NAFTAの交渉結果だけではない、日本自動車産業の今後の問題

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月3日放送)ジャーナリストの須田慎一郎が出演。NAFTAの再交渉を題材に、今後、日本の自動車産業が対応すべき点について解説した。

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NAFTA再交渉の協議後に記者会見するカナダのフリーランド外相=2018年8月31日、米ワシントン(共同) 写真提供:共同通信社

NAFTA~アメリカ・カナダ合意できず日本の自動車打撃か

アメリカとカナダによるNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉は、期限とした8月31日に合意できずに終了。今月5日に再協議することになった。
しかし、カナダは来年の2019年に総選挙を控えており、政治的な妥協の余地は乏しく、カナダがNAFTAからの離脱を余儀なくされると、北米に生産拠点を掲げる日本の自動車産業にとっても、大きな打撃となる。

今年度の税制から読み取れる「生産拠点をアメリカに移せ」というメッセージ

須田)実はNAFTAが合意できるか否かとか、交渉の結果がどうなるかで一喜一憂しても意味がないのです。これは何も政治的綱引きを演じているわけではなく、去年暮れに策定された、アメリカの税制改正。「今年度である2018年度の税制はこのような方針で望む」というのを見てみると、あることが明確に浮かび上がってくるのです。
トランプ政権はアメリカをマーケットとして、アメリカの消費者に物を売ったりサービス提供する場合に、海外の生産拠点で作った物を持ってくるのをよしとしない。「アメリカの消費者を対象とする場合、海外の生産拠点を国内に移した場合には税制上の優遇策を講じる。税制上の恩恵を提供する」というのが、今年度の税制なのです。

飯田)今年度の税制はトランプ政権が初めて作った税制だから、これが基本方針なわけですね。

須田)そうです。これが柱になっている。そこを見てみると、明らかに「NAFTAの交渉がどうなっても、とにかく企業はアメリカに生産拠点を移してきなさい」と、アメリカ政府としてはきちんとメッセージとして税制に盛り込んでいるのです。

飯田)アメリカで売る物は、アメリカで作れと。

須田)それが「アメリカの錆び付いた地帯(ラストベルト)を活性化させることにもつながる」という発想が、トランプさんの頭のなかにあるのだと思います。そのことを見てみると、それに対して日本のメーカーは今後どう対応していくべきなのか。その方向性を決めていかないとならない。NAFTA関係で一喜一憂している場合ではないと思います。

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日本メーカーは米でのビジネスモデルを見直さざるを得ない

飯田)NAFTAが政治的な面で決着しても、その後も「お前達アメリカでもう少し作れ!」とどんどん来る可能性も?

須田)そうです。だから、これで決着が見えたからといって、すべてがノーサイドになるわけではない。次から次へとこうした要求がアメリカ側から、トランプ政権側から送られるという状況になっているのだと思います。いままでは人件費が安くて、アメリカとの間で関税が低いところに生産拠点を作るのがビジネスモデルでした。それを日本のメーカーは見直さざるを得ない。そういう局面に入ってきているのです。

飯田)自動車なども、本当にたくさんの部品を集めて組み上げます。いわゆるサプライチェーンという大きな企業の集まりが形作られますよね。これを1度解体して、もう1度作り直さないと、本来は問題解決しない?

須田)いいとこ取りが認められなくなってきた、という状況だと思います。
トランプ大統領のエキセントリックな言動で今回の出来事が動いているわけではない。基本的には先ほど申し上げたようなことがベースにあるということを、やはり認識すべきだと思います。

飯田)そう考えると、トランプさんはある意味、現象が浮かび上がってきた部分にすぎない。アメリカ国内の世論としては、「もっと私たちに仕事をください」というのは大統領が変わっても続く可能性がある、ということですか?

須田)そうですね。少なくとも「海外に輸出する分ではなく、アメリカで売る物はアメリカで作れ」がベースになっているのだと思います。

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