スポーツ伝説

5月24日~28日の放送内容

【競泳 池江璃花子選手】

 2019年2月の白血病発覚後、入院生活の影響で全盛期より体重が15㎏近く落ちた時期もあったという池江選手。そこから医師も驚く驚異的な回復ぶりを見せ、プール練習を再開してわずか1年、レース復帰からわずか7ヶ月で迎えた今年の日本選手権では、自由形とバタフライでの計4種目に出場を果たしました。大会前の目標は、あくまでも24年のパリ・オリンピック。東京大会には僅かな希望を胸に秘めていた程度でした。ところがいざレースが始まると、泳ぐたびに速く、強くなっていった池江選手。1種目目の女子100mバタフライでは、準決勝を全体3位で通過すると、決勝はメドレーリレーの派遣条件を上回るタイムで見事に優勝。レース後のインタビューでは「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた。つらくてしんどくても、努力は必ず報われるんだなと思った」と涙を流しました。
 池江選手の快進撃はさらに続きます。2種目目の女子100m自由形では、予選・準決勝とも54秒台前半の好タイムを叩き出し、全体1位で決勝に進みます。「絶対に53秒台を出す」と宣言して迎えた決勝、池江選手は横並びの前半50mを2位で折り返すと、残り25mでスパートをかけて一気に抜け出し、そのまま1位でフィニッシュ。有言実行となる53秒98、しかも400mリレーの派遣標準記録を上回るタイムで優勝を成し遂げました。その後も池江選手は、残りの2種目、50mバタフライと自由形でも優勝。エントリーした4種目すべてを制する4冠達成と、見事な復活劇を見せました。



【競泳 渡部香生子選手】

 渡部選手が世間から注目を浴びたのは、2012年の日本選手権です。15歳・高校生になったばかりの渡部選手が、女子200m平泳ぎ決勝で2位となり、ロンドン・オリンピックの切符を手にしたシンデレラガールとして話題を集めました。ロンドンの本番では14位と振るいませんでしたが、この経験を糧に、15年の世界選手権では200m平泳ぎで金メダルを獲得。翌年に迫ったリオ・オリンピックの金メダル候補として期待を集めました。ところが大きすぎる期待がプレッシャーとなったのか、リオ本番ではまさかの準決勝敗退。その後はケガもあって自分の泳ぎができず、17年の世界選手権は代表落ち。水泳を辞めようか悩んだ時期もあったといいます。そんな時支えてくれたのは、大学のチームメイトや家族・コーチなど周囲の人たちの存在でした。特に大学の同期・渡辺一平選手から厳しい言葉を突き付けられたことで、奮起できたという渡部選手。18年のジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得すると、少しずつ調子を上向かせていきました。
 アジア大会優勝後も、好不調の波が激しい時期を繰り返した渡部選手。それでも昨年12月には、新型コロナの影響で延期開催となった日本選手権の女子100m・200m平泳ぎで優勝し、5年ぶりに2冠を達成。自信を取り戻して臨んだ今年4月の日本選手権でも、100m平泳ぎはタッチの差0.05秒という大激戦を制して逆転優勝。得意の200mでは、2位に2秒の大差をつける圧巻の泳ぎで優勝。ともに派遣標準記録を上回るタイムで2冠に輝きました。


  
【競泳 武良竜也選手】

 今年4月の競泳日本選手権・男子200m平泳ぎは、元世界記録保持者の渡辺一平選手と、20歳の新星・佐藤翔馬選手の一騎打ちと見られていました。その一騎打ちに割って入ったのが、武良選手です。昨年の春にはオリンピックを狙うどころか、競技を続けられるかどうかの瀬戸際にあった武良選手。コロナ禍でスポンサー企業を失い、2ヵ月間も泳げない苦境に立たされたのです。一度は引退も考えましたが、アルバイト生活をしながら自ら所属先を探して売り込みを続け、地元・鳥取県の水泳連盟の支援で競技を続けられることに。この経験から、水泳との向き合い方に変化が生まれました。練習回数が減った分、より練習の質に磨きを掛けたのです。その成果が出たのは、昨年12月の日本選手権・200m平泳ぎでした。武良選手は自己記録を1秒半も更新する泳ぎで、渡辺選手・佐藤選手に次ぐ3位に入り、一躍代表争いのダークホースとして注目を集め始めました。
 そして迎えた今年4月の日本選手権、武良選手は予選トップで決勝レースに進みます。これで決勝は中央の4レーンで泳ぐことができることになった武良選手。これこそ、代表内定を掴むための作戦でした。レース後半に自信があった武良選手は、3レーンの佐藤選手、5レーンの渡辺選手の2強を視界に捉える4レーンで中盤まで粘りに粘り、ラスト50mから猛スパート。渡辺選手を抜き去り、日本新記録を叩き出した佐藤選手についで2位でゴールしたのです。この活躍を見て、いくつもの企業がスポンサー契約などのサポートに名乗りをあげ、再び競技に専念できる環境を手に入れた武良選手。1年前の苦境を自らの努力で覆す、人生の大逆転劇が見られた日本選手権でした。



【ゴルフ 小祝さくら選手】
 
 国内女子ゴルフ2021年の開幕戦、ダイキンオーキッドレディスを制した小祝選手。最終日、首位と2打差の3位タイで出た小祝選手は、風と雨の悪天候の中、出だしの1番でティショットを右の林へ打ち込みボギーで発進。その後イーブンに戻すも、前半は我慢のゴルフを強いられます。しかし雨が止みだした後半から調子を取り戻すと、11番・13番・14番で10mのバーディパットを沈め、首位に並びました。そして最終18番、1mのバーディパットを沈め、見事開幕戦を制したのです。
 小祝選手の強さの陰には、母・ひとみさんの存在がありました。深夜まで働きながら、小祝選手を女手一つで育て上げたひとみさん。ダイキンオーキッドレディスの最終18番には、優勝者に副賞として贈られるフィッシングボートが飾られていました。インタビューで、「親が欲しがっていたので、副賞のボートを獲りたいと思いました」と語った小祝選手。親孝行したい想いが原動力になっていたのです。そんな小祝選手の今年の目標は、賞金女王と複数回優勝。親孝行は、まだまだこれからが本番です。



【バドミントン 渡辺勇大選手】 

 昨年3月、110回の伝統を誇るバドミントンの全英オープンで、渡辺選手は11歳年上の遠藤大由選手とのペアで優勝。この種目での全英オープン制覇は、日本男子ダブルス史上初の快挙でした。同年代が組むことが多い男子ダブルスで、11歳差は異色のペアです。パートナーが引退して相手を探していた遠藤選手に「僕と組んでください」と持ちかけたのは渡辺選手でした。経験値の豊富な遠藤選手と組むことで自分がもっと成長できる、という思いがあったからです。連覇をかけて臨んだ今年3月の全英オープン。成長を遂げた今回も、渡辺選手は遠藤選手とのペアで決勝に進出します。相手は、園田啓悟選手・嘉村健士選手のペアで、日本人対決になりました。互いに守備が堅い同士、長いラリーの応酬が繰り返された中で、最終ゲーム中盤からの7連続ポイントで一気に流れを引き寄せた遠藤・渡辺ペアが勝利。大会2連覇を達成し、渡辺選手はまず1冠を手にしました。
 過密日程の中、渡辺選手は混合ダブルスにも出場します。パートナーの東野有紗選手は、福島県・富岡第一中学の1年先輩。2012年のジュニア国際大会で急遽ペアを組んだのをきっかけに、今年で結成10年目となりました。男子ダブルスに続き、この日2試合目の決勝では、同じ日本ユニシス所属の金子祐樹選手・松友美佐紀選手ペアに、セットカウント2対0のストレートで快勝。渡辺選手は、日本人選手では初となる全英オープン2冠を達成したのです。

  

来週のスポーツ伝説は……

5/31(月) プロ野球 池田隆英投手
6/1(火) プロ野球 愛斗選手
6/2(水) プロ野球 山口航輝選手
6/3(木) プロ野球 安田尚憲選手
6/4(金) プロ野球 呉念庭選手

お楽しみに!!
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