リオで流れる世界の「国歌」…歌詞の意味をご存知? 【ひでたけのやじうま好奇心】

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オリンピックといえば、メダルを授与する表彰式のシーンでお馴染みですよね。

メインポールに国旗がへんぽんと翻る…。
その旗のもと、栄光のメダリストたちが、胸に手を当て、じっと、祖国の「国歌」に耳を傾ける…。
中には、国歌を口ずさみながら、涙を流す選手もいます。

なんとも、感動的なシーン。
観ている我々のほうも、思わず貰い泣きしちゃったりします。
でも… よく考えてみたら、外国の国歌の「歌詞の意味」って、意外と知らないものですよね。
今日は、世界各国、さまざまな国歌の「歌詞」に、スポットを当てましょう。
コレを知っておくと、リオ五輪を更に愉しめること、請け合いです!

ちなみに訳詩というものは、文献によって、微妙に言葉のニュアンスが変わったりするものですが…
世界じゅうの国歌が日本語訳で紹介されている、弓狩匡純さんという方が著した『国のうた』(文藝春秋)という有名な労作があります。

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国のうた/弓狩匡純著(文藝春秋)

統一感という観点から、今日は基本的に、この本の訳詩を踏襲して紹介することといたしましょう。

さてまずは、せっかくですから、今回の五輪開催国「ブラジル」の国歌『凱旋マーチ』の歌詞を紹介しましょう。

ブラジル国旗

イピランガの静かな岸辺に聞こえる 勇ましき民の雄叫び
おりしも祖国の空に輝く自由の太陽よ
たくましき腕で勝ち取りし 平等の契り
おお 自由よ 命賭(と)して守らん
(※中略)
南十字星がまばゆく輝く 生まれながらに強く 気高き(けだかき)巨人よ
汝のその偉大さは 未来をも映し出す
おお 愛しき祖国 幾千の国にもまして
汝はわれらの優しき母 愛しき祖国 ブラジル!

歌の冒頭に出てくる「イピランガ」とは、丘の名前でして…
1822年、このイピランガの丘の上で、高らかにポルトガルからの独立宣言が叫ばれたと言われています。
ことほどさように、国歌というものは、その国の歴史に根差した歌詞が多いんです。
そして、その多くは、ブラジルのように、ようやく独立を果たした際の誇り、喜び、あるいは、それまでの怒りがテーマとなっています。

たとえば、その昔、さまざまな外敵に蹂躙されてきたイタリア。
国歌は『イタリアの同胞よ』というタイトルなのですが…
その二番の歌詞は、凄まじい「怒り」に満ちています。

イタリア国旗

われらは何世紀にもわたり踏みつけられ 笑い者にされてきた
ひとつの国ではなく 分断されているために
われらに唯一の旗と ひとつの希望を与えよ
団結の時は すでに告げられた
さぁ 隊を組もう われらは死を恐れない
イタリアは呼んでいる

「踏みつけられ 笑い者にされてきた」… まさに、怒髪天を衝く国民の怒りの感情が偲ばれます。
さて、国歌というものは、よくも悪くも、「国威発揚」という性格を有しています。
ヨーロッパの国々は、大昔から、ほぼ間断なく、戦乱に見舞われてきました。
それだけに、国威を発揚する、勇ましいものも多いんです。
たとえば、ポルトガルの国歌『ポルトガルの歌』には、こんな一節が出てきます。

ポルトガル国旗

武器を取れ! 武器を取れ! 大地に、大海に!
祖国のために戦わん! 大砲に向かって進め! 進め!

敵の大砲に向かって「進め!」とうのですから、勇猛果敢この上ありません。
勇ましいといえば、ポーランドの国歌『ドンブロフスキのマズルカ』も、実に勇壮な歌詞です。

ポーランド国旗

ポーランドはいまだ屈せず 我等ここにあるかぎり
たとえ敵に蹂躙されようとも 剣もて闘い討ちとらん
(※中略)ボナパルトの例にならい 勝利を我が手に

この「ボナパルト」というのは、ナポレオン・ボナパルト… すなわち、あの皇帝ナポレオンのこと!
フランスの英雄、軍事の天才ナポレオンを見習って、我等も勝利を掴もうではないか、というわけです。
このナポレオンが国歌に登場するあたりが、歴史を感じさせますよね。

じゃあ、ナポレオンを生んだフランスの国歌は、どんな歌詞なのでしょう。
フランスでは、1795年、「自由、平等、博愛」という有名な標語とともに、
『ラ・マルセイエーズ』という、当時のパリ市民の愛唱歌が、国歌として制定されました。
これが実にまぁ、ものすごい歌詞でして…

フランス国旗

起ち上がれ 祖国の子どもたちよ
栄光の日はきたれり
圧政に抗する我らのもとに
血まみれの旗ひるがえり
聞け 戦場にあふれるおびえた敵兵たちの叫びを
彼らは我らが戦地に攻め入り
子どもたちや妻の喉を掻き切ろうとしている
市民たちよ 武器を取れ!
隊列を組め!
進め 進め
我らの地に 奴らの穢れた血を降らせるのだ

この歌、「世界で一番有名で、世界で一番血なまぐさい歌」と言われています。
フランスで、アルベールビル五輪(1992)が開催された時のことです。
開会式で、いたいけなフランスの少女が、可愛い声でこの歌を唄うという演出があったのですが…
「あんな好戦的な歌を子供に歌わせるのは如何なものか」と、物議を醸したものでした。
ただし、当のフランス国民にとっては、流した血でもって自由を勝ち取ってきたという誇りがある…。
難しいことではありますが、一概に「良い」「悪い」と決めつける類いの話ではないようです。

次に、アジアに目を向けてみましょう。
おそらくリオでもたくさん流れるであろう、中華人民共和国の国歌『義勇軍進行曲』(※「義勇軍行進曲」と訳す文献もあります)。
この歌の歌詞は、こんな感じです。

中華人民共和国国旗

我らの血と肉をもって築こう 我らの新しき長城を
中華民族 最大の危機に際し ひとりひとりが最後の鬨の声をあげるときだ
起て! 起て! 起て!

やはり勇壮このうえない歌詞ですが…
この歌、実はそもそも「映画音楽」だったんです。
1935年『風雲児女』という中国映画が公開されました。
日中戦争まっただ中ということで、内容は、抗日運動に立ち上がった人々を描いたものなのですが…
この映画の挿入歌がのちのち1949年、かの毛沢東主席の命によりまして、中華人民共和国の国歌になったのだそうですよ。

リオ五輪、開幕直前!
世界各国の国歌、ちょっと意外な歌詞の意味をご紹介しました!

8月3日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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