ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードをご紹介していきます!

タヌキの赤ちゃんが自宅前に! 愛犬と共存できず困惑して……

【ペットと一緒に vol.158】by 臼井京音


つい先日、筆者は自宅マンションの敷地内で、生後数ヵ月の子ダヌキと遭遇! 今回は、筆者が右往左往したタヌキ騒動について紹介します。

 

キャンキャンと悲鳴が聞こえて駆けつけると

7月半ばのある日、21時頃に筆者が自宅マンションの裏口から入るやいなや、「キャンキャンキャーンッ」という子犬の悲鳴が聞こえました。同じマンションのワンちゃんが、散歩帰りにドアに脚でも挟んでしまったのかな。と、心配しながら廊下を歩いていたのですが、人の声がまったくしないことに違和感を覚えました。

「ん!? 飼い主さんは?」。筆者は気になって、階段を2階分駆け降りると、そこにあったのは、小さなこげ茶色の動物の姿だったのです。

筆者が発見して間もない、階段スペースにうずくまるタヌキ

筆者はそっと近づいてみました。すると、チワワほどの大きさのタヌキであることが判明。まだ、生後数ヵ月でしょうか。

どうやら子ダヌキは、マンション敷地内の緑地から、緑地に接する階段の踊り場に1.5メートルほどの高さから落下したようです。落ちたことに驚いてか、あるいは落下時の衝撃による痛みからか、キャンキャンと悲鳴をあげたのだと推測できます。出血は見られませんが、階段途中には、ポタポタと下痢便のような跡が残っています。

さらに近づくと、逃げずにうずくまったままのタヌキのお尻付近には下痢便があり、白いニョロっとした寄生虫のようなものも見つけました。

日本本土に生息しているのはホンドタヌキ(写真:photoACより)

動物病院に電話をしてみると

我が家には2頭のノーリッチ・テリアがいます。定期的にワクチンを接種して駆虫薬も投与していますが、それらで防げるのは一部の感染症のみ。フィラリアやマダニやノミ以外の寄生虫は、同じイヌ科の動物であるタヌキからうつる危険性があります。愛犬たちを守るためにも、目の前で震えるタヌキに安易に手を出すことはできません。

筆者はまず、かかりつけの動物病院に電話をしてみました。24時間体制なので、すぐに対応をしてくれた獣医師によると、「タヌキは野生動物なので、しかも寄生虫がいるようなのと、下痢をしていて何かの感染症にかかっている疑いがあるので、動物病院では対応することができません。本来は、保健所か都道府県別に設置されている野生動物担当の部署に連絡を入れるのが適切かとは思いますが、夜間ですから、朝まで待つしかありませんね」とのこと。

筆者が見つけたのはこの位の月齢のタヌキでした(写真:photoACより)

筆者は頭を抱えました。タヌキがいるのは、2階と3階の間。このまま階段を降りると、自動ドアがある正面玄関です。小さなタヌキが自動ドアのセンサーに反応するかは不明ですが、もし外へ出られたとしても、車通りもあって危険です。母タヌキからはぐれたとしたら、裏口に続く緑地へ戻らなければなりません。

ひとまず、母タヌキが迎えに来るかもしれないと思い、筆者は子ダヌキのもとから離れることに。自宅ドアの前で靴を脱ぎ、裸足で玄関をとおり台所に行くと、シッポを振って出迎えてくれた愛犬たちに軽く挨拶を済ませ、塩素系の漂白剤をぬるま湯に溶かして玄関ドアを開けました。そして廊下に塩素溶液を垂らし、靴裏を消毒。

母タヌキはこんな感じ?(写真:photoACより)

靴は廊下に出しっぱなしにしたまま、筆者は再び室内に戻り、目をつぶってみました。「とにかく落ち着こう」と。

目の裏に、震える子ダヌキの姿がしっかりと焼き付いています。他の住人が見つけたらどうなるだろうか、などと気になって仕方がありません。

 

捕獲して外へ出そう!

子ダヌキは、下半身の被毛が抜けていました。それを電話口で獣医師に伝えたところ、疥癬ではないかとの返答。疥癬は、ヒゼンダニ(疥癬虫)に寄生されて生じる皮膚疾患です。症状は痒みと脱毛で、寒い時期に激しく脱毛すると、低体温になって命を落とすタヌキもいるのだとか。

子ダヌキは下痢もしていました。明らかに免疫力が低下していたように見えます。もしかすると、それらの感染症が他の子ダヌキにうつってはいけないと、母タヌキはあえて子ダヌキを置き去りにしたのかもしれません。

タヌキは都内や都市部のベッドタウンにも多く生息しています(写真:photoACより)

真相はわかりませんが、筆者はとにかく、マンションの建物内から子ダヌキを緑地に出そうと決心をしました。ゴム手袋を装着し、捨ててもよいバスタオルと段ボール箱を持ち、再びタヌキのもとへ。

そっと近づくと、いきなり子ダヌキは階段を猛スピードで駆け上がり、最奥の居宅に向かって廊下を走って行きました。廊下の端にある住居にだけ、玄関ポーチがあるので、筆者はさらに子ダヌキに近づくことはできません。

「この状況では、もう、子ダヌキが緑地へ続く階段から脱出することを祈るしかない」。筆者も捕獲を諦め、自宅に戻りました。けれどもやはり気になり、消毒スプレーを手に持って、タヌキを発見した場所から下痢便の跡にスプレーを吹きかけながら、子ダヌキが逃げ込んだ最奥の居宅に向かいました。玄関ポーチからチラリと覗くと……。すでにそこに、タヌキの姿はありませんでした。

床に目を凝らすと、やはり便の粘液のようなものがポタポタと残っています。スプレーをしながらそれをたどると、どうも裏口へと続く階に向かっているようなのです。筆者は、タヌキが緑地に脱出できたと信じることにしました。

タヌキは子育て期は群れで暮らす習性があります(写真:photoACより)

野生動物との共存を考える

筆者はこれまでに3回ほど、近所でタヌキを見かけたことがあります。野生動物が近くにいる暮らしは、いいものだな。などと、タヌキの姿を微笑みながら眺めていましたが、今回の騒動で寄生虫やウイルスへの感染症が疑われるタヌキを目の前にすると、複雑な心境になりました。

たとえば愛犬が、散歩前に裏口近くの緑地を歩いた際に、足裏にタヌキの残した寄生虫やウイルスを付けてしまったらと考えると、不安な気持ちになります。寄生虫の予防と混合ワクチンの定期接種を愛犬たちに欠かすことはできないと、あらためて感じています。

元気でいてね! 子ダヌキちゃん

マンション内の子タヌキ出現の件は、翌朝、管理人さんに伝えました。管理人さんは保健所に連絡し、適切な方法でタヌキが通った場所を塩素消毒してくれたそうです。

何とか子ダヌキを助けたいと筆者は思いましたが、やはり野生動物とペットとの間には、様々な壁が立ちはだかっていると実感しました。それでも、いずれも平等に等しく尊い命である野生動物と人間とペットが、うまく共存して行ける環境が整うことを願ってやみません。

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