8月9日(木)

『故郷に水を!ギニアと日本「水」を賭けた友情物語』

 「アフリカに井戸を!そして生きる為の水を!」というスローガンのもと、
今、清涼飲料水メイカー(ヴォルヴィック)では、ミネラルウォーター1リットルを購入していただくことで、アフリカに10リットル分の水が井戸から生まれますよ!
というキャンペーンを行っています。
水の豊かな国・日本では想像も出来ないアフリカの抱えている「水事情」。
その厳しい現実を知り、誰に頼まれたわけでもなく、アフリカ・ギニアに渡って井戸掘りをした日本人男性がいます。
しかし、その行く手には、様々な難関が待ち受けていました。


 中村和利(なかむら・かずとし)さん、58才。会社員としてサラリーマン生活を送っていた中村さん。ある日、息子さんが授業の一環として参加していたセミナーに出掛けます。
それは、千葉県に残る明治時代からの井戸掘り技術「上総掘り(かずさぼり)」にまつわるセミナーでした。
同じ千葉県で暮らしていながら、それを知らずにいた中村さんは上総掘りに深く感銘を受け「よっし!自分もやってみよう!」と決意するんです。
そして、すぐさま73才になる先生のもとへ出向き、
定期的に行われている「上総掘り講座」へ参加させて欲しいとお願いをしました。
上総掘りとは、竹と簡単な鉄管だけで行う井戸掘り技術で
作業はすべて人力=人間の力。
その伝統技は、学べば学ぶほど、知れば知るほど奥が深く、
熱心に勉強した中村さんは、やがて道具を作るまでの技術も
取得されていったそうです。
そして、その授業には、ある一人の外国人男性も参加していました、それが、アフリカ出身のジャロ・モハメドさんとの出会いだったんです…

 日本の飲料メイカーで働いていたジャロさんは、数年前…里帰りした際、家族たちが強いられている厳しい「水不足」事情を垣間見て愕然としたそうです。
「何とか家族に水のある暮らしをさせてあげたい!」と、ジャロさんは3年前、上総掘りの技術を学ぶべく、門戸を叩いた・・という事情を持っていました。
そして、そんなジャロさんの話を聴いているうちに、中村さんはこう感じます…
「彼の想いは、日本人が忘れつつある“家族を想う心”そのものだ」
ジャロさんの熱意に打たれ、中村さんは一大決意をするんです、それが“ジャロさんの故郷へ行き、井戸掘りをすること”

 さぁ、そこから、ジャロさんを中心に数名の仲間を集め、
故郷ギニアへ渡る計画を立て始めます。
しかし、夢と現実の間には大きな壁が幾つもあったんです、
まず一番大きな問題は、渡航費用などのお金の問題、
そして、会社員という立場である中村さんには長期休暇をいかに取るか、これが最大の難関だったようです。すべてをクリアするまでにナント2年間。
数ヶ月の有給休暇を何とか取り付け、そしてご家族を説得し、このプロジェクトに賛同したもう一人の日本人仲間と共に3人は一路ギニアへと出発。
それが今年の2月12日のことでした。
帰国予定の4月15日まで、およそ2ヶ月間。時間はある、絶対やるぞ!
綿密なる計画のもと、旅立った3人ですが…
早くもそれを阻むものが待ち受けていたんです。
乗り継ぎの為に立ち寄った香港で告げられた「ギニアへの入国拒否」
理由は、ゼネストによる緊迫情況の為、入国は許可できない!という事でした
仕方なく3週間、中国に滞在し、やっとのことギニアに到着したのは、3月8日。
井戸を掘る現場を下見し、さぁ…時間がない、作業に取り掛かろう! ところが、、
今度は道具が到着しません。結局、その道具が中村さん達の元へ届いたのは4月6日。
しかしフタを開けてみればアレが無い、コレが無い…で
道具を揃えるのに丸1日。結果、残り時間は、たった2日半だけ!(厳しい!)
しかし、落ち込んでいる場合じゃ〜ありません。
こうなったら、やれるだけのことをやってやる! 
帰国するギリギリまで3人は作業を続け、
1日目に4センチ、2日目には44センチ、3日目…半日で30センチ、合計81.5センチしか掘ることが出来ませんでした。
残念ながら、水をくみ上げるところまで掘ることは出来ず、帰国の途についた中村さん。
様々なハプニングに見舞われながらも、今回の旅を振り返り
こうおっしゃっています…
「定年後の目標ができた」

「ギニアに水を!」… 一年半後、定年を迎える中村さんの夢は、
「ギニアに残した宿題を完成する」ことです。
でも、そこにはさらなる難関が待っているんですねぇ、、、

それは“奥様の了解”なんだそうです。


        
参考までに

★中村さんたちが向かったギニアのイラヤ村は、
 村の中に井戸がたった一つしかなく
 女性や子供たちが何キロも離れた井戸に水を汲みに行って いる。
 それだけで、ほぼ一日が終わってしまうので、子供たちは 学校へも行けない、
 そういう状況だそうです。

★千葉県で生まれた「上総掘り」の技術をもっと伝承してい こうと、
 <上総掘り技術伝承研究会>も発足。
 現在40名ほどの会員がいる。

 そして、ジャロさんは現在もギニアに残り井戸を掘り続け ていて、
 少しずつですが、作業は進められている様子(しかし、い まだ水は汲めてない)

★今回、中村さん自身…初となる海外。
 現地では、ジャロさんの家族や様々な人と交流し、食事会 などもして貰ったそうです。