米中のIT覇権争いが「自由主義と独裁主義の究極の選択」となる理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月3日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。米中閣僚級協議が開催されることを受け、米中貿易摩擦の背景について解説した。

米中閣僚級貿易協議を前に撮影に応じるライトハイザー米通商代表部(USTR)代表(左)、中国の劉鶴副首相(中央)、ムニューシン米財務長官(右)(中国・北京)=2019年2月14日 写真提供:時事通信

米中閣僚級貿易協議 4月3日からワシントンで開催

アメリカと中国の貿易問題を巡る閣僚級協議が先週北京で行われたのに続いて、本日、4月3日からワシントンで開催される。今回の協議では合意文章の作成や首脳会談の日程についても意見を交わす見通しである。

飯田)3月28日、29日に北京で行われて1週間待たずに閣僚級協議、きょうからはワシントンに場所を移して開催ということです。世界の貿易に与える影響も世界貿易機関が数字を発表していましたけれども、いろいろ出て来ているというところでもあります。

佐々木)トランプ大統領が「アメリカは貿易赤字が多すぎる。これを減らさなくてはいけない」と、20世紀の中頃か下手すると19世紀の重商主義みたいなことを言っているからこんな話になっている。この問題が解決したからと言って、別に貿易赤字が減るわけではないのですよ。いま起きているこの状況に流されてしまって、トランプ大統領の言動とか行動に一喜一憂していると、本質を見失うのではないかと思います。

米中、貿易協議を再開 ライトハイザー米通商代表、ムニューシン米財務長官(ロイター=共同)、中国の劉鶴副首相=2019年3月28日 写真提供:共同通信社

米中の争いは次のITの覇権争い~“5G”と“AI”

佐々木)この問題の本質は米中間の対決で、軍事も含み、いろいろあるのですが、経済的に言うとITですね。次のITの覇権をどちらが担うのかということです。いまITで最先端のテーマは2つあって、1つは5G。通信の次の規格です。高速で、しかも自動運転車のように時速100キロで走っている車とも通信ができて、リアルタイムにやり取りができるという高速通信。
もう1つがAIです。人工知能。
5Gに関して言うと5Gの通信モジュールとか、そういう機器はどこが作っているかと言うと、世界に2つ会社があって、フィンランドのNokia(ノキア)と中国のHuawei(ファーウェイ)です。この2社が鍔迫り合いをしていて、ファーウェイはスパイ疑惑などもあった。カナダで副社長が逮捕されたり、アメリカはとにかく追い出しにかかっている。ヨーロッパもそれに見習いつつある。それでも中国は強いので、東南アジアやアフリカや中東ではファーウェイが巻き返すだろうと言われています。ファーウェイが勝つのか、ノキアをはじめとする欧米通信連合が勝つのかが、まず1つの見物である。
もう1つがAIです。これも大変な事態になっています。AIは沢山のデータ、いろいろな人がどんな行動をして、どんなことを喋って、何を買っているのか。これらの情報を全部回して初めてできる技術なのですよ。いまアメリカはフェイスブックが情報漏洩事件を起こしたりして、「個人のプライバシーを侵しすぎだろう」と問題になっているわけです。

飯田)今朝の日経新聞にも、個人情報に利用停止権というような一面トップの記事が掲載されていました。


日米の「個人情報の保護」がAIの進化の妨げになる

佐々木)日本もGAFA(ガーファ)を規制しますという話をしている。ヨーロッパもEUがGDPR(EU一般データ保護規則)という、データをちゃんと保護しないといけない法律を作ったりしています。どうも日米はそこにブレーキを掛けつつあります。これは良いことなのだけれど、一方でAIの進化を止めてしまう可能性がある。
では中国どうなのか。もう、プライバシーなんて何も気にしていない。社会信用システムなんて、全国民のデータを全部吸い上げて分析するということまでやろうとしている。

飯田)すごいですよね。それこそ「お前、信号無視をしただろう」というところまで。

中国広東省深圳市にある華為技術(ファーウェイ)本社キャンパス(ゲッティ=共同)=2018年12月7日 写真提供:共同通信社

国民のデータを吸い上げる中国のAIが圧倒的に進化する

佐々木)そう。そうするとお金を借りられなくなるとか。日頃良い活動をしていると、出会い系で可愛い女の子をあてがってくれるとかね。すごいことをやっている。とにかくデータをガンガンぶん回しましょうと。そうすると次の時代、これからの10年20年のAIの進化で、中国が圧倒的に進化してしまう可能性があるのですよね。

飯田)プライバシーが丸裸になると、それが逐一データとして吸い上げられてAIの糧になって行くというわけですね。

佐々木)そうです。中国のITの戦略はこの10年、本当にすごい。インターネットが普及するようになってから、国内でグレート・ファイアウォールみたいな、万里の長城みたいなものを作って、国内の中国版ツイッターとか中国版フェイスブック、中国版検索エンジンを作って育てて、力を持てるようになってから世界中にもバーンと広げているという。

飯田)いままで力をためていたところだったのですね。


戦後日本がやってきたやり方を中国はITでやっている

佐々木)これは、日本が戦後やっていた、通産省の護送船団行政とまったく同じです。

飯田)関税をかけて。

佐々木)国内で自動車産業や電機産業、エレクトロニクスを一生懸命育てて、力を持ってからバーンと世界中に売りまくったわけです。

飯田)それで80年代の貿易摩擦がなくなった。

佐々木)そうです。いま、それを中国がITでやっているわけです。

飯田)ジャンルが違うから、あまり結び付かなかったけれど同じことをやっている。

佐々木)日本のやり方を見ていたのではないですかね。学んで「このやり方だ」と。ファーウェイなんて少し前は誰も知らなかったではないですか。いまやファーウェイはアップルを超えるぐらいの技術力で世界中に売りまくっています。素晴らしいスマホで。そういうことを考えると、これからの時代は、どう考えても中国が技術の世界では席巻しますよね。

飯田)残念ながら席巻してしまうと言うか。難しいところは、そうなると基本的人権だとか、いままで当たり前だと我々が思って来た価値観とAIの進化が、「どっちをとる?」みたいな形になってしまう。

作中の“真理省”を描いたイラスト(1984年 (小説) – Wikipediaより)

中国と欧米~独裁主義と自由主義の究極の選択

佐々木)それは哲学的な問題で、ヨーロッパ・アメリカは自由主義のようなものが経済発展の基礎である、礎であると言い続けて来た。だからそれは両輪だと言って来たのだけれど、中国は独裁主義で自由も無いですが、経済は発展してみんな豊かになっている。では、「どちらがいいのですか」という究極の質問がいまや浮上して来ているのですよ。

飯田)中国の信用スコアのシステムなどを見ると、ジョージ・オーウェルの「1984」の現代版みたいな感じですよね。

佐々木)あれで「人が人を裏切らなくなっているならいいではないか」と思う人も。

飯田)中国人はそれでいいと思っているわけですよね。

佐々木)そういうことですよね。

飯田)そこで「愛いやつじゃ」という人たちは当然それでいいとなりますが、少しでも社会に疑問を抱いた瞬間に叩き潰されるわけですよね。そういう社会というものは。

佐々木)それでも豊かな方が良いのか、貧しいけれど自由な方が良いのか…。マトリックスという映画があったではないですか。あのなかで生きることをやめて、宇宙船みたいなところでグレーの服を着て、不味そうなものを食べて生きて戦っている人たちがいたでしょう? でもあれは途中で「俺、こんなくそ不味いものを食ってこんな生活をするの嫌だから、マトリックスのあの幸せな世界に戻る」と言って戻った奴がいるのですよ。これを僕らはいま突き付けられているのです。


「第3の道」を探すのが日本の役割

飯田)これ、「第3の道」はないのですかね?

佐々木)そこを探すのが我々日本人の役割ではないですかね。

飯田)日本人にはその可能性があると。

佐々木)どっちも嫌だとちゃんと言った方が良いと思いますよ、我々はね。

飯田浩司のOK! Cozy up!
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