東京に偏った高齢者対策の問題点

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。6月18日に閣議決定した2019年度の高齢社会白書について解説した。

東京に偏った高齢者対策の問題点

2019年度版「高齢社会白書」

政府は6月18日、高齢化の状況や高齢化社会への対策などについてまとめた2019年度版高齢社会白書を閣議決定した。白書のなかでは高齢ドライバーの現状も報告され、自宅からの外出手段として車を運転する人は80歳以上で4人に1人であることが明らかになった。

飯田)高齢社会対策基本法に基づいて毎年、政府が国会に提出している年次報告書ですが、車の運転に関して昨今は事故が多いですよね。

佐々木)そうですよね。高齢者の事故がクローズアップされていて、どれほど多いのかと言うと、実はいちばん多いのは10代です。

飯田)データで見ると。

東京に偏った高齢者対策の問題点

【東京・池袋で乗用車が歩行者をはね、10人が負傷】東京都豊島区南池袋で起きた事故で、現場検証する捜査員ら=2019年4月19日午後、東京都豊島区 写真提供:産経新聞社

地方に住む高齢者の実態を見ていない~交通手段のない地方

佐々木)85歳以上の事故も多いのですが、20代と同じくらいのはずです。高齢者の免許を取り上げるなら、10代の免許も取り上げないとバランスが悪いのではないかと言う人もいるくらいです。ただ暴走して人をはねるとか、アクセルとブレーキを間違えるとか、理解しがたいものが多いので不気味感はありますよね。だから反発する人が増えているのではないでしょうか。実際、元官僚の池袋の暴走事故を見ると、池袋の街のなかで車の運転は必要ないのではと思いますが、それは都会での話です。僕は東京以外に長野県と福井県で3拠点生活をしています。人口9000人の福井の美浜町へよく行くのですが、車がないと生活ができないのです。いくら80代でも移動手段がゼロになってしまいます。バスは走っていますが、1日3本などです。またタクシーも駅前に3、4台はタクシー会社が持っていますが、出払ったらタクシーもいない。車がなければ生活ができません。結局、中央省庁もメディアも東京に集中しているから、東京の感覚で高齢者のあり方を考えてしまう。でも実際には東京に人口が集中していると言っても、圧倒的多数は地方に住んでいます。その実態が見えていないのではないでしょうか。

東京に偏った高齢者対策の問題点

一次産業で働いて行く人に定年はない

佐々木)運転に限らず、生き方もそうですよね。終身雇用の会社で60歳の定年が、これから延長して70歳定年になったらどうするか。この前そういうアンケートがあって見たら、「そんなに働くのは嫌だ」と言っている人が多いです。それは60歳で定年して、年金をもらって悠々自適に生活するイメージで考えているからそうなるのです。田舎の一次産業中心の町に行くと、そもそも定年という概念がありません。みなさん体が動かなくなるまで働くわけですから、現役時代と老後がシームレスでつながっているのです。地方のあり方と都会の大企業に勤めるあり方がもう少し融合して、お互いのいいところ取りをできるようにしたらいいのではないでしょうか。

飯田)その2つがバラバラで、真ん中がないですね。高齢者の移動手段を考えると、京都の一部でUberとまではいかないですが、シェアリングのようなことが認められました。

ライドシェアが地方の1つの手段になるか

佐々木)ライドシェアですね。ライドシェアは普通の人が車を提供して、運転して人を乗せるというやり方ですが、日本では道路運送法で違反になってしまう、いわゆる白タクになります。国家戦略特区で、地方の一部で導入をして京丹後市などでやっています。それと自動運転が重なると、5年後10年後には移動手段が変わると思います。完全自動運転車が導入されれば解決しますが。

飯田)運転免許の概念が変わって来ますよね。

佐々木)免許がなくても運転できるようになれば。そこまでには技術的にも法的にも10年~20年かかるので、その間のミッシングリンクをどうするか。

飯田)地方によっては、ライドシェアが1つの手段になって来るのかなと思いますが。

佐々木)そうですね。宅配便の荷物と人を一緒に運ぶとか、いろいろなものをハイブリットにして行かないと成り立たなくなって来ているのではないかと思います。

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