挙、連邦議会選挙など主要な選挙でいちばん難しいのは、予備選挙なのですね。予備選挙は本選挙とは違うから、政治的に元気のいい人たちが行って投票するわけです。トランプさんからすれば、「ここに共和党の上院議員がいるけれど、こいつは弾劾裁判で自分を有罪にしようとしている。『ネバートランプ(反トランプ派)』のとんでもない奴だ」と批判します。そうなると、多くのトランプ支持者が予備選挙に行って、共和党の別の候補を担いでトランプに批判的な現職を落としてしまうことがあり得るわけです。

飯田)そうですね。

宮家)現職なのにおかしいでしょう? しかし、そのように実績のある人でもひっくり返せるくらいのシステムなのです。同じようなことは民主党でも言われていて、やはり予備選挙では活動家の左派のリベラルな人たちがより多く投票する可能性が高いですから、下手をすると本選挙では勝てないけれど、予備選挙では勝てる偏った極左の候補が出てしまうのです。もし、トランプさんにそういう脅しをかけられたら、再選したいと思う共和党上院議員はトランプさん支持で行かざるを得ない。そうすると3分の2は絶対に取れない。つまり、トランプさんは「安泰」なのです。

飯田)予備選のシステムは、もともといい人を選ぶための党内のシステムだったはずなのに、いまは世論をより振ってしまうシステムになっている。

宮家)昔は党大会が各州にあって、そこでは密室で候補者が決まっていた。それはおかしいということになり、公開の場で予備選挙をやるようになりました。しかし、そうすると少数の偏った人々にアピールできる限られた人しか予備選には出られず、そうした限られた候補が選ばれる可能性が出て来てしまった。要するに、完璧なシステムはないのです。

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