トランプも本気では喧嘩しない~「香港法案」可決も米中関係に影響は少ないか

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(11月21日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。香港人権民主主義法案のアメリカ議会通過について解説した。

トランプも本気では喧嘩しない~「香港法案」可決も米中関係に影響は少ないか

ホワイトハウスで、記者団に話すドナルド・トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2019年10月3日 写真提供:時事通信

大統領選挙控えるトランプに「署名しない」というチョイスはない

香港で抗議活動が激しくなるなか、アメリカの議会下院は上院に続いて香港での人権と民主主義の確立を支援する法案を賛成多数で可決した。トランプ大統領は中国との貿易協議への影響を懸念してきたが、一部のアメリカのメディアは署名する見通しと報じている。この他、議会下院では香港当局がデモ隊に対して使った催涙ガスやゴム弾などの香港への輸出を禁じる法案についても全会一致で可決した。

森田耕次解説委員)香港人権民主主義法案は、中国が香港に高度の自治を保障する一国二制度を守っているかどうか、アメリカ政府に毎年検証を求めるという超党派で出した法案です。下院が10月に同じような法案を可決していたのですが、上院が今月19日に全会一致で可決した法案と内容を調整して、改めて下院で可決されました。香港当局がデモ隊に対して使った催涙ガスやゴム弾などの香港への輸出を禁じる法案についても全会一致で可決しています。トランプ大統領はこの法案に対して拒否権を発動できるのですが、一部アメリカメディアは「署名するだろう」と伝えています。圧倒的多数で可決されたと。人権法案は下院では417対1で可決されたということですから、恐らくトランプ大統領も署名するのではないかと。一方で中国外務省は報道官談話でこの法案について強く反発しており、「報復措置を取る」という表明もしているのですね。

佐藤)トランプ大統領は署名しないというチョイスはないと思うのです。すべては大統領選挙が控えていますからね。署名しなければ弱腰だと思われるので、ここは強く見せると思います。他方で、香港がアメリカ製の催涙ガスやゴム弾を使うのかどうかです。そんなものは中国が自前でつくれます。ですから、これはほとんど意味のない制裁ですよね。中国側も対抗措置を取るということですが、やられたことと同じレベルというと実効性のないような対抗措置ですよね。お互いに人権については文句をつけているポーズを取っているだけですから、そんなに米中関係には影響を与えないと思います。

森田)米中の貿易協議も第一段階の合意、当初は11月のAPEC首脳会議に合わせて署名するのではないかと言われていたのですが、チリでAPECが開けなくなったことにより米中首脳会談が開けなくなったということで、この貿易協議の合意は来年に先送りする可能性があるとロイター通信が伝えています。まだ制裁関税の扱いで溝が埋まらない部分もあるようですし、香港情勢も影響してきているのでしょうね。

佐藤)それは確かにあるのですが、来年になると完全に大統領選挙モードです。中国には選挙がないですからね。そうなると、選挙の前に手仕舞いにしなければいけませんから、アメリカが譲歩するしかないわけです。このゲームは中国に有利に進むと思います。

森田)もしこの米中貿易摩擦が難航してしまってアメリカの景気に悪影響が出るようになると、トランプ大統領の再選も黄色信号が灯ってしまうわけですか。

佐藤)いろいろな形でポーズは取りながらも、本気では喧嘩しないということになりそうです。

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