ヤンキース・田中 開幕初勝利を助けた2つの“後押し”

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。本日は、28日(日本時間29日)のMLB開幕戦で、自身初の開幕勝利を挙げた、ニューヨーク・ヤンキース・田中将大投手のエピソードを取り上げる。

ヤンキース・田中 開幕初勝利を助けた2つの“後押し”

オリオールズとの開幕戦で力投するヤンキースの田中将大投手=2019年3月28日、アメリカ・ニューヨーク 写真提供:時事通信

「一つ成長した姿を見せられたとは思う。これまで勝ってなかったですから。いろんなことを糧としてやれてきたからこそだと思います」

日本時間29日に行われた、オリオールズとの開幕戦。ヤンキースの開幕投手としてマウンドに上がったのは、田中でした。メジャーではこれが4度目の栄誉で、野茂英雄の3度を抜き、日本人投手単独トップとなりました。

ただし、これまで開幕勝利には縁がなかった田中。過去3度の開幕戦(2015〜17年、3年連続開幕投手)の成績は0勝2敗、1試合は勝ち負け付かずで、防御率は9.49。直近の2017年は、レイズ打線に打ち込まれ3回途中で7失点KO。

楽天時代にも、2012年に1度だけ開幕投手の経験がありますが、ロッテを相手に6回5失点で敗れています。つまり今回は、悲願の「開幕初勝利」を懸けての登板でした。

「初回の味方の援護が大きかった。それに尽きる」

立ち上がりは苦しい展開でした。初回、2死からいきなり連打を食らいますが、何とか無失点で切り抜けると、その裏にジャッジ、スタントンが連続ヒットを放ち、4番・ボイトがバックスクリーンへ先制3ラン!

この援護を受けて、田中も波に乗ります。2回、先頭のルイーズとリッカードを、2者連続で 3球三振。これでメジャー通算800奪三振を達成しました。この後も、4回2死までオリオールズ打線を8者連続で凡退させ、直後に1点を返されましたが、5回にヤンキースは2点を追加。田中は6回途中、83球で降板。5回2/3を6安打2失点(自責1)にまとめ、待望の開幕戦初勝利を飾りました。

「きょうは確実にストライクを取れる球がなかったので、少し窮屈さ、難しさを感じながら投げてました。そのなかでもカウントを整えながらゲームを作れたという意味では、よかったんじゃないかと思います」

調子は決していいとは言えませんでしたが、そんな状態でもチームを勝ちに導くのが、真のエースの仕事です。

「開幕戦は誰だって緊張する。それは受け入れて、そこからどうするか。緊張している自分に目を背けてはいけない」

ヤンキースの指揮官・ブーン監督も、田中のピッチングを絶賛しました。

「我々が必要なものすべてを出してくれた。感情や状況をうまくコントロールしながら投げていた」

苦しいながらも、メンタルを整え好投した田中には、2つの心強い“後押し”がありました。1つは大好きな「ももいろクローバーZ」。毎年、ももクロのオリジナル新曲を登場曲として使っている田中ですが、今回はももクロのメンバーとも相談して、人気グループ・GReeeeNに楽曲制作を依頼。完成したのが、今回披露された『背番号』です。戦うことを決めた人たちへエールを送る内容の曲で、田中自身も、

「1人でマウンドに向かう時、しかし決して1人ではないんだと、“背番号”というタイトルがついたこの曲は、文字通り僕の背中を後押してくれる、そんな素晴らしい楽曲です」

と絶賛。今回も気持ちを高揚させてくれた、ももクロ×GReeeeNのコラボ曲は、田中にとって大きな援軍となりました。

そしてもう1つ支えになったのが、身重の体ながらヤンキースタジアムに駆け付け、スタンドで見守ってくれた愛妻・まい夫人です。6月に第2子を出産予定のまい夫人ですが、実は3月29日が誕生日。つまりバースデー登板でしたが、田中はみごと、白星をプレゼントしました。

そのことを報道陣に聞かれ、「よかったと思います」と表情を崩した田中。幸先のいいスタートを切ったメジャー6年目、過去5年はいずれも12勝以上を挙げていますが、欲しいのはやはり、まだ手にしていない「チャンピオンズリング」です。

ヤンキースが10年ぶりのワールドシリーズ制覇を達成できるかどうか。それは田中の右腕に懸かっています。

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