米で香港人権・民主主義法が成立~中国本土へ与える残念な影響

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月29日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。香港情勢について解説した。

香港中文大で「激戦地」となった二号橋で警官隊の攻撃に備える若者たち=2019年11月13日 写真提供:産経新聞社

香港市民が人権法成立のアメリカに感謝

アメリカで「香港人権・民主主義法」が成立したことを受け、香港では28日、デモに賛同する市民から喜びの声があがった。この法律が民主主義を求めるデモ隊の強力な後押しとなる反面、中国や香港政府には区議選での民主派圧勝に続く逆風となりそうだ。

飯田)28日、番組が終わった直後に速報が飛び込んで来ました。

香港の金融街セントラルで抗議活動する市民ら。香港区議会選挙では民主派が圧勝した=2019年11月25日(共同) 写真提供:共同通信社

警戒心の高まる中国本土~それほど簡単なものではない

宮家)香港区議選は政治的にはあまり意味のない、非常にローカルなものです。象徴的な意味はあるかも知れませんけれども。少し冷たい言い方かもしれませんが、今回民主派は勝ち過ぎたと思うのです。習近平さんや香港政庁の人からすれば、「これはまずい、本当に自由にやらせたらどんなことになるかわからない」と、むしろ警戒感の方が高まってしまうことになると思います。これで民の声が増えるから民主化が進むのだろうと思っている人がいたら、それは逆だと思います。恐らく北京は「これは絶対に潰さなくてはいけない」と心に決めたでしょう。もちろん民主派学生の気持ちはわかるし、彼らがやっていることは正しいのですよ。しかし、政治はそんなに簡単ではありません。トランプ大統領が人権法案にサインするかしないかという話も、中国に配慮するかどうかなどと言ったって、実はトランプさんは香港にはそれほど関心がないと思います。あの法案は上下両院で、しかも超党派でできた法律です。黙ってサインして、その代わり習近平さんに敬意を表すなどと言って、リップサービスをする程度でいいですよ。しかしリップサービスをしようがしまいが、北京からすればトランプさんは「法律を承認した」、それだけのことですから。当然ですが激烈な不満なり、反対を表明するわけです。

飯田)いろいろなところから。

宮家)では、トランプ大統領に対し中国は何をするのか。私は、「やってごらん。本当に報復をするのか」と聞きたい。いま米中で貿易交渉をやっているけれど、対米報復をやったら米中合意の第1段階がすっ飛ぶでしょう。確か中国の報道官でしたが、具体的に制裁で何をやるのかと言ったら、黙ってしまったという話もあります。それはそうですよね。いまはまだ「口」だけの段階です。あの国は大きな国ですから、対応を決めるのに時間がかかるのですよ。

24日、区議会選挙の投票所となった新界地区・沙田の公民館(奥)周辺で、長蛇の列をつくる香港の有権者=2019年11月24日 写真提供:時事通信

中国にとって大きいのは、香港への優遇措置の停止

飯田)制裁に関しては資産の凍結や、香港に与えている関税など、いろいろな優遇を取り消すのではないかという話もあります。

宮家)それがいちばん大きいだろうと思います。香港がアメリカから特別扱いをされることで、いろいろな形で中国にとって有利になっている。中国もそれをよく理解しています。香港は中国の一部なのだけれども、いろいろ抜け穴がある点や、マネーロンダリングができるところなど便利に利用しています。しかも外に対しては自由なふりができるという立場、地位が香港にはあったのだけれど、アメリカはそれをはく奪するぞと言っているわけですから、中国も本気にならないといけない部分もあるかもしれません。

香港理工大前の路上で、大学に突入しようとする警察車両に火炎瓶を投げる若者たち=2019年11月17日夜、香港(共同) 写真提供:共同通信社

中国本土が狙うのは香港を現地化させること

宮家)しかし北京から見れば、香港にあまり跳ね上がられても困るし、いずれ深圳の経済圏に吸い込まれてしまう可能性が高いわけだから、「熟柿(じゅくし)作戦」で待っているのがいちばんいいと思います。北京が武装警察を深圳の近くに集結させて、「武力介入をやるぞ」というビデオを流しましたが、あんなものをやるわけがないのです。やったとたんに天安門パート2になって、また経済制裁を受けてしまうのですから。中国がいまやりたいのは香港化、ローカライズです。問題を現地化して、弾圧、取り締まりは現地の警察に全部やらせる。だから香港警察は突然ピストルを撃つようになったでしょう。あれは問題を現地化をさせ、北京と切り離そうとしている証拠だと思います。

香港でデモ隊の1人(中央)に発砲する警官(手前左)(2019年11月11日公開の映像より)AFP PHOTO / CUPID NEWS AFP=時事 写真提供:時事通信

中国共産党が介入するとき

宮家)ただ、問題はそれで収まらない場合です。中国が介入しないといけなくなるとすれば、香港独立や、香港警察が寝返ってしまった場合です。そういうことがあれば、中国共産党の統治の正当性の1丁目1番地ですから、中国は必ず介入しますよ。しかし、今回そこまでは行かないだろうと思います。私が北京だったら、熟柿作戦で香港が徐々に弱くなるのを見る。そうでなくても旅行者はいないのだし、金融センターとしての機能もどんどん薄れて行くかもしれない。そうすれば中国は何もする必要がないではないですか。学生は大学キャンパスに籠っているのですから、簡単につぶせばいいのです。70年安保と同じです。過激化、暴力化だけが闘争ではないということを、我々は70年代にわかったけれども、香港の学生もいずれわかるようになると思います。

飯田)これは経済に対する影響のようなもので、香港はいずれ持たなくなって行くということですよね。

宮家)それが最大のポイントです。なぜあれだけの運動が続いているかと言うと、香港のビジネス界が支援しているからだと思います。籠城している学生には衣料品や飲み物などの差し入れがたくさんある。普通の市民、もしくは学生だけではできません。必ずスポンサーがいるということです。その人たちが風向きをどう読むか、これが来年(2020年)にかけての大きなポイントになると思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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