800億円かけて改修した阿武隈川がなぜ決壊したのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月15日放送)にジャーナリストの有本香が出演。台風19号による被害状況と今後の対策について、電話ゲストを交え解説した。

800億円かけて改修した阿武隈川がなぜ決壊したのか

非常災害対策本部会議であいさつする安倍首相(左から2人目)=2019年10月15日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

台風19号による堤防の決壊、国交省の新たな調査で37河川52ヵ所と判明

国土交通省は14日、台風19号による猛烈な雨の影響で決壊した堤防は、これまで6県21河川24ヵ所と説明していたが、その後の調査の結果、14日午前9時現在で7県の37河川52ヵ所にのぼると発表した。

飯田)安倍総理大臣は、官邸で14日に開いた対策本部の会合で、激甚災害に指定する方向で調査を進めると述べ、各省を横断する被災者生活支援チームを設置することも明らかにしました。また、共同通信のこれまでの集計では、11の県で56人が死亡、16人が行方不明となっております。新たに堤防の決壊も見つかり、福島県の阿武隈川での被害が大きかったとも報じられています。大規模な水害が発生した福島県の福島民友新聞社編集局次長、佐藤さんと電話がつながっています。状況を聞きたいと思います。佐藤さん、よろしくお願いします。福島県地方はどのような被害状況でしょうか?

阿武隈川流域での被害状況

佐藤)14日夜までの福島県の調べで、亡くなられた方は16人です。また行方不明者は3人いらっしゃるので、まだ犠牲者が増えるでしょう。

飯田)阿武隈川流域は、かなり大規模な氾濫も発生したということでしたが、どのような被害がありましたか?

佐藤)阿武隈川は福島県を南北に流れている川ですが、そこが北から南まで、福島市から郡山市、須賀川市、本宮市、伊達市、白河市などで幅広く決壊、浸水しております。

飯田)支流も含めると、相当な数にのぼりましたよね。

佐藤)県内25の河川が氾濫して、大体20市町村くらいで浸水被害が出ています。

飯田)特に郡山市などは駅前も浸水してしまって、一時は車が通れなくなったという報道もありましたが、住宅などにも相当の被害が及んだのですか?

佐藤)そうですね。1階部分がまるまる浸かったお宅もありますし、もう少しで2階の窓から入って来るという状況のお宅もありました。

飯田)阿武隈川は昔から地元の方々が警戒するような、暴れ川のようなものだったのでしょうか?

1986年の災害で800億円かけて改修したにも関わらず再度被害に

佐藤)規模が大きく、県庁所在地の福島市や、大きい都市の郡山市などを流れています。1986年に「8.5水害」というものがありまして、そのときにも大きな被害がありました。その後、平成の大改修ということで、98年から約3年間で800億円以上の予算が組まれ、改修されたわけです。それでも今回のような被害がありましたので、それが十分でなかったのか、今後は検証されると思いますが、それ以上の雨が降ったということなのでしょうね。

飯田)86年の8.5水害、その記憶もみなさんはあるし、それだけ対策を打って来たのに、関係者の方々もかなり衝撃だったわけですか?

佐藤)そうですね。国管理なので、国をはじめとして国土交通省、河川事務所などが改修を進めて来ました。その他の県管理の河川などにも影響を与える、根本の河川になりますから、その改修はこれからもう1度しなくてはならないと思いますね。

飯田)佐藤さんご自身は8.5水害のとき、もうすでに福島民友新聞社に入られていたのですか?

佐藤)私はまだ高校生でした。

飯田)そのときと比べて今回はどうですか?

佐藤)周りの従業員などに聞きましたが、場所によって被害の規模が違いますので、一概にはわからないですね。私はそのとき梁川町で親戚の、今回被害にあった場所にいましたが、そのときは1階部分が全部浸かるほどではなかったので、場所によっては今回のほうが酷いと思う方もいらっしゃるのではないかと思います。

飯田)スタジオには、ジャーナリストの有本香さんがいらっしゃいます。

有本)夜に入るとき、急激に水位が上がったという報道がありました。これは先ほど佐藤さんがおっしゃっていたように、今後の検証が待たれると思いますが、ほとんど予測不可能なレベルだったという理解でいいのでしょうか?

佐藤)そうですね。阿武隈川流域ではないのですが、浜通りの川内村というところでは、雨が降り出した11日午後から13日お昼ぐらいの間のおよそ2日弱、その間に3ヵ月分くらいの雨が降ったということで、さすがに想定しにくいのではないかと思いますね。

飯田)それだけ激しい雨が降り続いたということですね。

佐藤)そうですね。

飯田)佐藤さん、どうもありがとうございました。聞くだにその被害、今回の雨の激しさは想像以上のものであったということですね。

長期的な視野で今後の治水を考えるべき

有本)東京でもそうですが、延べで降っていた時間は長いのだけれど、最初のころはそれほど雨量が多いというわけではなくて、12日の夜くらいから一気に降りましたよね。想定できないだけの雨量が集中的に降る。ただ治水というものは、国を治めるうえでの要諦のようなところではないですか。そのなかで、八ッ場ダムが今回は功を奏した。一時期、ダムはもう不要ではないかという声もありましたが、極めて専門的な分野でもあるけれど、いま台風の予想進路などの精度は上がっています。しかし台風は従来よりも大型化して、激しくなっているわけです。そういうなかで、予算のことなどもありますが、現代の最高水準のテクノロジーを使った治水ということを、もう1回考えなくてはいけないと思います。今回、地方と東京では大分状況が違いましたよね。

飯田)事前の手当というか、ダムをつくる、下水を整備するとか。

有本)あるいは東京の場合、地下に水が流れるようなシステムも持っています。だけど、こういう手当が東京だけに集中的に行われているという状況ではまずいし、そのあたりを今後は考えなければいけないでしょう。今回、ダムの機能は非常に優れたものがあるということがわかりました。ただダムをつくればいいというわけではなくて、これには相当な経験値が前提となっているということでしょう。このあたりを国は、いま現在被害を受けているところへの支援と同時に、長期的な視野で、大型化している台風が頻繁に日本に来るという状況を想定した、本当にあるべき対策のかたち、公共工事をもう1回考え直さないといけない機会だと思います。

飯田)これから復興ということになると思いますが、建設業者の方々がいままで公共事業を削られているなかで、廃業してしまっているところも多いと思います。

有本)特に今回は広域にわたっていますからね。

飯田)その辺の手当もどうするのか、いままさに国会がやっていますので、議論していただきたい。

有本)本当ですね。

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