対策あせる政府と進まない空き家活用 ~空き家を増やさない民間の対策。一筋の光とは?【ひでたけのやじうま好奇心】

By -  公開:  更新:

images (1)
(国土交通省HPより・イメージ)

「空き家対策特別措置法」が完全施行されてから、来月で1年。
「倒壊する危険がある」あるいは「衛生上害がある」空き家を市町村の判断で修繕や撤去の命令を出し、場合によっては取り壊しも認める、という新しい法律でした。

この施行を受けて、全国で最初に行政によって撤去されたのは去年10月。
持ち主が分からず、老朽化で倒壊の恐れのある危険な家でした。
この法律の意義はあるものの、問題解決には程遠い。

政府もそのことは重々承知で、国土交通省は先週の金曜日4月8日に、
「先駆的な空き家対策には総額1億2,000万円支払う!」
「応募期限は5月9日」
「10~20件の採択を想定」
といった対策を発表しました。

しかし、空き家は今後も増え続けると予想されている。
その発生原因の50%以上が「相続がきっかけ」。
住む人がいなくなった家をそのままにしてしまうのは、建て壊して更地にしてしまうと、固定資産税が最大6倍にアップするからです。

これを憂慮した政府は、16年度税制改正で、空き家の相続を対象とした特別控除を新たに設けました。
相続してから3年経過した年の年末までに、住宅を除却した後に土地を売却するか、住宅のみ、または土地と住宅の両方を売却すると、譲渡所得から3,000万円を特別控除する、というもの。
この特例によって、毎年6万4,000戸のペースで増えている空き家の発生を抑制することを目指しています。

では、『空き家にしておくのではなくて、いろいろと活用すればいいのではないか?』――確かに様々な利用法が始まっています。

たとえば・・・
○改装して「店」としてオープン
○「シェアハウス」として利用
○公民館のような「地域のコミュニティスペース」として
○グループホームなどの「介護施設」として ~こちらは厚労省も推進

・・・など利用法はいろいろあり、どれも良さそうに思えます。
しかし、こうした、用途を変えて住む場合は法律上、改築をしなければならないことが多く、おカネがかかる。
もちろん自治体が補助することも多くありますが、その歩みはのろのろ。

そもそも「空き家問題」で何が一番問題なのか、ハッと考えさせられる事象を紹介したいと思います。

東京23区でどこが一番空き家率が高いのか、ご存知でしょうか?
1位は、豊島区の15.8%。

豊島区は一人世帯が多く、人口は増えていますが、
それ以上に賃貸用の物件が需要を上回り余剰となっているのです。
その数、3万戸以上。
その一方で豊島区は、2040年までに、子どもを産める世代である20-39歳の女性の数が半分以上減少し、消滅する可能性のある都市=「消滅可能性都市」にも指定されました。

区はこれではマズい、と立ち上がり、全国に先駆けて「空き家と住宅に困っている人たちとのマッチング」に乗り出したのです。
つまり、被災者や住宅を借りにくい高齢者、障害者や子育て世代など、住宅探しに困っている人たちに、区内にある空き家に住んでもらう事業を始めました。

その為には、まずは「空き家リサーチ」から。
目視で使っている様子がない家やアパート・マンションを丹念に探し、登記簿で所有者に打診をするという地道な作業です。
ところが、はた目から見たら「住んでいない」「完全に空き家」だと思われるのに、所有者たちは、いろんな理由で“空き家と認めなかったり”“貸したくない”“触らないでほしい”と言うのです。
空き家の問題意識を持っているオーナーさんも多いのでしょうが、そうでない人もかなりいるということが、この調査から判明したという結果になりました。
h27_09_14_seminar
豊島区ではなんとか空き室利用で「シングルマザーのための家」を実現しましたが、まだまだ課題は山積しています。

こうした中、「空き家になってからでは遅い」と、空き家になる前=空き家予備軍の方たちの取り組みは非常に注目すべきものがあります。
たとえば、2世帯住宅で親が亡くなって、片方が空いてしまった住宅。
自分が高齢者となり、ゆくゆくは空き家になることが間違いない住宅。
こうした家に住む人たちが、自ら率先して行い始めたのが「住み開き(すみびらき)」というシステムです。

「住み開き」とは・・・
自宅というプライベートな空間の一部を開放して、友人や知人あるいは見知らぬ他人まで、さまざまな人が集うパブリックスペースとして共有する方法です。
家の持ち主が自分で住みながら、他人にも開放するので「住み開き」というのです。

たとえば、「高齢者夫婦が、空いている部屋に大学生に住んでもらう」。
これは、大学生によって高齢者を見守るという効果も生まれ、好都合です。
自宅の一部をカフェやパン屋さんなどにして、地域の人に来てもらう。
はたまた、自宅の一部を図書館として開放する。
自宅に水族館を作って見に来てもらう。

他人とつながることで、ゆくゆくも空き家にならずに済む可能性が高くなるのです。
空き家問題、ようやく動き出したというところでしょうか。

4月12日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

Page top