トランプ大統領がイスラエルの主権を認めた“ゴラン高原”とは?

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月29日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。トランプ大統領がイスラエルの主権を承認したゴラン高原の背景について解説した。

ゴラン高原の主権について国連が緊急会議を開催

ゴラン高原は中東シリア南西部に位置するなだらかな丘陵地帯で、シリア・イスラエル両国の広範な地域を見降ろせるという軍事的な要衝でもある。イスラエルが1967年の第三次中東戦争でシリアから奪った。入植活動を進めた上、81年、イスラエルが一方的に併合を宣言。シリアとイスラエルの停戦を管理するUNDOF(国際連合兵力引き離し監視軍)には96年以降、国連平和維持活動として自衛隊も参加していたが、シリア内戦に伴う治安悪化で2013年に撤収している。それを踏まえて、国連安全保障理事会は27日、アメリカのトランプ大統領がシリア南西部のイスラエル占領地、ゴラン高原でのイスラエルの主権を承認したことを受け、緊急会合を開いた。安保理理事国からは一方的な行動への懸念を示す国が相次いだ他、一部の国は国際法や決議への違反を明言し、アメリカの孤立が際立つ形となった。安保理としての声明は発表されていない。

飯田)声明発表見送りは当然、アメリカの拒否権と。

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ゴラン高原を訪問するイスラエルのネタニヤフ首相(中央)とグラム米上院議員(手前左)ら(ゴラン高原)=2019年3月11日 写真提供:時事通信

中東和平問題の一丁目一番地の問題であるゴラン高原

宮家)あそこは内戦の前に行ったことがあります。ダマスカスからゴラン高原の方に車で行くと、確かに小高い丘があって、そこにアンテナが無数にある。そこをイスラエルが占領している。67年の戦争でしたが、当時の技術では、あの丘さえ取れば、シリア側の動きはダマスカスまで全部見えてしまうのだから、これはシリア軍が手を出せない急所を取ったということです。
ゴラン高原は、西岸、ガザと共に1967年の戦争でイスラエルが占領した。安保理決議ができて、イスラエルは撤退しなくてはいけないと決められた国際的義務を負っているところです。
トランプさんがそこでイスラエルの主権を認めるということは、「占領地ではない」と言っているということです。これは中東和平問題の一丁目一番地の大問題、これを解決するために皆必死で頑張って来たものを、アメリカは一体何を考えているのか。
アメリカは中東和平交渉の表方で、仲介者としてうまく動いて来た時期もありました。90年代までは。しかしいまやもうダメですよね。
イスラエルも昔はゴラン高原を返還する気があったと思います。シリアが本当に平和条約を結んでくれるのであれば、ゴランで譲歩してもいいと。逆に言えばそのような交渉の為に取ったわけですよ。

飯田)そうか。同じことを、シナイ半島を巡ってエジプトとの間でやりましたよね。そしてシナイ半島を戻しました。同じシナリオを描いていたわけですか?

宮家)そうです。取るだけ取って、譲歩の対象にして平和条約を結ぶ、そして国境を確定する。これが基本的なやり方です。イスラエルはある時期まではそれを考えていたと思うのですが、いまやシリアという国が壊れてしまい、イランが入って来た。イランがいままさにゴラン高原を脅かしている状況であれば、それは併合を続けるしかない。今回アメリカもそれに乗ってしまった。ネタニヤフさんを助けたかったのか、アメリカ国内のエヴァンジェリカルという福音主義者の支持を得たかったのか。どちらにしても、「いい加減にしなさいよ、アメリカさん」と言うのが私の意見です。

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