本日10月26日はあいざき進也の誕生日~70年代きっての実力派アイドル

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渡辺プロダクションに所属し、1974年1月にワーナー・パイオニア(現・ワーナーミュージック・ジャパン)から「気になる17才」でデビューしたあいざき進也は、デビュー曲がいきなりヒットとなり、華々しいスタートを切った。女性ファンのハートをくすぐる少年のような可愛らしい顔立ちと、優れた歌唱力がよい意味でのギャップとなり、ヒットを連発してゆく。初期からバックバンドがついてレコードやコンサートで洋楽をカヴァーしたり、早い時期から自ら作詞をしたりと、アイドルらしからぬ音楽的水準の高さを保ちながら70年代いっぱいまで活動を続ける。80年代の約10年間に亘る休養の後、90年代にカムバックして再び新曲を出すなど復活を遂げた。最近では昭和のスターが一堂に会する“同窓会コンサート”にレギュラー出演して、安定した歌唱力で健在を示している。本日10月26日は、いまやすっかりベテランシンガーとなったあいざき進也の62歳の誕生日である。

後にあいざき進也となる相崎進也が生まれたのは、石原裕次郎が俳優デビューし、新宿コマ劇場が開場した1956年のこと。岐阜県に生まれ愛知県で育った進也少年は幼い頃からピアノやオルガンを習い、合唱団にも所属して様々なコンクールに入賞していた。当初はクラシック系の声楽家を目指していたというが、やがて歌謡曲にも興味を持つようになり、1973年、16歳のときにオーディション番組『スター・オン・ステージ あなたならOK!』の第1回グランドチャンピオン大会で優勝して翌74年にデビューを果たす。渡辺プロが製作していた番組は僅か半年間の放映であったが、その間に藍美代子もデビューし、五十嵐夕紀も番組への応募がきっかけでスカウトされてスクールメイツに入り、後にデビューしている。あいざきのデビューにあたっては、元アウトキャストのメンバーで、それまでにRCサクセション「ぼくの好きな先生」などアレンジの仕事をしていた穂口雄右の作曲家としてのデビュー作となる「気になる17才」が用意されたが、実はもう1つ詞の候補があったという。あいざきの記憶によれば「恋のライバル3対1」というタイトルだったそうで、やはり穂口の作曲で同じ年にワーナーからデビューした女性3人組“ピーマン”のデビュー曲と合致する。あいざきに不採用だったものがそのまま活かされたか、詞のモチーフが流用されて新たに作曲されたかのどちらかだろう。ちなみに「気になる17才」の作詞は安井かずみ、「恋のライバル3対1」の作詞は千家和也であった。

本日10月26日はあいざき進也の誕生日~70年代きっての実力派アイドル
「気になる17才」のレコーディングは、目黒の大鳥神社の近くにあった毛利スタジオ(後のメディアスタジオ)で行なわれた。レコードの制作にあたったのは、ディレクターがワーナーの細井虎雄、プロデューサーが渡辺音楽出版の木崎賢治という、アグネス・チャンと同じチーム。その結果「気になる17才」はデビュー曲からヒットとなり、あいざきを一躍スターにする。同時期デビューの城みちる、松田新太郎と共に“新新御三家”と呼ばれることもあった。続けて「シンデレラは6月生まれ」「君におくる愛のメロディー」「愛の誕生日」とシングル・ヒットを連ね、デビュー2年目の75年には、「気になる17才」に並ぶ代表作となる「恋のリクエスト」が生まれた。デビューから3曲、安井×穂口コンビの作品が続いた後、作詞では岡田冨美子、山上路夫、藤公之介、作曲ではすぎやまこういち、平尾昌晃、井上忠夫(後の井上大輔)らの豪華な作家陣はさすが渡辺プロのトップアイドルといった感があり、その後も橋本淳、山川啓介、松本隆、加瀬邦彦、筒美京平、三木たかしといった錚々たる面々があいざきの歌世界を構築していった。

本日10月26日はあいざき進也の誕生日~70年代きっての実力派アイドル
あいざきが他の男性アイドルと一線を画していたのは、かつてのグループサウンズの延長線上にあるような、アイドル・ロックとも言うべき意欲的なサウンドを実践したことにある。デビューの年に早くも結成されたバックバンドは、元ザ・ワイルド・ワンズのチャッピーこと渡辺茂樹がリーダーを務め、その前身は伊丹幸雄のバックバンド“RRC(ロックンロール・サーカス)”であった。当初は“ビート・オブ・パワー”の名で、2年目からは“MMP(ミュージック・メイツ・プレイヤーズ)”と名を変えて、全国コンサートを共に廻った。彼らはキャンディーズのバックバンドとしても活躍し、最終的に“スペクトラム”となるのである。アルバムやコンサートでの洋楽カヴァーを歌う機会が多かったのは、バンドリーダーの渡辺茂樹と、当時のマネージャーだった大里洋吉(後のアミューズ代表)の意向が反映されていたとおぼしく、その期待に応えたあいざきは歌だけに留まらず、ステージでは抜群の身体能力を活かしてバク転などのアクロバティックなパフォーマンスも見せてくれた。音楽への意識が高いスタッフに恵まれたことは、歌手・あいざき進也にとって幸福なことであったといえる。アイドルを卒業した後に寺内タケシのもとでバンドボーイを務めた約1年間はブランクを経て甦るまでの強い精神力を養い、大きな活力となったことだろう。実力派アイドルはいまも現役で歌い続ける。

あいざき進也「気になる17才」「恋のリクエスト」ジャケット撮影協力:鈴木啓之

【著者】鈴木啓之 (すずき・ひろゆき):アーカイヴァー。テレビ番組制作会社を経て、ライター&プロデュース業。主に昭和の音楽、テレビ、映画などについて執筆活動を手がける。著書に『東京レコード散歩』『王様のレコード』『昭和歌謡レコード大全』など。FMおだわら『ラジオ歌謡選抜』(毎週日曜23時~)に出演中。
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