スポーツ伝説

9月6日~10日の放送内容

【競泳 大橋悠依選手】

 東京オリンピックを前に、貧血や股関節痛など、コンディションの不調に悩まされていた競泳の大橋選手。今年6月、長野で行われたタイムトライアルでは、自分本来の泳ぎができず心が折れたと言います。距離の長い400m個人メドレーを辞退して、200m個人メドレー一本に絞ろうかと考えたことも。日本代表の平井伯昌コーチから「チャレンジするのをやめる選択肢もある」と言われ、悩んだ末に大橋選手が出した結論は、「挑戦を続ける」ことでした。
 迎えたオリンピック本番、大橋選手はまず、400m個人メドレーの決勝に進出します。大橋選手は平井コーチと相談し、後半の300m過ぎからスパートを掛け、そのまま逃げ切る作戦をとりました2種目の背泳ぎで先頭を捉え、続く平泳ぎで後続を引き離し、ラストの自由形へ。最後の50mは気合いで逃げ切り優勝。この種目では日本初の金メダルでした。歓喜の金メダルから3日後、今度は200m個人メドレーの決勝に臨んだ大橋選手。逃げるレース展開だった400とは違い、150mを2位で折り返し、最後の自由形に突入します。残り15mからは息継ぎなしのスパートをかけ、最後の最後で逆転。わずか0秒13差での金メダル獲得で、大会2冠の偉業を成し遂げたのです。

  

【柔道 阿部一二三&詩選手】

 東京オリンピックの柔道・男子66キロ級の兄・阿部一二三選手、女子52キロ級の妹・詩選手のふたりが伝説を残しました。先に決勝の舞台に上がったのは、詩選手です。相手は世界ランク2位という強敵、フランスのアマンディーヌ・ブシャール選手でした。詩選手は、兄を真似て身につけた「袖釣り込み腰」を武器に世界選手権を2度制しましたが、海外勢に研究され、2019年には外国人選手相手の連勝記録が「48」でストップ。詩選手に黒星を付けたのが、ブシャール選手でした。東京オリンピック決勝の舞台、8分を超える激闘の末、最後は詩選手が寝技に持ち込み、抑え込み一本。因縁の相手を倒し、21歳の若さで金メダリストに輝いたのです。
 詩選手の快挙からおよそ30分後、今度は兄・一二三選手が決勝に挑みました。妹と同様、優勝候補として徹底的に研究されていましたが、新たに足技を磨いてきた一二三選手。その足技が決勝で炸裂。開始2分過ぎに大外刈りで技ありを奪うと、そのまま優勢勝ち。この瞬間、個人種目では日本史上初となる「兄妹同日金メダル」の偉業が達成されたのです。


 
【卓球 伊藤美誠選手】

 東京オリンピックで伊藤選手はまず、男子の水谷隼選手とコンビを組み、卓球混合ダブルスに出場します。二人の出身は静岡県磐田市で、互いの実家は歩いて10分ほどという距離。12歳の年齢差はあるものの、兄妹のように育ってきた幼なじみの2人だからこその絶妙なコンビネーションは、何度も奇跡的な展開を生みました。ドイツペアとの準々決勝は、相手に7度のマッチポイントを許す苦しい展開でも最後まで諦めず、大逆転勝利を収めます。続く準決勝で世界ランク1位の台湾ペアを倒すと、決勝で迎えた相手は卓球王国の中国ペア。過去0勝4敗と苦手にする難敵を前に、ここでも最初の2ゲームを許す苦しい展開となりました。しかしここから、伊藤・水谷のペアはドイツ戦同様、脅威の追い上げを見せます。ゲームカウント3対3と最終セットまでもつれ込むと、勢いに乗る日本ペアが先にマッチポイント。最後は伊藤選手のサーブが相手のレシーブミスを誘い、日本卓球史上初のオリンピック金メダルを勝ち取ったのです。
 伊藤選手の快進撃は、まだまだ続きます。女子シングルスでは、準決勝で中国選手に敗れたものの、3位決定戦を制して銅メダルを獲得。日本人選手がオリンピックで女子シングルスのメダルを手にしたのは、これが初めてのことでした。さらに女子団体では、日本のエースとしてチームを決勝戦へと牽引。最後は中国チームに敗れ、銀メダルという結果となりましたが、女子団体に3大会連続のメダルをもたらしました。
  


【野球 稲葉篤紀監督】
 
 野球日本代表は、1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルを獲得しています。 但しこの時は、公開競技の位置づけでした。その後の6大会で金メダルに届かず、2008年の北京大会は4位。メダルなしの屈辱を味わいました。しかも北京を最後に、野球は競技から除外されてしまったのです。この北京大会に選手として参加していたのが、稲葉監督でした。3大会ぶりに野球が競技に復活した東京大会は、借りを返す絶好の機会。代表のメンバーを発表した会見で、稲葉監督も「オリンピックの借りはオリンピックで返す。目標は金メダル」と宣言しました。
 選んだメンバーは、キャプテン格の巨人・坂本勇人選手をはじめ、オリンピックの前哨戦と言われた19年のプレミア12で一緒に世界一を勝ち取った選手が中心。必ずしも好調とは言えない選手も含まれていましたが、稲葉監督はあえて「オリンピックへの思い」が強い選手を優先して選んだのです。ヤクルト時代、恩師・野村克也監督から学んだ“ID野球”を駆使し、データに基づいた選手起用を行う一方、活躍の機会が少なかった選手にも声を掛け、チーム一丸のムードを作っていった稲葉監督。5戦全勝で日本を金メダルに導いた原動力は、稲葉監督の人心掌握術でした。



【ソフトボール 後藤希友投手】 

 東京オリンピックのソフトボールで、日本の全6試合中5試合に登板。22奪三振を記録して失点はゼロ。“神リリーフ”と讃えられたのが、弱冠20歳のサウスポー・後藤投手です。代表に抜擢した宇津木麗華監督は「左右の違いはあるが、エース・上野由岐子投手の若い頃とイメージがだぶる」と、後藤投手を高く評価。その上野投手のピンチを、後藤投手は“神リリーフ”で何度も救います。1次リーグ第2戦・メキシコ戦、最終回の7回。先発の上野投手が同点に追い付かれ、ノーアウト一・二塁のピンチでマウンドに立った後藤投手は、2者連続三振でピンチを脱します。さらに延長タイブレークの8回は、2アウト満塁を三振で切り抜け、その裏のサヨナラ勝ちにつなげました。
 1次リーグ第4戦・カナダ戦は6回を終えて0対0。ここで先発・上野投手が降板。7回から2番手でマウンドに上がったのが、後藤投手でした。カナダ打線を3者連続三振に仕留め、さらに延長タイブレークの8回も再び3者連続三振。その裏、日本はサヨナラ勝ちし決勝進出を決めたのです。決勝のアメリカ戦。2対0と日本がリードした6回、上野投手が先頭バッターにヒットを許した場面でも、後藤投手がマウンドへ。味方のファインプレーも飛び出し無失点に抑えます。最終回は再びマウンドへ戻った上野投手が締めて日本が勝利。上野投手と後藤投手の黄金リレーで、日本は13年ぶりの金メダルを獲得しました。



来週のスポーツ伝説は……

9/13(月) プロ野球 柳裕也投手
9/14(火) プロ野球 奥川恭伸投手  
9/15(水) プロ野球 西純矢投手
9/16(木) プロ野球 佐々木千隼投手
9/17(金) プロ野球 大道温貴投手

お楽しみに!!
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