市原悦子、私たちを魅了した映画出演作

By -  公開:  更新:

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第553回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

平成最後の年にまた1人、多くの人に親しまれた女優がこの世を去りました。市原悦子、享年82歳。

「家政婦は見た!」シリーズや「まんが日本昔ばなし」などで知られる市原さんですが、映画でも多くの名演を残しています。そこで今回は、市原悦子近年の映画出演作を振り返りながら、その魅力を掘り起こします。


庶民的な大らかさと品性を兼ね備えた大女優!

市原悦子、私たちを魅了した映画出演作

※写真はAmazonより

直木賞作家・乃南アサの同名ベストセラーを、林遣都とベテラン女優・市原悦子の共演で映画化した『しゃぼん玉』。美しい自然が残る宮崎県椎葉村を舞台に、犯罪を繰り返して来た青年と老婆の心の交流を描いた感動作です。

市原悦子が演じたのは、逃亡中の主人公・伊豆見を偶然助けることになったスマ役。彼女が話すゆったりとした宮崎弁が耳に心地良く、“悪”さえも包み込んでしまう懐の深さを感じさせる演技は、彼女の真骨頂! 映画出演作では、本作が遺作となってしまいました。

市原悦子、私たちを魅了した映画出演作

※写真はAmazonより

ドリアン助川の同名小説を『殯の森』でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した河瀬直美監督が映画化した『あん』。昨年9月に亡くなった樹木希林の最後の主演作、そして樹木希林×市原悦子という超ベテラン女優の初共演でも話題となった1作。樹木希林扮する徳江の親友・佳子を市原悦子が演じています。

どら焼き屋「どら春」の雇われ店長・千太郎の前に現れた、店で働きたいと懇願する老女・徳江。徳江の作る粒あんのおいしさに店は瞬く間に繁盛するが、彼女がかつてハンセン病を患っていたことが噂に。千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなってしまうが…。

偉大な二大女優が逝去されたいま、あらためて観ると、1日1日を丁寧に生きていく、その大切さを改めて感じずにはいられない号泣必至の作品です。

市原悦子、私たちを魅了した映画出演作

※写真はAmazonより

社会現象を巻き起こすほどの大ヒットとなった長編アニメーション映画『君の名は。』では、三葉と四葉の祖母・一葉の声を担当した市原悦子。優しく温かくて、時にちょっぴり頑固な“ザ・日本のおばあちゃん”といったキャラクターは、市原悦子にピッタリの役どころ。同時に、その“声”の存在感が、作品により深みを与えていたのも印象的でした。

こうして振り返ってみると、市原悦子が近年演じたキャラクターは、心がホッと温かくなるような親しみを覚えるキャラクター。そうした役どころも彼女が演じると、そこに独自のユーモアと毒っ気が加わり、唯一無二のキャラクターへと昇華させてしまうのが、これまた魅力的でした。

映画、演劇、テレビにおいて多彩な活躍をし、その作品でも強烈な個性を放ち、私たちを魅了して来た市原悦子さん。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

<作品情報>
しゃぼん玉(2017年)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
脚本・監督:東伸児
原作:乃南アサ「しゃぼん玉」(新潮文庫刊)
撮影:宮本亘
音楽:奈良悠樹
主題歌:秦 基博「アイ(弾き語りVersion)」(OFFICE AUGUSTA)
出演:林遣都、藤井美菜、相島一之、綿引勝彦、市原悦子
公式サイト:http://www.shabondama.jp/

あん(2015年)
Blu-ray&DVDリリース デジタル配信中
監督・脚本:河瀬直美
原作:ドリアン助川「あん」(ポプラ社 刊)
主題歌:秦 基博「水彩の月」(AUGUSTA RECORDS/Ariola Japan)
出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、水野美紀、太賀、兼松若人、浅田美代子、村田優吏愛、高橋咲樹、竹内海羽
公式サイト:http://an-movie.com/

君の名は。(2016年)
Blu-ray&DVDリリース
原作・脚本・監督:新海誠
作画監督:安藤雅司
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:RADWIMPS
声の出演:神木隆之介、上白石萌音、成田凌、悠木碧、島﨑信長、石川界人、谷花音、長澤まさみ、市原悦子 ほか
公式サイト http://www.kiminona.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

Page top