8月8日(水)

『奈良のシカ守り隊』

奈良公園に棲息するシカは天然記念物だそうです。だから人間が手を出しちゃいけない。あくまでも野生のまま。その奈良公園のシカが、この1年間に、366頭、死んでいます。原因は「病気」「交通事故」がほとんど。「病気」といっても人間が与えるエサが原因なんですね。観光客がクッキーなどの動物性たんぱく質のお菓子を与えたり、中には、弁当のお寿司を食べさせる人もいるんですね。一番困るのは弁当を包むラップで、ゴミ箱に捨てると、その匂いをかいで、エサだと思い込んでシカが食べちゃう。鹿は、ウシ科の動物で、胃袋が4つあって、ゆっくり消化していくわけですが、死んだシカの胃袋を見ると100%、ビニールが見つかるそうです。つまり、ビニールを消化できないまま、栄養失調で死んでいます。そこで立ち上がったのが、奈良県立大学の大学生9人で結成した『奈良のシカ守り隊』です。観光客が「鹿せんべい」以外のエサを与えないように、パトロールをしたり、奈良市長に面会し、「奈良のシカ保護条例」を制定するように要望書を提出しています。隊長は3年生の浜田夏実さんという女子大生。事務局は同じ大学3年生の山下正樹さん。この方、62歳のおじさん大学生でした。還暦になってなぜ大学に入ったのか? 山下さんにうかがいましたら、いろいろ事情がありました。高校を卒業すると家庭の事情で大学進学を断念、大阪に本社がある大手銀行へ就職します。しかし銀行は学歴社会。高卒と大卒では給料もボーナスも出世も違っていました。山下さんは、45歳のとき、関連会社に出向が決まり、このとき「出世競争からはずれた」と実感します。支店長を目指して仕事を頑張ってきましたから目標を失いかけました。このとき、山下さんは、心に誓います。
「定年後、大学に入ろう!」
60歳、定年を迎えた山下さんは、念願かなって地元の奈良県立大学に入学します。憧れのキャンパスライフ、ところが、まず驚いたのは、授業中の学生の私語が多いこと。ペチャクチャペチャクチャ止まりません。もっと驚いたのは、その学生を大学の先生が注意せず、聞いていようと聞いていまいと、関係ない顔で、授業を進めていることでした。イライライライラていた山下さん、とうとう授業中に爆発してしまいます。
「やかましい! いいかげんにせんかい!」と学生を叱り飛ばしました。学生も、大学の先生も、「なんで怒っているの?このおじさん?」と、ポカンとした顔です。山下さんは、学長に「こんな授業を続けていていいいのでしょうか」といった内容の「抗議文」まで提出します。こんな還暦の大学生ですから、大学内で浮いてしまうのか?いや違うんですね。「山下さん!」とか、「先生、先生!」と寄ってくる学生が多いこと!「先生と呼ぶのは、やめてよ」と言っても、「人生の大先輩だから、先生と呼ばせてください」と、就職のこと、将来のこと、目標を持てない悩みなど、いろんな相談をしてくるんです。山下さんは、「お金と、恋愛以外は、相談に乗るよ」と笑って答えています。去年、2年生になり、ゼミの授業が始まりました。山下さんが入ったゼミは、地域興し、地域振興をテーマです。しかし、「何を、研究したらいいか」、最初、見つかりませんでした。
そんなとき、奈良の鹿が話題になります。奈良県に住みながら、奈良のシカが、天然記念物だということを、みんな知りませんでした。さらに、一年間に300頭以上が死んでいることも、驚きました。そこで山下さんは、ゼミの仲間に呼びかけて、『奈良のシカ守り隊』を結成します。山下さんは、言います。「今の学生は、ほとんどが目標を持っていません。でも、目標を持たせると、みんな、イキイキと、活動を始めるんですよ。」
いま、夏休みに入って、いま、山下さんは、『奈良のシカ検定』を企画しています。来年の10月に、検定試験を、奈良県立大学で開催しようと、「奈良のシカ守り隊」が集まって、準備に取り掛かっています。

では、ここで、『奈良のシカ検定』の模擬試験をやってみましょう!
@奈良にシカが住み着いたのは、何時代?
A奈良のシカは、どこからやって来た?
Bいま、何頭の鹿が、奈良公園に棲息している?
C吉永小百合さんが歌っていた、奈良のシカの曲名は?

正解発表!

@およそ1000年前の奈良時代。
A茨城県の鹿島神宮のシカが、神様を乗せて、空を飛び、奈良の春日山に降り立ったという伝説が残っています。
Bおよそ1200頭。
C「鹿のフン」・・・ではありません。『奈良の春日野』が正解。これ、『奈良のシカ検定』に出ますから、覚えおくように!