アナウンサー式 上手い写真の撮られ方

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フリーアナウンサーの柿崎元子による、メディアとコミュニケーションを中心とするコラム「メディアリテラシー」。今回は、アナウンサー式・写真の撮られ方について---

アナウンサー式 上手い写真の撮られ方

【映りがダサいアナウンサー】

日本列島に広域で甚大な爪痕を残した台風19号。このたび被災された方、亡くなられた方に、心よりお見舞い申し上げます。

私が地方局でアナウンサーをしていたころ、東北にはめったに来ない台風が来襲したことがありました。まだ駆け出しで、取材の仕方などあまりよくわからない私でしたが、「中継はつながったか!」「音声が来ていないぞ!」「おい、何撮ってんだ!」など、怒号が局中に響いていたことを覚えています。

それから4年。修羅場を経験し、アナウンサーとしての基礎も身につけた私は、東京に住まいを移しました。あこがれの東京の女子アナになったのです。何もかも華やかな東京。自分もその一員になりたくて、着る物やお化粧を一生懸命に勉強しました。

しかし、どうもカメラに映った自分はイケてない。田舎っぽくておしゃれではない。顔の造作はいまいちだし、アナウンサーの割には太っているし…など、容姿コンプレックスもありました。とにかくテレビに映る自分がダサいのです。髪型を変えてみたり、コーディネートを工夫してみたり、どうしたら颯爽として格好よく映ることができるのか…そればかりを考えていました。

いまでは誰でもスマホで写真を撮ったり、動画を撮影したりできますが、当時はフィルムで写真を撮ってもすぐにプリントすることはできませんでした。自分の番組も、放送されたものをVTRに録画して再生します。素材は膨大にあるのですが、振り返りには時間がかかりました。

そんな時間の積み重ねを経て、私はついに、ついにあることに気づいたのです。みなさんも写真を撮るときは常に考えていますよね? どうしたらうまく写れるだろうかと。実は動画も静止画も、“撮られ方”についてはいくつかの共通点がありました。

アナウンサー式 上手い写真の撮られ方

【ななめの法則】

私は2つの法則にたどり着きました。スタジオで、テレビカメラは“対角線”に配置されています。1ショットの場合、自分を中心にすると左斜め前(10時の方向)か、右斜め前(2時の方向)にカメラのレンズがあると想像してください。

通常、出演者は椅子やソファーに座っていて、その周りをカメラが動きます。カメラは常に出演者を対角線に捉えているのです。このことを逆手にとって考えます。

みなさんは「ここから撮ってね」と言って、カメラやスマホを渡しますよね。カメラを持った人は「ここ」の地点から動きません。ですから、あなたが動くのです。

どう動くのかと言うと、体の向きを斜めにします。左右どちらでも構いません。カメラのレンズに対して、体の向きを「ななめ」にするのです。そして顔だけを正面に戻し、レンズを見ます。さあ、鏡に向かってやってみてください。自然なポーズが完成し、しかもおしゃれに見えませんか?

もし誰かが一緒の場合は、お互いが中心を向くのが綺麗です。同じ方向を向いてしまったら、ラインダンスを踊るのかと思ってしまいますので…。

 

【姿勢よく立たない違和感】

あなたが撮る側だったら、カメラの水平を保った上で被写体に対して斜めに構えると、洗練されたよい構図になります。ポイントは正対しないことなのです。

カメラの前に立つと、どうしても直立不動と言われるように、姿勢よく立とうとします。前かがみで背中が丸くなっていると、見映えが悪いことを私たちは知っているからです。しかし人間は、不揃いなものや違和感のあるものに関心があります。その感覚を利用するのです。

ポーズをとるときには、「ねじれ」を意識してみます。例えば手を両脇に置くのではなく、右手で左のひじに触れてみる。それで体がねじれます。あるいは背中を見せて立ち、そこから振り返る。苦しくない程度に顔をみせてください。

他には、足を組んだり交差させたりするのもいいでしょう。その際に重心は後ろへ、あごを引き、カメラを凝視しないなども意識してみましょう。「ねじれ」は細さや柔らかさを強調できますので、特に女性にお勧めの法則です。

アナウンサー式 上手い写真の撮られ方

【上半身は華やかに】

ハロウィーンが近づき、街でも黒や茶色、オレンジ系の色が目につきます。秋が深まると暖色系が多くなりますね。そこで大事なのは赤や緑などの、発色がよく鮮やかな色です。

たくさん色が混じるチェックや柄物よりは、単色の「ちょっと派手かな?」と思うような色の服を、上半身に持って来てください。その色が、切り取られた四角のなかでワンポイントの華やかさを演出します。

もし、「そんな服は持っていない」「そこまで派手なことはしたくない」というのであれば、何か小物でも構いません。帽子やヘアアクセサリー、バッグ、手袋、マフラーなどは明るい色を選びましょう。チェックや柄ものは遠目に見ると中間色になり、ぼやけるので単色がお勧めです。

アナウンサー式 上手い写真の撮られ方

【極め付きはHand】

さらに、手の位置も重要です。手を顔に近い位置に持って来ましょう。顔の近くで手にポーズをさせることは、モデルさんがよくやっています。顎に手を置いたり、髪を触ったりするポーズです。このことは私にとっても発見でした。

テレビでは、手で髪を触ったり、かゆいから顔を掻いたりなどの行為はNGです。なぜなら、伝えたいこと以外の情報が伝わってしまうからです。

例えば汗を拭いたりするしぐさは、「焦っているのかな」「話したくないのかな」など、相手に余計なことを考えさせます。本来伝えたいことや、強調したいこととは別の情報を与えることになってしまうのです。しかし、それは動いている場合の話でした。

何気なく見た雑誌のなかのモデルさんは、手が顔の周りにあることに気づいたのです。そういえばインスタグラムにあがっているピースサインの人たちは、ピースの手を顔から離さず、顔に触るくらいの近さでサインをしています。常にスマホが近くにある人たちは、自然にできているのかと思うと驚きでした。

いかがでしたでしょうか? 撮られる側のちょっとしたコツ。どれも難しいことではありません。これから紅葉が進み、屋外でカメラを構えることも多いでしょうから、ひとつ覚えてトライしてみてください。おしゃれでクールなワンシーンが撮れると思います。

アナウンサー式 上手い写真の撮られ方

連載情報

柿崎元子のメディアリテラシー

1万人にインタビューした話し方のプロがコミュニケーションのポイントを発信

著者:柿崎元子フリーアナウンサー
テレビ東京、NHKでキャスターを務めたあと、通信社ブルームバーグで企業経営者を中心にのべ1万人にインタビューした実績を持つ。また30年のアナウンサーの経験から、人によって話し方の苦手意識にはある種の法則があることを発見し、伝え方に悩む人向けにパーソナルレッスンやコンサルティングを行なっている。ニッポン放送では週1のニュースデスクを担当。明治学院大学社会学部講師、東京工芸大学芸術学部講師。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修士
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