パルムドール受賞作、いよいよ日本のスクリーンへ。『万引き家族』

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第424回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、6月8日から公開の『万引き家族』を掘り起こします。


不完全だけど愛すべき、家族のカタチ

パルムドール受賞作、いよいよ日本のスクリーンへ。『万引き家族』
パルムドール受賞から急遽決まった先週末の先行上映では、2日間限定にも関わらず、全国325館326スクリーンで15.3万人の動員を記録。これは、ここ最近ヒットした邦画実写映画の公開初週の興行収入を上回る好成績。21年ぶりに日本映画がカンヌ最高賞を受賞という快挙が、普段映画を観に行かない層まで動かし、世間的にも高い関心を集めていることが伺えます。

そんな『万引き家族』が、いよいよ今週末から全国公開。大ヒットへの期待がますます高まるところです。

パルムドール受賞作、いよいよ日本のスクリーンへ。『万引き家族』
東京の下町、高層マンションの谷間にポツリと取り残されたように建つ、いまにも壊れそうな平屋。そこでは家主である初枝の年金を目当てに集まってきた、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。初枝の年金だけでは一家の生活費はとうてい足りず、生計を立てるために万引きを繰り返していた。

ある夜、治と祥太は万引きの帰り道に、団地の廊下で凍えている幼い女の子、ゆりを見つける。見かねた治が家に連れて帰ると、ゆりの体が傷だらけということが判明。その境遇を察し、信代の娘として育てることにする。

しかし、ある事件をきっかけに、家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や切なる願いが明らかになっていく…。

パルムドール受賞作、いよいよ日本のスクリーンへ。『万引き家族』
是枝裕和監督が最新作のテーマに選んだのは、犯罪でしか繋がれない家族。すでに死亡している親の年金を家族が不正受給していた事件をもとに、是枝監督が10年の歳月をかけて作り上げました。

祖母の年金をアテにして足りないものは万引きで補うという、常識はずれで社会の底辺にいるような一家なのに、何故かいつも笑いが絶えない日々を送っている。この捉えどころのないファミリーを形成するために、各世代の演技派俳優たちが集結しました。

教養も甲斐性もない父にリリー・フランキー、母にはカンヌ国際映画祭審査委員長ケイト・ブランシェットも絶賛した安藤サクラ。JK見学店で働く妹に松岡茉優、家族のまとめ役的存在の祖母を樹木希林。共演には池松壮亮、高良健吾、池脇千鶴、柄本明、緒形直人、森口瑤子など多彩な顔ぶれ。

そしてオーディションで選ばれた祥太役の城桧吏とゆり役の佐々木みゆが、観客に鮮烈な印象を与えます。

パルムドール受賞作、いよいよ日本のスクリーンへ。『万引き家族』
過去の是枝監督作品の中では、柳楽優弥がカンヌで最優秀主演男優賞を受賞した『誰も知らない』を彷彿させるものがある本作。犯罪でしかつながれなかった家族なのに、それでも明るく支え合って暮らす姿に、何故か愛おしささえ覚えてしまいます。

世間で“絆”という言葉が必要以上に連呼されている昨今、改めて、“絆”とは何なのか。是枝監督の問いかけと衝撃のストーリーに、あなたの感情も揺さぶられることでしょう。

パルムドール受賞作、いよいよ日本のスクリーンへ。『万引き家族』
万引き家族
2018年6月8日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:細野晴臣
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、緒形直人、森口瑤子、山田裕貴、片山萌美、柄本明、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林 ほか
©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
公式サイト http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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