韓国・チョ法相の妻を事情聴取~文政権と検察が闘う理由

ニッポン放送「ザ・フォーカス」(10月3日放送)に産経新聞論説委員・フジサンケイビジネスアイ編集長の山本秀也が出演。韓国・チョ法務大臣の妻への事情聴取が開始したニュースについて解説した。

2017年5月撮影(曹国-Wikipediaより)

韓国・チョ法務大臣の妻、初めて事情聴取

韓国の通信社・聯合(れんごう)ニュースによると、韓国の検察は3日、不透明なファンド投資や娘の不正入学への関与が疑われているチョ・グク法相の妻に対する任意の事情聴取を開始した。一連の疑惑が浮上した後、チョ・グク法相の妻が聴取されるのは初めてとなる。

森田耕次解説委員)チョ・グク法務大臣の奥さんは、韓国東洋大学の教授チョン・ギョンシムという方です。初めて事情聴取が行われたのですが、私募ファンドへの不透明な投資疑惑がもたれています。また、娘の進学に有利になるように大学の表彰状を偽造したということで、すでに私文書偽造の罪でも在宅起訴されています。それから、チョ・グク法務大臣の娘、息子も不正入学疑惑が浮上していて、娘と息子も地検の事情聴取を受けているということです。家族中で事情聴取を受けていると。驚きますよね。奥さんのチョン教授は、地下の駐車場からソウルの中央地検に入ったということで、報道陣が待ち構えるところは避けたようです。韓国では、検察が今後チョン教授の逮捕状を請求するかどうか、捜査の進展に大きな注目が集まっています。これはどういうことでしょうか?

山本)検察対政権という構図ですね。お父さんを除いた家族全員が検察に行っているのですが、スキャンダルという視点から見ると、明らかにこれは不適格です。それをわかっていてなぜ文大統領が押したかと言うと、政権がガチンコモードに入っているということですね。

盧武鉉-Wikipediaより

検察の権力をどうしても弱めたい文在寅大統領

森田)西東京市の43歳、“ヨシオ”さんからいただきました。「疑惑だらけの人物を、文在寅大統領は法務大臣になぜ任命したのでしょうか? そこまでして彼を守る理由がわかりません。彼を守ることで、逆に自分の立場も危うくなると思うのですが」という質問です。

山本)常識的にはそう思うのですが、まず法相に対する文在寅氏の信頼が絶大なのです。そして文在寅氏が何をやりたいかは、当選したときから理念が明確でした。例えば、権力に対してどう向き合うかと言うと、彼は左派ですから、検察の権力が大きいことに対して常に不満と怒りを感じていたわけです。それで、政権を取ったらどうしても検察の権力を弱めたかったのです。

森田)自殺したノ・ムヒョンさんの側近だったのが、文在寅さんですよね。

山本)そうです。ですから同じマインドを持っていて、独立した司法が権力を肥大化させているのが許せないと感じているのでしょう。そのために、この人物をどうしても押し通したい。検察はそんなことはダメだということで、いま戦っているのですが、文在寅政権が続く限り、この人事は簡単には取り下げないでしょう。

森田)神奈川県三浦市の48歳の会社員、“うめシャケ”さんからは、「韓国の検察改革を進める文在寅大統領。日本の検察も強い権力を持っていると言いますが、韓国の検察も強い権力を持っているのでしょうか?」と来ています。

山本)強いと思います。日本の感覚で言うと、法務大臣であれば指揮権発動ということが頭に浮かびますが、韓国の検察の場合は独立性がもう少し高いようです。ですが、政権は検察を押さえる立場にあります。例えば監察部門のトップを入れ替えてみたりして、どうしても自分の思いの丈を実現しようとします。検察もうかうかしていられないと思います。

森田)先日、産経新聞が伝えていたのですが、7月に就任したユンさんという検事総長が、朴槿恵政権時代に政権の意向に反した捜査を進めて、地方に左遷されてしまったということです。朴槿恵被告をめぐる捜査のときに、今度はチーム長を任されて、朴槿恵さんを起訴に持ち込んだという背景もあります。ですから、文政権対検察という構図になっている、と産経新聞は報道していましたよね。

山本)まさにそうだと思います。ただ、検察は時間がかかると行政的にあれこれ削られてしまうので、必ずしも力があるから有利だとは言っていられません。そのため、検察としては立件を急ぎたいという戦いですね。

「三・一独立運動」を再現(さいげん)した行進に参加した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(だいとうりょう)(中央左)=2018年3月1日、ソウル(共同) 写真提供:共同通信社

不支持が上回る文在寅政権

森田)どうなって行くのでしょうか。文在寅政権の支持率はどうですか?

山本)43%と、低めになっています。43という数字をどう読むかということですが、彼は出て来たときが異常に高かったので。

森田)いまは不支持の方が上回っていますね。

山本)不支持が53%くらいですので、焦りは感じていると思います。それから対日関係も、韓国の世論は外から見ると一枚岩のように見えるのですが、批判がないわけではありません。対北の問題にしても、アメリカとの同盟が先だろうということを保守派は強く言っていますから、国内の舵取りが彼だけで行けるわけではないと思います。

朴槿恵大統領の退陣を求める大規模集会がソウル中心部で行われる=2016年11月12日午後、韓国・ソウル 写真提供:産経新聞社

韓国は受験大国~受験の成否が人生を左右してしまう

森田)埼玉県所沢市の会社員、“しいたけ”さん、51歳からいただきました。「韓国の今回の疑惑は、チョ・グクさんの娘の大学不正入学疑惑でした。前職の朴槿恵大統領のときも、知人の娘の不正入学でした。韓国は受験大国とは言いますが、不正入学が蔓延っているのも問題ではないでしょうか」と来ています。

山本)いずれも見ていますと、儒教社会ならではのしがらみかな、という気がします。

森田)相当激しい受験戦争なのでしょう?

山本)これに落ちると、エリート層に入れなかった息子、娘が就職も厳しい状況になります。

森田)大学の入学に失敗してしまうと、今度は就職に直結してしまう。

山本)大企業や財閥に入ることが人生の目的ではないと思うのですが、そこで悲観してしまう本人や家族は多いようですね。

森田)だからと言って不正入学はちょっと……私はちょうど受験生を抱えていますので、不正入学はないですよね。腹が立ちますよ、そんなことをされたら。

山本)こんな露骨な不正入学は、日本だと簡単に通らなくなっていると思いますけれどね。そこは人の関係で物事が動いて行く社会ですから、あっと驚く不正入学が明るみに出るわけですよね。

財閥の力を弱める政策が庶民の雇用に影響

森田)文在寅さんは、財閥の力も弱めようとしているのですよね。

山本)彼は左派なので「財閥何するものぞ」という意識が強くて、選挙公約を見ると、財閥の儲け過ぎを押さえるということを言っていたようです。ただ、韓国経済が伸びて来た構図を見ると、財閥が稼いで、それが中小に下りて来て雇用が生まれるという構図で動いていますから、財閥の首を絞めると下が回らなくなって来ます。それ以外に、彼は雇用促進をやります。

森田)雇用は促進するのですか。

山本)どうやるのかと言うと、中小が雇ってくれないなら、公共セクターで直接人を雇っているのですよ。環境美化や、行政補助の役割とか。

森田)駐車違反の取締りみたいなものですか。

山本)そういったもので半年、3ヵ月の職を募集して、雇用率を上げたということを言っているのです。

森田)でもそんな短期間だと、アルバイトみたいなものではないですか。

山本)繰り返せば短期職で回すことも可能なのでしょうけれども。

森田)準公務員のような感じですか?

山本)職に就いている間はそういうことになりますよね。その一方で、最低賃金を上げようということで、労組代表の意見を大盤振る舞いで聞いて上げたのですが、そうしたら中小企業のオーナーがとても払えない状況になって、悪循環に陥っています。

20日、白頭山の山頂で記念写真に納まる金正恩朝鮮労働党委員長(左から2人目)と南朝鮮(韓国)の文在寅大統領(右から2人目)。両端は李雪主夫人(左)と金正淑夫人=2018年9月20日 写真提供:時事通信

政治と経済どちらも厳しい

森田)韓国経済そのものが厳しくなっていますね。

山本)特に通信機器は得意だったのですが、中国に取られかけていますし、「得意分野はどこかな、半導体かな」と言っているうちに、日本との摩擦が起きましたからね。

森田)経済も悪くなって、検察との争いをしていて。

山本)それでも、彼は思った政策を任期中にやりたいと。そして、彼が目指すのは対北との融和政策です。そうなると、誰が味方で誰と対峙しなければいけないのかが、ぐちゃぐちゃですよね。

森田)困ったものですね。任期は半分を折り返しています。

山本)とは言え、このままだと2022年までは行ってしまうのでしょう。

森田)2020年春には総選挙があるのですよね。

山本)今度は保守派がどれくらいの議席を巻き返して来るのか。議会対策もしなければいけませんから、韓国の政情は当然落ち着きません。

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