日米貿易協定~アメリカが為替条項を導入する2つの理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月15日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。4月15日(日本時間16日)から始まる日米間の貿易協定で大きな焦点になる為替条項の導入について解説した。

2018年11月29日、20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれるブエノスアイレスに向かう前に米ホワイトハウスで記者団に話すトランプ大統領(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

日米貿易協定の初会合、焦点は為替条項か

本日4月15日(日本時間16日)から日米貿易協定に向けた初めての交渉が始まる。アメリカのムニューシン財務長官は為替条項を協定に盛り込むことに意欲を示しているが、日本は為替条項の導入に反対しており、日米協議の大きな争点となる。

飯田)現地15日、日本時間だとニュースに出て来るのは明日以降になると思いますが、為替条項、為替相場を意図的に安くするなどして誘導するのを防ぐということだそうですけれども。

須田)これは直接介入だけではなく、直接間接を含めて意図的に日本の通貨を安く誘導することに対して、一定の規制を設けようという狙いがあるのだと思います。近年の日米間の貿易交渉においては、為替問題が大きなテーマになっています。
なぜここに来てこれが浮上しているのかと言うと、1つはアベノミクスの問題です。アベノミクスには3本の矢があって、1本目が異次元の金融緩和。これはインフレ誘導と、物価上昇率2%を目指すことが目的だと公式には説明されていますが、本当の狙いは円安誘導です。旧民主党政権時代にドル円で80円90円という、行き過ぎた円高になって輸出関連産業中心に青息吐息、非常に厳しい環境の下に置かれていました。これを何とか円安傾向に持って行こうということで、繰り出されたのが異次元の金融緩和。これが本当の狙いと言ってもいい。実施されると一気にピーク時にはドル円で125円まで行っていたものが、現在110円前後。円安水準で進んでいます。これは本当に効果があって、例えば輸出関連産業の代表格であるトヨタ自動車は、アベノミクスのスタートから2018年3月末の決算までに為替差益だけで2兆円上がっています。

飯田)だいたい6~7年で2兆円、すごい額ですね。


アメリカが為替条項を導入する2つの理由

須田)為替差益だけです。自動車が売れたわけでもない、コストカットしたわけでもない、為替が安くなっただけで2兆円。これはある意味、不労所得だと思う。結果的にそれがどうなったかと言うと、2兆円の利益があがりましたということで、例えば設備投資や製品開発に向かったらブーメランのようにアメリカの自動車マーケットに返って来て、結果的にそれを放置することはアメリカの自動車産業の脆弱化につながる。これはとっくの昔に気が付いているわけです。でもアベノミクスがスタートした当時の日本経済は底まで落ち込んでいて、このまま失速してしまうと、悪い影響はアメリカ経済にも及ぶということで、アメリカは見て見ぬふりをして来たのです。ただその状態が6年以上も続いたので、いくら何でも長すぎるだろうと。そこに対して一定の歯止めを掛けようというのが、ここ最近の流れです。

飯田)アメリカも金融引き締めからの転換をして、これからもう1回緩和に行くかというときに、日米ともに緩和していると、特に為替に関してはあまり効果がない。その辺もタイミングとしては、そろそろというところがあったわけですか?

須田)そうですね。本来だったら出口戦略をとったときにアメリカはこのことを持ち出したかったのだけれども、他の国際情勢があったので先送りをしたのです。同じような環境になったとき、日本だけがいいとこ取りの円安誘導はやはり許せない。そしてもう1つは中国とのバランスです。中国に対して、この為替問題で相当強く臨んでいる。そのなかで中国サイドは「我々に対しては強く臨むけれども、日本はどうなの?」という話になります。そこはバランスを取らなくてはいけないということだと思いますね。

TPPの年内発効が決まり、記者会見する茂木敏充経済再生担当相=2018年10月31日午前、東京都千代田区の中央合同庁舎第8号館 写真提供:産経新聞社

アメリカがTPPに加入できない事情

飯田)メールもいただいていまして、川崎の“タカコ”さん、37歳の方。「米中の方にアメリカはつきっきりで、日本に関してあまり重要視していないというニュースも聞きますが、TPPと違ってニッチな感じもするので、日米貿易協定をアメリカはどれくらい重視しているのか気になります」というお便りです。

須田)アメリカにとって日本は大きな貿易相手ですし、大きな貿易赤字を抱えている国ですから、アメリカ政府はこの問題を置いておくわけにはいかない。特に日本との間ではTPPから離脱してしまったので、バイ(1対1)の自由貿易協定がない。TPPに加入しないのであれば、日本との間で実質的なFTA協定なりを結んで行くことがどうしても必要です。

飯田)そうしないとオーストラリアからの牛肉に負けるとか、そういう個別の事情もありますものね。

須田)結果的にWTOのルールにのっとっていると、自由貿易協定を結んでいる外国との競争に負けてしまいますから、アメリカとしてはどうしても日本との間で個別に協定を、ということになるのだと思います。

飯田)だったらTPPに復帰してほしいものですけれど、そういうわけにはいかない事情もあるのですか?

須田)そうです。アメリカ国内の法整備の問題、ルールの問題です。トラブルが起こったときに、解決手段がアメリカの司法制度の傘下に入っていないのは合衆国憲法に違反するという、実に基本的なことなのです。日本はそういうところを軽く見がちですが、アメリカはそういうところをキッチリ見ます。

飯田)法の支配に関しては非常に厳しいところがあります。そうすると憲法との齟齬があるから、TPPには戻りづらいということも。

須田)そこは解釈の仕方ではあるのですが、ベースが憲法違反では解釈の仕方が成り立たないというのが、苦しいところではないかと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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