8月14日(火)

『コラアゲンはいごうまん』

「コラアゲン はいごうまん」・・・ご存知でしょうか?
お肌がツルツルになる健康食品の名前ではありません。
「コラアゲン はいごうまん」は、れっきとした人の名前です。喰始さんが率いる劇団「WAHAHA本舗」の新しいセクション、「WAHAHA商店」に参加している芸人さんなんです。この人のライブビデオを拝見したら、これが面白い!面白いんですが、テレビで観るのは、ちょっと難しい感じ・・・。何故か? テレビの担当者が、二の足を踏むような内容ばかり!
手元にリストがあるので、ちょっとご紹介しましょうか。
「宗教団体」「インド」「霊能者」「お葬式」「ヌーディストクラブ」「UFOサークル」「ゲイサウナ」そして「ヤクザ」・・・。
喰始さんの指令を受けて、彼はこういう集団の中へ突撃、又は潜入。普通の人にはできない貴重な生々しい体験談を、小さな舞台で披露する。名づけて「ノンフィクション スタンダップ コメディアン」!ねえ、聴きたいでしょう? 観たいでしょう? でも、難しいんです。

「コラアゲン はいごうまん」本名、森田嘉宏(よしひろ)さん、37歳。その芸歴は古く19年になります。振り出しは「吉本興業」の養成所!そして、オール阪神・巨人の背の高いほうの方「巨人」師匠に弟子入り。学歴のない父親と同じ苦労はさせたくないと、小さいころから塾通い。友達と遊んだ思い出が、ほとんどない! そんな育てられ方をした子が
厳しい芸人さんの世界に飛び込んだものですから、大変!
「何や、その挨拶の仕方は?」「足はきちんと揃えて立っと かんかい!」
「衣装に、シワが入っとるやないけ!」「やめろ、カス!」「ボケ!」
来る日も来る日も叱責、罵倒、罵詈雑言の雨あられ・・・。
失敗して坊主になるのは当たり前。謹慎処分などは序の口。
2年間の修業の間に、2回も破門を言い渡されたことがあります。けれど、コラアゲンさんは言います。
「人の気持ちを考える、人の心理を読むなんて出来ませんで した。今になって巨人師匠の言いたかったことが、全部分 かりますわ」
本当は流儀も芸風もまったく違う「WAHAHA本舗」の公演に、大阪の珍しい餅を持って、今も必ず足を運んでくれる巨人師匠。すべては出来の悪い弟子、コラアゲンさんへの思いやりなのです。
さて、3回目の漫才コンビを組んで、ようやく芽が出てきたころ、とんでもない事件が起きます。相方が借金を作って逃げた!このときの肩代わりをしてくれたのも、巨人師匠でした。しかし、心が壊れてしまったコラアゲンさんは、言ってしまいます。
「やめよう! やめるわ・・・もう疲れたわ」
この時の心を支えてくれたのは、当時付き合っていた彼女でした。
「あんたがカタギになって結婚してくれるのはうれしい。
 けど、人の借金のせいでやめたら、残りの人生はどうな  る?漫才がトラウマで笑えんような人とは、一緒に暮らし とうない。自分で上げた幕なら、人のせいやなく自分の意 思で閉めてほしい」
この言葉に励まされ、コラアゲンさんは一人で舞台に立ちます。そして3年後、東京へ出てきた彼を物心両面で支えてくれたのも、やっぱり彼女でした。令嬢でもなんでもない普通の会社員だった彼女の借金は、200万円を超えていたといいます。別れのキッカケは、彼女の仕送りを遊びに使ったことを告白したこと。彼女は言いました。
「もう、疲れたわ・・・」とても静かな別れでした。

それからも、同僚は出世。後輩には抜かれる。やっぱりテレビなのか?コラアゲンさんは、体験入門をしていたヤクザの組の組長代行に、その苦しい胸の内を明かします。
「ボクは、どうなるんでしょう?」
代行は言いました。
「お前は、芸人としての信念がブレ始めとる。
 何で芸人をやっとるんや? お客様を喜ばせるためやろ?
 信念のためには、命を張らんと、いかんのやないか?
 ヤクザも職業やない。信念を貫く生きざまのことや!
 それが本物の芸人というものなんじゃないのかい?」
コラアゲンさんは号泣! 
いろんな人に支えられ、その破れかぶれの舞台は、まだまだ続きます。