ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

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第12回 『西城秀樹メドレー②』

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

チャ:「♪かっらさに こっだわーるぅうー ジャワっ原人っ!」……うぅ、ヒデキ−!(泣)こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:チャッピーさん、また泣きながらカレーネタですか? こんにちは、相澤瞬です。

チャ:ヒデキは「バーモントカレー」だけじゃなくて、大人向けの「ジャワカレー」のCMもやってたことを忘れないでほしい! 甘口・辛口の「二刀流」だったのよ。

相澤:大人から子供まで、幅広い世代に愛されたヒデキさんだからこそですよねー。

チャ:その通り! てなわけで、今週も高円寺の「大陸バー 彦六」から、ヒデキ追悼特集をお送りしまーす。……あ、マスター! 白ホッピーで! 瞬くんも、好きなの頼んでね。

相澤:僕も白ホッピーでお願いしまーす。ヒデキさんに献杯しましょう!

チャ:お、グラスが来た来た。んじゃ行くよー、せーの!!

チャ・相澤:「ギャランドゥー!!」

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

■「西城秀樹」を演じ続けたヒデキ

チャ:さて、前回は初期の作品が多かったんで、今回は75年以降、20歳を過ぎてからの「大人になったヒデキ」を聴いていこうかなと。前回が「バーモント編」で、今回は「ジャワカレー編」ね(笑)。

相澤:エッ? てことは、前回聴いたナンバーってヒデキさんが10代のときの曲なんですか!? ビックリ!

チャ:そう、『YOUNG MAN』以外はぜんぶ10代。ヒデキは若くしてトップスターになっちゃったんで、ハタチを過ぎたらどうやって「大人の歌手」へ脱皮していくかで、けっこう悩んだんだよね。

相澤:確かにいつまでも若さと勢いだけじゃ、だんだん辛くなっていきますもんね。ファンも成長していくし……

チャ:そうなのよ。今回は、ヒデキがどんなふうに、大人への階段を登っていったのかを振り返ってみようかなと……まずはこの曲!

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

チャ:1975年5月25日発売、13枚目のシングル『恋の暴走』。ヒデキが20歳になって、最初にリリースしたのがこの曲なんだけど、見て、このジャケット!

相澤:うわっ、ヒデキさん、メッチャ黒いっ! ヤバいですねコレ!

チャ:メイクなのか、ホントに焼いたのかわかんないけど、ヒデキなりの「大人になったぞ宣言」じゃないの? 日焼けして「ひと皮むけた」ってコトで(笑)。

相澤:うまいっ!……それはさておき、早く聴きたいです!

チャ:コレねえ、個人的に大好きなのよ。タイトル通り、のっけから暴走するよ!(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

相澤:あー、いかにも歌謡曲なイントロ! イイなー、このブラスの畳みかけとか、こういうの好きです!

チャ:イイっしょ? 作詞は安井かずみさんで、作曲は『傷だらけのローラ』を書いた、ヒデキがよくわかってる馬飼野康二さん。

相澤:途中の、掛け合いのコーラスも最高ですねー!

チャ:そう、ここんとこ好きなのよ! そしてサビへの落とし込み方が、またたまんない。「ダメに、ダメに…」の連呼!

相澤:うわー、たまらんですね、コレ!

チャ:で、間奏は思いっきり『ダイアナ』だったりするんだけど(笑)。まだこのときは、10代の頃の路線から抜けきっていないけれど、ロックを自分なりに消化しきった余裕を感じるね。

相澤:この曲もそうですけど、ヒデキさんってどんな曲でも「西城秀樹」になりきって歌ってるじゃないですか。それってスゴいことですよね?

チャ:いい指摘! これが本当にやりたかったことではなかっただろうけど、瞬くんの言うように、ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた気がするなー。

相澤:まさに、プロの鑑(かがみ)ですよね!

チャ:『恋の暴走』が気に入ったなら、これもきっと好きなんじゃないかなー。(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

チャ:1977年6月5日発売、21枚目のシングル『セクシーロックンローラー』。……瞬くん、これ好きでしょ?

相澤:超イイ歌じゃないですか!! のっけからバンバン畳みかけてくるし……これ、編曲は?

チャ:アレンジャー界の大御所・萩田光雄さん。

相澤:あー、納得です。この曲、すごくアレンジャーさんが頑張っていて、玄人寄りのアレンジですよね。展開がメチャクチャ多いところは、今のアニソンにも通じる気がします。

チャ:あー、なるほどねー。そういうアレンジにできたのも、ヒデキの歌唱力がそれだけ成長したってことだよなー。

相澤:僕の中では、ヒデキさんの曲の中で5本の指に入る名曲です!

彦六の女性客(カットイン):……あのー、さっきから聴かせてもらってますけど、いまの曲、歌詞が最後まで言いたい放題でしたね!

チャ:あ、やっぱそう思いました?……瞬くんは鋭いから、うすうす気付いてたかもだけど、作詞は誰でしょう?

相澤:気付きましたよ!「甘いバラの匂いを肌につけて来い」とか「俺の肩に爪を立てて好きと言え」なんて詞が書けるのは、阿久悠さんしかいません!(笑)

チャ:正解!(笑)この連載、毎回阿久さんにすんごくお世話になってるなー。……てか、『セクシーロックンローラー』ってド直球なタイトル、普通の感覚じゃつけないよね。

相澤:その阿久さんの強引な「ありえない世界」を、ヒデキさんはマジメに熱唱するじゃないですか。それがまた最高です!

チャ:同感! オレはね、大マジメに「ありえない世界」を歌ってるヒデキをマジメに聴いて育ったから、こんな大人になっちゃったんだよ。責任とってほしいよ!(笑)


■「青春の青」は「悲しみの青」

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

チャ:ヒデキと阿久さんといえば、瞬くんにぜひ聴いてほしい曲があるんだけど……(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

チャ:1976年6月5日発売、17枚目のシングル『ジャガー』。さっきの『セクシーロックンローラー』と同じ、阿久さんと三木たかしさんコンビの作品だけど……どうすか、これ?

相澤:うわー、いきなり歌詞も曲も熱い!(笑)

チャ:実はこの曲、途中でセリフが入るのよ。……あ、ここここ!

相澤:(セリフ、聞き入って)……「君が死んだら俺は死ぬけど,君は死ぬな!」とか、この身勝手さがたまらんですね! メラメラ、熱いものを感じます!

チャ:ただでさえ濃厚な阿久さんの世界が、ヒデキが歌うことで、さらに濃くなってるでしょ? 濃い味が付いてんのに、そこへまたソースをダボダボかけるか?! みたいな(笑)。

相澤:これ、前にも言いましたけど、松本隆さんの詞が「静」だとすると、阿久さんの詞は「動」だと思うんですね。当時のヒデキさんには、阿久さんの「動」がマッチしたんじゃないかなと。

チャ:ともすると演出過剰な阿久さんの世界に、ヒデキは正面から突っ込んでいって、がっぷり四つの戦いを挑んでるよね。しかも、阿久さんのアクの強さに、決して負けてないんだよなー。

相澤:あ、チャッピーさん、いまさりげなく、ダジャレぶっ込みましたね?(笑)

チャ:拾ってくれてありがとう(笑)。オレはこの曲に、ヒデキの俠気(おとこぎ)を感じたよ。……ところで瞬くん、『ジャガー』をステージでカヴァーしろって言われたら、する?

相澤:しますします!

チャ:するんだ!?(笑)……このセリフ、恥ずかしくない?

相澤:いや、むしろ、超言いたい(笑)。さっきヒデキさんは「西城秀樹を演じてる」って言いましたけど、この曲はセリフの威力もあって、より「ヒデキ度」が増してる気がします。

チャ:「ヒデキ度」ってイイなー! 単位は「ヤングマン」?(笑)

相澤:『セクシーロックンローラー』が100ヤングマンだとすると、『ジャガー』は500ヤングマンですね(笑)。

チャ:熱中症に注意だね(笑)。……いやー、このままずっとヒデキを聴いていたいけど、次で最後にしよう。締めはやっぱ、コレだな。(♪ターンテーブルに乗せて演奏)

ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた

チャ:オレ、告別式の日、朝番組終わりで青山葬儀所に行ったんだけど、ギリギリ出棺に間に合って、最後に流れたのがこの曲だったの。1978年8月25日発売、26枚目のシングル『ブルースカイ ブルー』。

相澤:これ、イントロでもう、ジーンと来ますよね。

チャ:これも作曲・編曲ともに馬飼野康二さんなんだけど、斎場でイントロが流れた瞬間、「ヒデキーッ!」ていう絶叫があちこちで聞こえて、みんな号泣ですよ。またその日の空が、抜けるような青空でねェ……。

相澤:そのシチュエーションを聞くだけで、グッと来ますねー。

チャ:これも詞は阿久さんなんだけど、このときヒデキは23歳。
「いつまでも歌える曲を」と書き下ろしたんだけど、内容は「禁断の愛」なのよ。阿久さんらしいよねー。

相澤:あ、この前取り上げた、岩崎宏美さんの『シンデレラ・ハネムーン』と同じ匂いを感じますね!

チャ:だってね、いきなり女性の指から、ゴールドの指輪を引き抜いて「僕と一緒に人生を歩んでくれませんか?」だよ。婚約指輪なのか、結婚指輪なのか……どちらにせよ略奪愛だよね?

相澤:でも「いたずらで人を泣かせるんじゃない!」と、周囲の大人から頬をぶたれるんですよね?……てことは、主人公はそのときまだ少年。相手は、年上の女性っぽいですね。

チャ:人妻だとオレは思う。だけど駆け落ちもできず、この恋は実らなかったわけだ。で、そのとき味わったブルーな気持ちと対照的に、空はまぶしいくらいのブルースカイだったと。

相澤:ああ、それで『ブルースカイ ブルー』なんですね!

チャ:……あくまで、オレの解釈ですよ。でもこの主人公は、その女性のことが忘れられなくて、いまも青空を見るたびに思い出すんだな、その人のことを。

相澤:はいはい、わかります!

チャ:だけど過去を引きずってちゃ、いつまで経っても前に進めない。そこで彼は決心して、青空に向かって叫ぶんだよ。どこかでいま、同じ空を見ている彼女に「さよなら」と伝えてくれと。

相澤:そうやって、過去ときっぱり訣別することが、大人になるってことなんですよね。きますねー、この歌詞。

チャ:「青春の青」は「悲しみの青」……青空ってポジティヴな言葉なんだけど、ブルーは悲しみの色でもある。そこに青春時代の甘酸っぱい恋愛を重ね合わせたところは、まさに阿久悠劇場だよね。

相澤:そしてヒデキさんも、その心情を見事に歌い上げてますよね。大サビのところとか、本当に思いが伝わって来ますもん。

チャ:これはあくまでオレの想像なんだけど、ヒデキもスターになっていく過程で、やむなく諦めた夢とか恋とか、いろいろあったと思うのよ。この歌を歌うことで、そういったもろもろを吹っ切って、ヒデキは本当の意味で、大人の歌手になれたんじゃないのかな。

相澤:いやー、今回はいろいろ聴かせてもらって、ありがとうございました! ヒデキさんの曲って、どれも聴き応えがありますねー。改めて全シングルを聴いてみようかな……。

チャ:『ジャガー』のセリフ込みカヴァー、楽しみにしてるからね(笑)。

相澤:その時はヒデキ魂込めて、愛する炎をお見せします!!

……次回は、いしだあゆみ『ブルー・ライト・ヨコハマ』を聴きながら、二人が熱く語ります。お楽しみに!

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今回お邪魔したお店:「大陸バー 彦六」
東京都杉並区高円寺北2-22-11-2F
JR中央線・総武線高円寺駅北口より徒歩4分
営業時間:水・木・金・土 18:00~26:00 日・月 18:00~24:00
(7月より水・木は24:00まで)
火曜定休 地図・ライブ予定などはホームページにて
http://www.ukuleleafternoon.com/hiko6/

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▼相澤瞬 おすすめライブ情報はこちら!▼

◆6月25日(月) 下北沢MOSAiC (ソロ&ニュー昭和万博)
森本×相澤瞬 presents
『歌謡曲をもっと知ろう!Vol.2』
【出演】
相澤瞬、ニュー昭和万博、千葉山貴公、森ゆめな、
アイアムアイ、広瀬咲楽+橋詰遼(蜜)

◆6月26日(火) 渋谷TAKE OFF 7 (ソロ&ピアノデュオ)
SHIBUYA ! PARTY! PARTY! vol.15
【出演】
相澤瞬と白石なる、GAO、MUROCK O’ CLOCK、Sonic Blew

◆7月22日(日) 吉祥寺シルバーエレファント (プラグラムハッチ)
プラグラムハッチ レコ発&改名10周年記念企画
「TOKYOトレンディナイト」
【出演】
プラグラムハッチ、姫乃たま、弱虫倶楽部、かなまる、オワリズム弁慶

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【チャッピー加藤/Chappy Kato】
ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた
昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】
ヒデキは「自分の使命」として西城秀樹を演じていた
昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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