7月30日(月)

『いのちのアサガオ』

 「いのちのアサガオ」と、特別な名前の付けられた
アサガオがあります。小学校や中学校など全国の教育現場
で、命の大切さを考えるための教材として大事に育てられて
います。
この「いのちのアサガオ」は、新潟県の旧・中条町(なか
じょうまち)、現在の胎内市(たいないし)の小学校で、
一人の新入学生が育てていたものです。
名前は、丹後光祐(たんご・こうすけ)くん。
いつも明るい活発な男の子でしたが、「急性リンパ性
白血病」という血液のガンと戦っていました。
それでも入学して約3ヶ月間、頑張って世話をしていたと
いいます。しかし…1学期が終わる7月に病状が悪化して、
入院をしてしまいます。
そして9月。光祐くんは、7歳という短すぎる生涯を閉じ
ました。育てる人がいなくなったアサガオは、学校から
光祐くんの家に移され、庭の片隅に植えられました。
しかし光祐くんのお母さん=まみこさんは、そのことを
知りませんでした。ずっと病院に泊まり込んで、光祐くんと
一緒に病気と戦っていたからです。だから庭に光祐くんの
アサガオを見つけたとき、自分の最愛の子供が「懸命に
生きた証(あかし)」として、静かに育てていこうと考えた
そうです。
次の年、光祐くんのアサガオは、およそ30粒ほどの「種」が
出来ました。そのいくつかは、また庭に植えたのですが…
多くの種はあまってしまいました。
まみこさんは、それを捨てることができませんせした。
子供が生きた大切な証の「種」。それを、どうして捨てる
ことができるでしょうか。まみこさんは…自分が活動する
「にいがた・骨髄バンクを育てる会」のイベントで、
袋に小分けして来場者に配ったのです。
このことは、光祐くんの話と一緒に新聞記事となって、
いつしか…種が種を生んで全国へと広まっていきます。
まみこさんはいいます、
『実は、これ、光祐が天国から導いてくれたおかげだと
思っているんです。』
なぜそう思うのか。まみこさんは当時を振り返って、
涙ながらに、こんなふうに語ってくれました。

その日の朝…お医者さんは言ったそうです。
『すぐに病状が悪化することはないでしょう』。
だから病室で付き添っていたまみこさんは、のどが渇いたと
ぐずる光祐くんに、ちょっと我慢してね、そうたしなめた
そうです。でも光祐くんは、いつになく…飲み物を欲しがり
ます。しかたなくまみこさんは、売店に行って、スポーツ
ドリンクを買い光祐くんに与えました。すると、ごくごく
飲むという元気もなく、口を湿らす程度で直ぐに満足したと
いいます。 そして夜。苦しそうにする光祐くんの様子が
いつもと違うことに気がつきます。でも、お医者さんには
「病状がすぐには…」と言われています。ダッコをして、
腕の中の光祐くんへ、優しい声を掛け続けました。
やがて光祐くんは、しきりに「お医者さんに診てもらって」
という言葉を繰り返すようになります。

「おかしい」…まみこさんは、急いで看護師さんを呼び
ました。駆けつけた看護師さんはぐったりした光祐くんの
腕に血圧計を巻き、計り始めました。ところが、看護師さん
が首を傾げながらいいます。
『数字がでないなぁ。もう一度計らせてね…』
2回目、看護師さんの顔がさっと変わり、お医者さんを
慌てて呼びました。しかし…その救命処置に、光祐くんの
心臓が再び動くことはなかったのです。
まみこさんはこのことを思い出すと、悔しくて、悔しくて、
ただ泣くばかりだったといいます。
「私は、自分の子供を助けてあげることができなかった」
そう、自分を責めるしかなかったのです。
しかし…ひとりになったとき、こんな「声」が心から沸き
上がってきたというのです。『泣いてるだけじゃダメ。
あなたには、もっとらなきゃいけないことがあるでしょ』
この声に押されるように、まみこさんは光祐くんのお葬式が
終わるとすぐ、みずから連絡をとって「骨髄バンク」への
登録を呼びかけるボランティア活動に参加します。

それが、初めて「アサガオの種」を配った「にいがた・骨髄
バンクを育てる会」だったのです。
だからまみこさんはいいます、この活動に入ったのも、
アサガオの種を配ったのも、全部、光祐くんの導きなん
ですと。
4年前、まみこさんの体からも…「乳がん」が見つかり
ました。今は、病気の療養をしながらの「活動」です。
それでもまみこさんは前向きです。
私がやらなきゃ誰がやる。
毎年夏に、いつしかそう呼ばれるようになった『いのちの
アサガオ』が、大きな花を咲かせることを、
心に強い励みにしながら。


『にいがた・骨髄バンクを育てる会』では、「いのちの
アサガオ」の種を配っています。
基本的には「無料」で、送料も「育てる会」が負担します
が…余裕があれば、活動を支えるための「寄付」をお願い
します。もちろん、金額はいくらでも構いません。

申し込みは、FAXで。
FAX番号は、025‐233‐6008 
  
メールでも申し込みは出来ます。
『にいがた・骨髄バンクを育てる会』で検索すれば、
HPがすぐに分かります。詳しくは、それをご覧下さい。