森永卓郎が提言~野党がするべきことは「これだ!」

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「垣花正 あなたとハッピー!」(3月27日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。毎月勤労統計の不適切調査等に言及する野党だが、野党がするべきことはそうではない! と持論を述べた。

森永卓郎が提言~野党がするべきことは「これだ!」

政治 衆院予算委員会に参考人招致され、答弁を行う毎月勤労統計調査問題の特別監察委員会・樋口美雄委員長=2019年2月4日 写真提供:産経新聞社

毎月勤労統計の不適切調査に言及しても前には進まない

今年(2019年)1月、厚生労働省が賃金や労働時間を示す毎月勤労統計調査というものを出していますが、そこで不適切な調査を続けていたことが発覚しました。これを野党は追及したのですが、その際の追求のしかた、喧嘩の仕方が下手だと思わずにいられない。統計の問題で些末なところに終始していますが、もっと大きなところで議論すべきなのです。

野党の基本的な追及のスタンスは「アベノミクスが成功した」ということを政府が見せたいがために不適切な手法で調査をして、賃金の伸びを実際よりも高く見せかけていたのではないか。それを政府が指示した、とまでは言わないけれども、役人が忖度をしてそのようになったのではないかと言って、官僚を連れて来て「やっただろう」と国会で追及して来たわけです。

加計学園のときにも同じ問題が起こったのですが、そこで「はい、忖度しました。私は官邸にゴマをするためにわざと統計をごまかしました」などと、官僚が言うはずはない。そんなことをしたら政権が揺らいでしまいます。仮に本当にそうだったとしても、言うはずがありません。証拠はないわけですから、「記憶にありません」とか「そんなことはまったくありません」と全面否定します。
そこで“すったもんだ”をやっていて、話が前に進まないのが、これまでの野党と与党のやり取りです。

森永卓郎が提言~野党がするべきことは「これだ!」

【森友事件初公判】大阪地裁を出る「森友学園」前理事長の籠池泰典被告=2019年3月6日午後、大阪市北区 写真提供:産経新聞社

過去のことを聞いても仕方ない~「なぜいま変えないのか」を追求する

過去のことをいろいろ聞いても仕方ありません。もう1つの大きな方法は「いまのことを聞く」ことです。毎月勤労統計のギャップ修正、大規模企業ではなくて、中堅・中小企業の調査というものは、捜査対象を3分の1ずつ入れ替えることにしたのです。賃金の伸び率を出すときは、継続調査をしているところだけで伸び率を出すのが当たり前なのです。それは厚生労働省も認めています。例えば、ニッポン放送の給料をずっと調査していたら、ニッポン放送の賃金の伸び率を統計として使うべきで、それをニッポン放送とTBSラジオの賃金の伸び率を比べられても何の意味もないであろうことは、普通に考えてもわかります。
ところがそれを厚生労働省は認めているのに、名目賃金指数およびそこから作られる実質賃金指数は、継続調査企業ベースに変えていないのです。ここを徹底的に追及するべきです。なぜかと言うと、いまの問題なので「いまなぜ変えないのだ」という追及の仕方をすれば、これは「変えます」と言わざるを得なくなるわけです。

森永卓郎が提言~野党がするべきことは「これだ!」
一家の大黒柱の下がっている給料をお母さんがパートへ出て補填~「みんな働け」という現実

そこをまずやる。すると昨年(2018年)の実質賃金は間違いなくマイナスになります。マイナスになるという答弁をまず引き出した上で、そこから先が重要になります。たぶん政府はこう答弁して来ます。「確かに実質賃金は下がっているかもしれないけれど、国民が受け取る総報酬は実質でも増えています」と必ず言います。

いまどういうことが起こっているかと言うと、典型的な例として、お父さんの給料が下がり続けている。実質賃金は安倍政権が発足してから6年経ちますが、5%以上下がっています。1人1人の給料は物価を調整すると下がっている。ただ政府の言い分は、「でも家庭全体で見ると収入は増えていますね」ということです。
なぜかと言うと、いま、お父さんの給料が伸びないから、お母さんがパートに出たり、おじいちゃんがバイトに出たりして働き手が増えている。安倍政権の発足後、これだけ高齢化が進んでいるなかで、労働力はとてつもない勢いで伸びています。これは「生活が苦しいからみんな働こうぜ」という、やむにやまれぬ行動なのです。

かつて、高度成長期には標準家族というものが日本の世帯の大部分を占めていました。お父さんと専業主婦のお母さんと子ども2人。これが標準で、これが大量生産、大量消費の基盤を作ったのですが、いま、専業主婦世帯が日本では絶滅危惧種になりつつある。まったく働いていない人はどんどん減っている。

私は個人的に女性は働いたほうがいいと思っていますが、働く・働かないは国が決めるべき問題ではなく、その家の事情によって夫婦で、あるいは子供たちと話し合って世帯ごとに方針を決めるべきです。
そういう「みんな働け」、「高齢化が進んで労働力が足りないのだから、みんな働け」という社会は、私は違うと思います。

構造改革路線の基本理念とは

なぜ、こんなに1人当たりの賃金が下がって行くのかということに関しては、神野直彦先生という東大の名誉教授がいます。神野先生はもともとサラリーマンで労働の現場を経験して、その経験をもとにもう1度大学に入り直して、東大教授まで上り詰めた先生です。
小泉構造改革ブームに国民が沸くなかで、すでにいまの世の中を予見していた。なぜ賃金が下がるか、彼は「社会が豊かになると国民は飢餓の恐怖から解放されて働かなくなる。そのとき資本家側は彼らを貧乏にすることで飢餓感を復活させ、働かせようと考える。そこで、構造改革の名のもとに金持ちは減税し、庶民を増税する。サッチャー政権、レーガン政権、そして小泉政権の本質もそこにあるのだ」。これが神野先生の見立てでした。つまり、お金持ち、資本家側が、庶民が賃金が上がって行くと生活が楽になって来るから、そんなに無理をして働かなくていいやとなると困るので、どんどん賃金を切り下げて「もっと働け」と働かせる。これが構造改革路線の基本理念なのだとズバっと言った。

森永卓郎が提言~野党がするべきことは「これだ!」
野党は「こんな世の中でいいのですか?」という議論をするべき

国会でこういう基本的な構造を議論すべきで、統計を見直すときの手続きがどうのこうのという実のない論争を繰り返すのではなく、「こういうことでいいのですか?」という部分を野党はもっと話し合うべきだと私は思います。

4月から外国人労働者がバンバン入る。そうすると誰がどう考えても給料は上がらなくなります。そうなればもっと働かなくてはならなくなる。「こんな世の中でいいのですか?」という議論をするべきなのです。

どうも野党はこういう基本理念に立ちかえっていないのではないでしょうか。揚げ足取りはやめて、本質の議論をしましょう。

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