スポーツ伝説

11月1日~5日の放送内容

【レスリング 乙黒拓斗選手】

 学生時代にレスリング選手だった父親の影響で、兄の圭祐選手と5歳からレスリングの練習を始めた拓斗選手。学校から帰ると、父親が自宅に作った8畳ほどの練習場で夜遅くまで練習を積みました。英才教育が実って、2018年の世界選手権では日本男子最年少の19歳10カ月で世界チャンピオンに輝きます。しかし連覇を目指した翌19年の世界選手権は、相手に研究され5位止まり。一転して挫折を味わいました。それでも19年末の全日本選手権を連覇し、東京オリンピック代表の座をつかんだ拓斗選手。74キロ級の代表プレーオフを制した兄・圭祐選手と共に、兄弟で東京オリンピック出場の夢を果たしました。
 ところがオリンピック本番、先に登場した兄・圭祐選手は1回戦で敗れてしまいます。拓斗選手は時に自分を励まし、スパーリング相手も務めてくれた兄の雪辱を誓ったのでした。決勝の相手は、リオ大会57キロ級で銅メダルに輝いたアゼルバイジャンのハジ・アリエフ選手。超攻撃的なスタイルの拓斗選手に対して、アリエフ選手は防御を固めて対抗。2対2で、内容差でアリエフ選手が有利なまま時計は進んでいきましたが、残り20秒を切ってからのタックルで逆転すると、最後は逃げに逃げて5対4の僅差で勝利。世界選手権の屈辱、そして兄の無念も吹き飛ばす忘れられないメダルとなりました。


  
【柔道 濵田尚里選手】

 東京オリンピックには30歳で出場。柔道の女子日本代表の中では最年長で、普段は自衛隊の隊員という顔も持つ濵田選手。自衛隊に入隊した頃、全国大会や国際大会で少しずつ結果を残せるようになり、オリンピック出場を意識するようになったといいます。得意技は寝技。自分から仕掛けて寝技に持ち込むパターンもあれば、相手の技を利用して寝技に持っていくこともできるのが濵田選手の強み。持ち前の瞬発力と体のバネを利用し、色々なパターンで攻めてくるので相手は寝技で来ると分かっていても対応しきれないのです。また濵田選手は、柔道の練習以外にもロシアの格闘技・サンボにも取り組み、2014年には世界サンボ選手権大会で優勝。サンボで得たテクニックを柔道にも生かし、貪欲に得意の寝技を磨いていきました。
 女子78キロ級の代表として、自身初のオリンピックに臨んだ濵田選手。順調に勝ち進み、決勝まで駒を進めました。相手は、最大のライバルであるフランスのマドレーヌ・マロンガ選手。投げ技を仕掛けたマロンガ選手を、濵田選手は慌てずに倒して寝技に引き込みます。そして開始1分9秒、崩上四方固で一本勝ち。4試合をオール一本勝ちでつかんだ金メダルは、これまでの練習量のたまものでした。


 
【柔道 素根輝選手】

 柔道を始めたばかりの小学校低学年の頃から、「オリンピックで金メダルを取りたい」と公言していた素根選手。高校2年生の時に、世界ジュニア選手権で優勝。ただしネックになったのは、最重量級ではひときわ小柄な162㎝の身長でした。他の選手との体格差をカバーすべく常に意識したのは、座右の銘「3倍努力」です。手に入れた無尽蔵のスタミナと足技を武器に2019年、全日本選手権決勝でライバル朝比奈沙羅選手を破り日本代表入り。この年の世界選手権とグランドスラムを制し、東京オリンピック代表内定第1号の座を掴んだのです。
 大柄な海外の選手を意識し、男子選手を稽古相手に努力を続けて迎えた東京オリンピック本番。素根選手は初戦の2回戦から準決勝までの3試合をすべて一本勝ちと、抜群の安定感で勝ち上がります。そして迎えた決勝の相手は、ロンドンで金メダル、リオでは銀メダルを獲得しているキューバのイダリス・オルティス選手でした。試合は一進一退のまま、延長戦へともつれ込みます。このとき威力を発揮したのが、長年の努力で手に入れた無尽蔵のスタミナでした。足技や投げ技などで終始攻め続けた素根選手に対し、技が出せなくなったオルティス選手の指導が3つに。相手の反則負けで、素根選手が金メダルを獲得したのです。日本の女子選手がオリンピックの最重量級で金メダルを獲得したのは、アテネ以来4大会ぶりでした。



【柔道 新井千鶴選手】
 
 新井選手の実力が開花したのは高校入学後、体格がどんどん大きくなってからでした。中学時代48キロ級だった新井選手は、食べる量を増やして階級をアップ。高校1年で57キロ級、2年で63キロ級、さらに70キロ級と階級を上げ、高校3年生のインターハイで初出場・初優勝を果たします。ただし、高校卒業後の2012年に進んだ実業団では壁にぶつかり、リオ・オリンピックの代表入りも逃します。それでもこの落選をきっかけに自分のスタイルを見直し、足技の強化に着手。実業団に入って6年目の17年、ついに世界選手権で初優勝を飾り、翌年には連覇も果たしました。
 ところがその後は海外勢の徹底マークに遭い、19年の世界選手権ではメダルを逃すなど不振が続いた新井選手。そんな時、同じ70キロ級でアテネ・北京オリンピックを連覇した上野雅恵さんが所属先の監督に就任。元・金メダリストの指導をきっかけに、再び国際大会で勝てるようになった新井選手は、東京オリンピック代表となり本番を迎えました。東京オリンピックの女子70キロ級、新井選手は準々決勝まで順当に勝ち上がり、準決勝でロシアの22歳の新鋭マディナ・タイマゾワ選手と対戦。今年5月の国際大会で負かされ、悔しい思いを味わった相手でした。16分41秒という長い戦いを制し、宿敵にリベンジを果たした新井選手は、決勝では優勢勝ちで悲願の金メダルに輝きました。



【柔道 永瀬貴規選手】 

 お家芸の柔道で日本勢が長年苦戦してきた階級が、男子81キロ級です。パワー自慢やスピード自慢、長身選手など、あらゆる体型や柔道スタイルの選手が集まり、日本人選手の金メダルは2000年のシドニーオリンピックが最後でした。前回のリオで「金メダルの本命」と呼ばれた永瀬選手も、準々決勝で敗退。敗者復活戦を勝ち上がって銅メダルを獲得しましたが、笑顔はありませんでした。
 このままで終わりたくないと、決意を新たにした矢先の2017年世界選手権で右ひざを負傷。復帰まで1年、調子を取り戻すまでさらに1年と我慢の日々を重ねながらも、なんとか東京オリンピック代表の座を手にします。ただし世界ランクは13位。上位8名のシード選手になれず、強敵ばかりと戦う厳しい戦いになりました。しかし終わってみれば、5試合中4試合が延長戦での勝利で、粘り強く・泥臭く金メダルをつかんだ永瀬選手。男子81キロ級では、日本勢にとって実に5大会ぶりとなる金メダルでした。

 

来週のスポーツ伝説は……

11/8(月) 競 歩 池田向希・山西利和選手
11/9(火) 競 泳 本多灯選手  
11/10(水) 大相撲 白鵬翔関
11/11(木) 大相撲 妙義龍泰成関
11/12(金) 大相撲 宇良和輝関

お楽しみに!!
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