台湾はアメリカにとって対中国のカードの1つなのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月29日放送)に上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘が出演。米中が対立する現在の台湾の状況について解説した。

台湾はアメリカにとって対中国のカードの1つなのか

総統府で、海外メディアとの会見に応じる蔡英文総統=2019年1月5日 写真提供:産経新聞社

台湾軍事演習

台湾では現在、中国との有事を想定した大規模な軍事演習が行われている。5月28日は有事の際に高速道路を戦闘機の滑走路として利用する訓練が行われ、蔡英文総統が訓練を視察した。中国からの脅威に対し高度な警戒を保つ必要があると訓辞を述べている。

飯田)年に1度行われる、中国軍の侵攻を想定しての大規模な軍事演習。27日から5日間の日程で実施されているということですが、すごいですね。滑走路に高速道路を使うという。

前嶋)何かあったときのことを常に台湾は考えているわけです。蔡英文さんにとっても台湾にとっても重要なのは、もちろん中国との関係です。もう1つ言えるのは、トランプ政権になってからの変化だと思います。オバマ政権のときは、何かあったら見捨てられるのではないかということがありましたが、トランプ政権になってからは、何かあったら助けてくれるかもしれないということになりました。これは大きいかもしれません。アメリカは海軍の艦艇で、今年(2019年)1月からほぼ毎月、中国と台湾を挟む海峡を通過しています。これは大分変化があるわけです。ただ、よく見て行くとトランプ大統領は一線は越えていないのですよね。就任する前にトランプさんは蔡英文さんと電話で話して、1つの中国にはこだわらないとコメントしています。これは台湾にとってはありがたい言葉だった筈なのですが、それ以降どうもトランプ政権のなかでも、強く台湾を推すというところまでは行っていません。中国に対するプレッシャーのカードとして、台湾を使っているところがありますね。カードはもしかしたら捨てられるかもしれない。そこが台湾の怖さだと思います。ワシントンに行くと台湾の話になりますが、トランプ政権はどこまで本気なのかという話は良く出ます。

飯田)アメリカは艦艇を派遣しています。南シナ海もそうですけれど、今年になってから緊張が高まっているのでしょうか?

前嶋)そうなのですが、空母を送る段階ではないのですね。

飯田)そこが違うわけですか。

前嶋)そこが90年代の真ん中の、中国と台湾の緊張関係とは違うのですよね。

飯田)あのミサイル危機があったときですね。

前嶋)ただ、今年になって米中の貿易含めた安全保障の対立が深まってから、台湾を1つのカードとして使っているように、この艦艇の派遣もどこまで本気だろうかと思われるのです。その間、中国はインフラ投資やいろいろな形で、これまで台湾と国交があった国を1つ1つ切り離しています。
去年の夏あたりにエルサルバドルも、中国にくっついて台湾とは断交しました。ただ今年、エルサルバドルに新しい大統領が就任して「やはり中国ではなく、台湾と外交を戻す」と言っています。これは新しい動きで、まだ具体的に進んでいるわけではありませんが。

飯田)そういう綱引きもあると。そのなかで来年(2020年)の頭、台湾は総統選挙が控えていますよね。

前嶋)蔡英文さんと、もう1人対抗するのが我々にとって有名な郭台銘さん。例の鴻海の人ですね。

飯田)シャープ買収のときに有名になったあの人。

前嶋)台湾のトランプさんと言われる人です。ビジネスマンであって、中国との関係が強いと言われています。ウィスコンシンで聞きましたが、この人はアメリカに投資する人なので歓迎ではある反面、中国にとても近い人なので警戒する動きもありますね。

飯田)国民党の候補になるのではないかとも言われています。国民党は国共内戦をやっていたはずだと思うのですが、共産党に近いですよね。

前嶋)台湾のなかは難しいですよね。中国とどれだけ距離を置くか。いずれ飲み込まれるかもしれないことも考えるのだけれど、それだけはやはり国のアイデンティティだから許せないところがある。台湾の方と話すと、何とも言えない悲哀感がありますね。

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