中国が尖閣周辺での操業回避を指示する本当の狙い

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月16日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国の地方政府が漁民に尖閣周辺海域へ近づかないよう指示を出したニュースについて解説した。

失敗できない中国の首脳外交~日本ではなく首脳に配慮しての行動

中国が沖縄県・尖閣諸島周辺の東シナ海に設定した休漁期間が16日に明けるのを前に、福建省や浙江省などの地方政府が漁民に対して、尖閣周辺海域へ近づかないよう指示を出したことが分かった。来年(2020年)春には習近平国家主席が国賓として来日することが予定されているなど、改善基調にある日中関係を考慮したとみられている。

飯田)すごいですね。近づくなと指示できるということは、近づけとも指示できるのですよね。

宮家)そういうことですよ。操業回避ということは、操業再開もできるということです。私に言わせれば、日本に配慮したとは全く思わない。前にも申し上げたことですけれども、中国にとって首脳の外交、例えば首脳の訪日だとか、首脳が北京に来るというような首脳外交はそもそも「失敗できない」のです。失敗しそうになったらキャンセルすればいいのですから。つまり日本に配慮しているというよりも、中国の首脳に配慮しているという話だと思います。

飯田)習近平氏の方を配慮している。

宮家)もちろん、操業しないということは悪い話ではないけれども、先ほど言った通りいつ再開するか分からないし、彼らはすぐに手のひらを返します。さらに言うと、これもよく申し上げることですが、中国には「上に政策あれば下に対策あり」という言葉があります。中国政府が尖閣周辺で操業回避せよと言うわけですが、漁民からすると、「冗談ではない。あそこに行けばいい魚が獲れて、いいお金になる」のだと思ったら、行くなと言われても行ってしまうのです。どこまで指示が実行性を伴うか分からないので、あまり期待を高めても意味はありません。「またやっているな」というくらいに思うべきです。騙されてはいけないと思います。

飯田)ここで中国が配慮しているから、日本側もしなくてはとか。

宮家)それは必要ない。もちろん配慮するべきことはするし、言うべきことは言いますけれどね。

中国が尖閣周辺での操業回避を指示する本当の狙い

20カ国・地域(G20)首脳会議(大阪サミット)に出席するため来日した、中国の習近平国家主席(中央)=2019年6月27日午後、関西国際空港 写真提供:産経新聞社

領海に侵入する中国船は増えている

飯田)漁民や民間の船はこうやって止めたり、ポーズでやりますけれど、一方で公の船はこの間も領海に入りましたよね。

宮家)一時減ったころから比べたら、ずいぶん増えています。ですから何一つ変わっていないのですよ。唯一言えば、漁船が来なくなるということは、漁船という名の民兵が来なくなるということなのかもしれませんけれどね。

飯田)海上保安庁の人と話したのですが、尖閣の国有化云々の時期は、領海に入るたびに逐一大きく報道されたけれども、いまは慣れてしまったかのように報道がほとんどない。これで慣れてもらっては困るのだと、現場の人たちは危機感を持っていますね。

宮家)海上保安庁の現場の人たちは、大きな所帯ではないのだから、あそこにずっと張り付いているということは、オペレーションで考えたら大変な負担になっていると思います。随分予算もついているという話も聞くけれど、中国だって公船をどんどん増やしているわけですから、いたちごっこですよ。現場にいる人たちのことを考えたら、さらに増やしてあげないといけないだろうと思います。

飯田)自嘲気味に、私たちの予算は年間でイージス艦1隻分くらいなのですよ、ということをおっしゃっていて、しかもその内訳をみると半分くらいが人件費です。そうすると例えば新しい船とか、それを回収して使えるようにする予算などはどんどん少なくなってしまうわけですものね。

宮家)中国の船は軍艦のお下がり、もしくは軍艦に似たような大きな船も増えていますから、いまのままだと本当に大変なことになりますよ。

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