スポーツ伝説

8月10日~14日の放送内容

【女子サッカー 澤穂希選手】

 今年の女子ワールドカップ・カナダ大会で準優勝。澤選手は、男女を通じて世界最多のワールドカップ6大会出場を成し遂げました。決勝戦でのアメリカ戦は、5失点というワースト記録。悲願の世界一を目指してきたアメリカは、試合開始直後から猛攻を仕掛け、わずか16分間で4ゴールをあげたのです。しかし33分から澤選手が入ると、なでしこが本来の姿を取り戻します。自身、最後と決めた大会で完全燃焼。かつての盟友、2009年から2シーズンの間チームメイトだったワンバック選手への果敢なスライディングなど、闘志を見せました。
 93年、15歳で日本代表に選出されると、デビュー戦で4ゴール。今年が22年目というと鉄人のようなフィジカルを連想させますが、走力・持久力・ジャンプ力などのデータを計測すると、昔も今も、実は代表では平均以下。それなのに、試合になると縦横無尽にピッチを走り、相手のボールを奪い、多くの決定機を演出します。その秘密は、なんと「勘」。常に相手の1m先を見ながらプレーすることを心がけているそうです。「苦しい時は私の背中を見て」というのは澤選手の名言ですが、言葉で表すよりも、まず実践してみせる澤選手。カナダ大会では、誰よりもサポート役に徹しました。ある意味、決勝進出の立役者といえるかもしれません。
 


【プロ野球 黒田博樹投手】

 広島カープの黒田投手が、7月8日に右肩と右足首の炎症で出場選手登録を抹消されました。「先を考えると、無理をする時じゃない」と、この処置はあくまでも後半戦を考えればこそのものです。
 前半戦で強く印象に残った試合といえば、6月30日、東京ドームでの巨人戦。9回、完封目前でサヨナラ負けを喫しました。5月の防御率4.07に対して、6月は1.47。前半戦通算6勝4敗と勝ち星があまり伸びないのは、打線の援護がないこと。そして、後を託す信頼できる投手がいないことが原因です。「カープに戻ってきたことが正解かどうかは、正直なところ分からない。だからこそ、僕自身で正解にしなければいけない」と、黒田投手。日本だけでなく、全米も驚いた移籍騒動。それ以来、注目だけでなく、他球団からの徹底マークにもあいました。ヤクルトの高津投手コーチ曰く、「彼がすごいのは、ストライクゾーンへ投げ分ける技術。極端なことを言うと、その日の主審の癖を把握する、傾向と対策が的確だ」。バッテリ―ミーティングにはノートを持参し、しきりにメモを。見えない努力の積み重ねが、マウンドの安定感を支えています。
 

 
【プロ野球 中村剛也選手】

 パ・リーグの本塁打王と打点王のデッドヒートが続いています。日本ハムの中田翔選手の挑戦を受ける西武の中村選手は、自身6度目のホームラン王に向け、全打席1発を狙っています。中村選手の特徴は、故障や怪我が多いこと。その代り、過去に規定打席に達したすべてのシーズンで、本塁打王のタイトルを獲得しています。本塁打王5回という記録は、青田昇・中西太・落合博満の3氏と並んで歴代3位タイ記録。15回で1位の王貞治さん、9回で2位の野村克也さんに続いての単独3位となれば、歴史に名を残すスラッガーとなります。
 今シーズン、中村選手がのびのびとプレーしているのは、2軍時代からの育ての親・田辺監督が就任したから。ターゲットはシーズン50本。日本人選手の50本塁打は、2002年の巨人・松井秀喜選手以降出ていません。
 


【プロ野球 宅和本司投手】

 宅和選手は、高卒1年目から2年連続で最多勝。プロ通算8年間で通算56勝をあげました。1954年、南海に入団した際にはノーマーク。にもかかわらず、同期の野村克也選手・皆川睦男投手を差し置いて、真っ先に頭角を現しました。1年目から先発・中継ぎ・抑えのフル回転で60試合に登板し、26勝9敗。防御率1.58、275奪三振をマークします。当時、最多奪三振の連盟表彰はなかったものの、ルーキーの最多奪三振は、パ・リーグではその後、1980年の木田勇投手まで、26年間出ていません。この年、最多勝・最優秀防御率・新人王など、タイトルを独占した宅和投手は、プロ2年目の55年も、24勝で連続最多勝。しかし3年目に6勝で終わると、以来1軍で勝ち星をあげることはできませんでした。60年に近鉄に移籍して、翌年現役引退。最初の2年間で50勝。驚異の活躍は、プロ野球史に一瞬の閃光として刻まれています。



【女子柔道 松本薫選手】

 リオデジャネイロオリンピックまで、あと1年。今月24日から、カザフスタンのアスタナで開幕する柔道の世界選手権も注目です。中でも、ロンドン大会女子57㎏級の金メダリスト・松本選手にとっては、完全復活をアピールする大切な大会となります。来年のオリンピックを最後に現役引退を決意した松本選手。その理由は、「直感」。以前から、なぜ自分が柔道をしているのか、その答えを探していました。自問自答しながら戦い続けた結果、「答えはないというのが、答えだった」。しっかりと区切りをつけ、ラスト1年に全力投球します。
 2012年のロンドンオリンピックでは、柔道の日本代表は苦戦が続きました。そんな中、松本選手だけは初戦から快進撃を見せ、男女で唯一の金メダルを獲得。この優勝で、オリンピック・世界選手権・ワールドマスターズ・及びすべてのグランドスラム大会を制した最初の選手となりました。試合直前に見せる鋭い眼光から、“野獣”と呼ばれた松本選手。その呼び名にふさわしい闘争心が、再びよみがえってきました。



来週のスポーツ伝説は……

 8月17日(月) プロ野球 鬼頭数雄選手
 8月18日(火) プロ野球 坂崎一彦選手
 8月19日(水) プロ野球 岩本義行選手 
 8月20日(木) プロ野球 空谷泰選手
 8月21日(金) 野  球 嶋清一選手

                       以上の5選手をご紹介します。
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