政治家の失言問題は平成の負の遺産

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月18日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。与野党議員の相次ぐ失言と、令和の時代に期待する政治の在り方について言及した。

政治家の失言問題は平成の負の遺産

政治 衆院内閣委員会で、自身の「忖度」発言について謝罪し、発言の撤回を表明する塚田一郎国交副相=2019年4月3日午後、国会・衆院第1委員室 写真提供:産経新聞社

与野党議員が相次いで失言

統一地方選が始まって以来続く議員の失言や更迭。4月に入って忖度発言で引責辞任した塚田前国交副大臣や、「復興以上に議員が大事」という発言で辞任となった桜田前オリンピック担当大臣。そして昨日(17日)、立憲民主党の枝野代表が出演した民放番組のなかで、衆参両院の予算委員会の集中審議開催に応じない与党の姿勢について「登校拒否みたいな話」と批判した。直後に謝罪・撤回したが、Twitterなどでは「例えとしてはよろしくないのではないか」という批判もあがっている。

飯田)塚田、桜田発言とは比較するようなものでもないのかもしれないけれど、記事の扱いが随分違うなと思ったりもします。一方でラジオネーム“ちょー”さんから、「失言が続くとそればかりに報道が集中して、本来やるべきことがそっちのけになってしまうような気がします。高い給料をもらっているし、国会は開くのにお金もかかるわけで、子どものケンカみたいなことで無駄遣いされるのはうんざりです」という意見もいただいています。

一連の失言は資質の問題も大きい

鈴木)マスコミも失言だとすぐ指摘しますが、よく考えるとこれまで問題になった閣僚や枝野さんに関しても、失言ではないものもある。むしろ資質の問題ではないかと思われます。例えば桜田前オリンピック担当大臣の場合は、彼が1,500億円を1500円と言ったことは失言でしょうか? そうではない、本当はどうでもいいことです。でも、オリンピックでいちばん大事なのは予算ですよね。東京や国も含めて、オリンピック予算を削る削らないでバトルをやって来たわけです。この予算について答えられないことが、桜田前大臣の大きな問題です。
塚田前国交副大臣の忖度発言も、ただの失言ではない。以前から問題になっている政治の仕組みのなかでの忖度とは一体何なのか。安倍一強のなかでそういうものが生まれると言うけれども、日本の政治の仕組みそのものがまさに忖度そのもの、こういうことはずっとあったわけです。忖度することが本質的な問題であることが分かっていなかった。ただの失言ならすぐに謝るなり、大臣も辞めればいいのです。でもそうではないということを区別して捉えなければいけない。
加えて与野党から失言が出ているという話になっていますが、取材していて思うのは、安倍一強の自民党政権が長くなって、野党がうまくまとまらないという構造。これは権力にいる側、自民党や安倍総理周辺に公明党、与党の側にゆるみが出るとばかり言われているけれど、実は野党も含めていまの政治状況は変に落ち着いていて、恒常化、平板化、膠着化していることを取材していてとても感じています。

飯田)新たな55年体制だと指摘する人もいます。

政治全体が膠着している~与野党双方の責任

鈴木)僕もそう思います。具体的に言うと、議員会館で取材する際に地下鉄から上がったとき、周辺では市民運動で座り込んでいたり、年配の方が雨のなかでも声を上げています。そこから1歩曲がって議員会館に入ると、防音がしっかりしていて外の声が殆ど聞こえなくなる。建物のなかでは与党の議員、野党の議員が歩いていて、こんにちはーと穏やかに挨拶している。全く外の騒音と違う世界、違う空気があるのです。
安倍一強で、ここはもちろん緩んでしまっていますが、実は与野党含めて政治全体が止まっている感じがします。これは政治家全員、全ての政党の責任のような気がします。
令和は新しい時代で希望もたくさんあるけれど、少子高齢化が進んで厳しい時代でもあるわけです。だからこそ政治がもう少し活気づかないといけません。失言の問題も、言葉尻を捉えるようなことは平成の負の遺産です。言葉尻から見えて来る本質的なことについて議論するとか、何かしらの対立構造を作って、国会、永田町が活性化しなくてはいけない。その責任を負っているのは与野党双方です。

政治家の失言問題は平成の負の遺産

2019統一地方選 大阪市長に当選が確実になった松井一郎氏(左)と大阪府知事に当選が確実になった吉村洋文氏。笑顔で握手をかわした=2019年4月7日 写真提供:産経新聞社

このままでは有権者の政治離れが進む

飯田)統一地方選の第1ラウンドが終わって、大阪に入って取材をしました。選挙戦の最中には誹謗中傷、あるいはデマも飛び交ったと指摘される一方で、都構想について「これは我々の生活にとってどうなのか?」という議論も生まれ、投票率も上がりました。具体的なイシュー(問題、争点)があると議論が生まれて、それが政治への参加にもつながるという意味では、面白いなと思って見ていました。

鈴木)選挙が終わって、松井新大阪市長、吉村新大阪府知事に会いました。なぜ今回大阪が盛り上がったのかと言うと、しっかりとした対立テーマを政治が作ったからです。他の知事選は殆どありませんでした。

飯田)与党が分裂したところはありましたね。

鈴木)与党が内輪のケンカを起こしているのは、野党がしっかりしていないからです。与野党双方の責任です。そういう意味でも、いまは与野党含めて硬直化している。

飯田)かつての民主党政権については歴史の判断があると思いますが、あの政権交代に向かって行くところは、民主党もいろいろな政策を出したり自分たちで調べて来たりして、政策論を国会でもやろうと盛り上がりましたよね。

鈴木)スキャンダルではなく政策でした。あのときは年金や耐震偽装など、社会構造の問題を自分たちで調べてぶつけて来た。そういう野党の頑張りがいまは必要だし、与党も緩んでいるから、特に次世代を担う中堅世代がもう少ししっかりしろと言いたい。ガンガン議論するべきです。政治全体が硬直しているので、この調子だと有権者の政治離れはどんどん進みますよ。

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