6月7日(木)
『選挙』 いよいよ来月に迫ってきた参議院議員選挙・・・・。 行方不明の年金問題の(ほとぼり)を冷ますためか、 国会を延長して、選挙の日程を延ばしたいなんて話もあるようですが、さあ、どうなるでしょうか?
主権在民=国民主権。日本は民主主義の国でありますから、 言うまでもなく、主役は有権者のはず・・・・なんですが、 現実に行われている「選挙」とは、どんなものなのか? 表面からは見えにくい選挙の舞台裏、奥の奥というものを、 有りのままに写しとったドキュメンタリー映画が、 あさって(土曜日)に封切られます。 タイトルはズバリ『選挙』!
舞台はおととし、2005年の秋に行われた川崎市議会議員の補欠選挙。自民党議員の一人が、参議院議員にくら替えしたために、川崎市議会の勢力図は、自民18対民主18と、同数になってしまった。自民党としては、何が何でも勝たねばならない選挙です。自民党は公募をかけ候補者を選びました。 ここで選ばれたのが、東京大学卒業の山内和彦さん。当時40歳。ところがこの山内さん。東大出は東大出でも、ただの東大出じゃなかった。授業料はタダだし、給料も出るというわけで、最初は気象大学校に入学。2年生のときに「山を見たい」ということで、信州大学に行った。ところがやっぱり「東大に行きたいなぁ」と、24歳で東大に入り直す。 で・・・11年もかかって東大を出たという根っからの自由人なんです。選挙に出ることになった時の職業は、切手・コイン商。学生時代のアルバイトが嵩じて始めた商売でした。 つまり、政治的には全くの素人だったんですが、ただ一点! 小泉改革には賛同していた。そこで、論文と数回の面接に合格。さあ、こうして自民党の市議会議員候補になった山内和彦さん。その12日間の選挙活動を写し撮ったのがこの映画『選挙』なんです。
「山・内・和・彦」・・・左の肩から右の腰にかけて、名前を書いたぶっといタスキをかける所から、選挙運動が始まります。誰もが足早に素通りしてゆく駅前。小学生しか通らない住宅街。山内さんのやや自信のなさそうな声が響きます。 政策や気の利いた話を述べるわけでもなく、ひたすら続く名前の連呼。これは、山内さんに能力がなかったせいではありません。「政策は必要ない。名前だけでいい」という指示を守っただけのこと。 「とにかくお辞儀、電信柱にもお辞儀」「握手の最後は相手の目を見て」「老人クラブの運動会に行こう」「ラジオ体操をしよう」「神輿をかつげ」 何をやっても叱られる、やらなくても叱られるという状態。 それでも「はい!」「はい!」と、決して、笑顔を絶やさない山内さん。 ジックリと、ものを考える暇などありません。言われるがままに動く!つまり、己を殺さなければ、アホにならなければ、候補者は務まらない。 これが、選挙の現実なのです。 選挙運動のために「仕事をやめなさい!」と言われた奥さんは、さすがに切れました。それをなだめながら家に帰る夜更けの道。このとき、山内さんを支えていたものは、市議会議員の立場から、小泉改革の一員になりたい・・・この使命感だけだったといいます。
今年、2月に行われたベルリン国際映画祭で上映された『選挙』・・・。 ここで、東大時代の同級生で監督をつとめた想田和弘さんと、主役の山内和彦さんは、拍手喝采を受けます。 評価の中には「何と自然な上手い演技なんだ!」というものもありました。 「いえいえ、あれは演技じゃないんです。全部ホントのことなんです」 この説明に、ドイツ人は目を丸くして驚いたといいます。 「本当の事? ニホンは、何てバカげた選挙をやっているんだ!」 太平洋戦争の同じ敗戦国として、見事な経済復興を遂げた日本に、敬愛の念を抱いているドイツ人。しかし、彼らの選挙に、ズブの素人が立候補するなどというのは、考えられないことだったのです。ですから、この映画をチャップリンの喜劇のように見ていたのです。 それくらいコッケイで、陳腐で、バカバカしい日本の選挙の現実。 山内さんはいまだに、自分の映画を直視できないそうです。 けれども、山内さんは言います。 「あれだけ耐えたんですから、選挙の結果は圧勝だと思ってました。Wスコアで勝つと思ってました。ところが結果は、わずかの差の勝利。ここに、川崎市民の健全さを感じて、救われるんです。まだまだ未熟な日本の民主主義。バカにされている有権者。自分の顔を立てるために、候補者や議員を使う地元の有力者。本当に、このままでいいんでしょうか?」
この映画が、日本のおかしな民主主義に一石を投じてくれたら・・・。そんな願いから、山内さんは、ちっともカッコよくない自分、コッケイでぶざまな姿をスクリーンにさらけ出すことを了承しました。5月2日・・・任期の満了とともに、次の選挙には立候補しなかった山内和彦さん。 今は、今月生まれてくる赤ちゃんの育児支援に専念したいと考えています。
ご紹介したドキュメンタリー映画『選挙』は、あさって9日の土曜日、渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で封切られます。 当日11時からは、ザ・ニュースペーパーのお二人が扮する 小泉前首相と安倍首相もステージに登場! 想田監督・山内夫妻の舞台挨拶もあります。 そのあと、渋谷の街に繰り出して、この映画『選挙』PRのための街頭宣伝も行われるそうです! お問い合わせは、 《東京03・5459・1173 *くり返し》 「アステア」までどうぞ。
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