米朝首脳会談での交渉が決裂した本当の理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月1日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。28日、非核化が合意できず決裂に終わった米朝首脳会談について解説した。

米朝首脳会談での交渉が決裂した本当の理由

「カラー」 米朝首脳会談  28日、首脳会談を行った北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左、ロイター=共同)と会談後に記者会見するトランプ米大統領(共同)

米朝首脳会談~非核化で決裂

アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は28日、ベトナムの首都ハノイで2日間の日程で行った首脳会談を終えた。両首脳は非核化で合意に達せず、文書の署名は見送られている。

飯田)トランプ大統領は会談後の会見のなかで、北朝鮮側が一部の核施設を非核化する見返りに制裁の全面解除を求めてきたということを明らかにして、これは受け入れられなかったと説明したのですが、北朝鮮側の外相の説明とは齟齬もあります。宮家さんどうご覧になられましたか?

宮家)それは全面解除なんて求めてないと思いますよ。北側は非常に老獪で、できるだけ譲歩を少なくして最大限の果実を取ろうとしているけれども、最初から最大限の果実、全面解除なんて求めていないと思います。いろいろ新聞記事を読みましたが、どうも視点が1つ欠けている気がする。それはアメリカの国内政治です。

飯田)国内政治?

宮家)マイケル・コーエンというトランプさんの私設弁護士が、トランプさんがベトナムに行っている間に議会で証言をさせられるわけです。その証言の内容が衝撃的なもので、前の親分をペテン師とまで言っているわけです。これでは大爆発ですよ。私の見るところ、今回北朝鮮はアメリカの内政状況を十分理解せずに読み間違え、トランプさんがワシントンで大炎上しているときにも、いままで通り強く出てしまった。

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ニューヨークの連邦地裁を出る、トランプ米大統領の長年の個人弁護士だったマイケル・コーエン氏(中央)(アメリカ・ニューヨーク)=2018年11月29日 写真提供:時事通信

ワシントンでの大炎上と北朝鮮との交渉

宮家)トランプさんからすると、普通だったら目くらまし戦術で北朝鮮と合意したりするところですが、内政がこんな状況で、北朝鮮と誰が見ても均衡を欠くような合意を結んでしまったらかえって逆効果になる。そんなことをしたらワシントンでは2倍も3倍も炎上するので「やめた方がいいです」と、私がボルトンさんだったら言いますよ。その忠告をさすがに今回はトランプさんが聞いたのだと思います。自分のことしか考えない人だから、内政的に「これはまずい」と考え思いとどまったのでしょう。

逆に言うと、もしコーエン氏が議会で証言をしていなくて、その結果の大炎上がなかったらトランプさんは北朝鮮との合意案をOKしていたか、もしくは似たようなことをやっていた可能性があると思っています。今回は幸運だったのですよ。

各紙一面トップで合意なしと報じていますが、こんなことは当たり前で驚くことないですよ。北朝鮮が少ししか譲歩しないで、それをアメリカが認めないのは当たり前です。今回の決裂はあるべくしてあるもの。去年の6月12日に起きてもおかしくなかったものです。それが1年近く伸びたのは、トランプさんが当時は政治的余裕があったからです。いまはそんな余裕ないわけです。ようやく正しい判断をトランプさんがするようになったのですが、それがワシントンでの大炎上が理由なら、実に皮肉な話だなと思いますね。

飯田)やはり外交というのは内政の延長?

宮家)そうですよ。北朝鮮問題というのは、アメリカ内政の従属変数だと思います。ワシントンではトランプさんに対するロシアゲート等々をめぐる大攻勢が始まったばかりです。いま大統領は首都にいないから、トランプさん個人に対する強烈な反撃を、いままで我慢していた民主党が始めたわけです。すべてが関連しているのです。

飯田)そうすると、トランプさんはやると言っていたけれども、次の3回目の会談セットはかなり険しいものになりますね。

宮家)でも、やらないと先に行かないので、難しいところですね。当分ないと思いますけれど。

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