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【井出有治・いで ゆうじ】レーシングドライバー (2010年3月8日〜12日オンエア)


毎週様々なアスリートをゲストにお迎えしてお送りしているスポーツリアルトーク。
この番組ホームページでは放送では触れることができなかった部分も含め、
インタビューの内容をお伝えしていきます。
先週のゲストはレーシングドライバーの井出有治選手です。
フォーミュラレースの最高峰・F1でドライバーを経験し、今なお現役で走り続ける井出選手にたっぷりお話を伺います。


【井出有治・いで ゆうじ】レーシングドライバー
埼玉県出身、1975年生まれ現在35歳
1990年 レーシングカートデビュー。
F3、フォーミュラーニッポンなどで着実に実績を重ね
2006年にSUPER AGURI Formula 1 TEAMから日本人8人目のF1ドライバーとしてデビューを飾る。
今年2010年シーズンはスーパーGTに鈴木亜久里監督率いるチームARTAで参戦。

http://www.yuji-ide.com/
井出有司選手オフィシャルサイト



【井出さんとレースとの出会いは?】
兄も父もレース好きで自然とF1などをテレビで見る事がよくあったんです。自分もそういったものを良く見ていてカッコいいので、小さい時は「レーサーなりたい」と夢のように思っていました。
それでたまたま近所にレーシングカートのチームがあるのを見つけて、すぐに始めました。それが15歳くらいの時ですね。
 〜憧れのレースの世界ですが、実際に入ってみて何が大変でしたか?
今は自動車メーカーが育成という形でレーシングカートをやっている子供たちを育てていくというのが出来上がっているのですが、僕がやっていたころはそういうのが全くなかったので、道筋が無いんです。
なので、大変というよりただがむしゃらに一生懸命やっていたという感じでしたね。
 〜初めてハンドルを握った時はどんな気持ちでしたか?
楽しかったというのはもちろんあるんですけど、初めて乗った時は後悔しましたね。
それまでエンジンがついたものはほとんど乗った事がありませんでしたし、ちょうどその頃F1ブームでアイルトン・セナのようなスターがいてカートコースに何百人という人が来てて凄い混雑していたんですよ。
その中で走ったらみんな勢いよく僕の事を抜いていって、スピンして止まっていたら後ろからもガンガン来るので「なんて怖い事を始めてしまったんだろう」と後悔した事を覚えています。
皆の走っている流れに乗れないんですよね、皆はビュンビュン行きますけど、ぼくは「ぽっぽっぽっぽっぽ」と。
なので怖いのと、あまりに皆が速いので悔しいのとがあり、人より速く走れるようになってレースに勝ちたいな、とも思いました。



【最大の挑戦は?】
レースをやっていてなかなか結果を出せなくて、レースを辞めて別の仕事をしなければいけないかな?と考えたこともあったんです。
その時ターニングポイントになったのはHONDAで育成プログラムのようなものがあったのですが、それに出ると決めたときですね。
 〜それまで参戦していたF3より下のカテゴリにあたるフォーミュラドリームでのチャレンジですね?
「プライドみたいなものを捨てれば一つ下のクラスに出て、そこでいいチャンスをもらってステップアップしていくきっかけがつかめる」と頭の半分では思えるのですが、もう半分では「恥ずかしい」というのもあるしF3にそのまま残って結果を残したいとも思い悩んでいたんですけど、その時も鈴木亜久里さんのアドバイスで「とにかくフォーミュラドリームに出て、ここで勝てなければF3でも勝てないから中途半端なところでやってないでこれに賭けて一年頑張れ」という風に言われて、そのレースに出るためにも結構お金がかかったんですけど、それも「この1年は面倒見てやるから、それで駄目だったらレースを辞めろ」とまで言っていただき「ここに賭けよう!」と決めましたね。
 〜おいくつぐらいの時だったのでしょうか?
その時23〜か4ぐらいだったと思います。
 〜そしてフォーミュラドリームでは鈴木亜久里さんの期待に応えて見事シリーズ優勝を果たされました
結果を残さないと認めてもらえないですからね、そういう事も改めて知ることができ本当に勉強にもなりましたね。
この一年が勝負の年でしたね。
 〜特にレーシングドライバーは自分の体を動かすだけではなくマシンがありそれにかかわるスタッフがいて、お金もかかりますし走ることは本当に大変なことですよね
そうですね、そういう予算の話を聞いていると「壊したらまずいな」と思いますよね。
みんなが一生懸命作った車に僕らが任されて乗るので「スピンして終わっちゃいました」では済まないじゃないですからね。
 〜それでもぶつかってしまう時があると思うのですが、その時はどう思いますか?
もうコースサイドのフェンスをよじ登ってそのまま家に帰りたいですよね(笑)
本当に逃げたいですよ、ピットに帰ってメカニックになんて言い訳しよう、と。
できれば時間を戻したいですよ、ホントにそういう時はみんな怖い顔してますから(笑)


【最大の壁・挫折は?】
一番最近で言ったらF1に乗れなくなったときですね。亜久里さんがその年からF1に挑戦すると言う事で「僕もドライバーとして一緒に行きたい」という事を話して、その中でチャンスをもらったんです。
しかし予算的に本当に厳しい中でやりくりしていたので、開幕戦を迎えるまでにテストというテストがなかったですからね。
 〜いきなりレースに臨まれたんですね!?
ぶっつけ本番でしたね。F1はものすごいエンジンパワーですし、ダウンフォースという空気の力で車を押さえつけてカーブを早く曲がるというのがあるのですが、そういった事を含め全てで自分が今まで経験してきた事に比べてはるかに高いレベルにあって、その車を使ってレースをするにあたりテストがあまりできない中でサーキットに行くというのは物凄く不安でしたね。
それでも開幕戦のスタートグリッドにとにかく車を並べないといけないですから、しかし開幕戦の予選の時はスペアパーツもなく「絶対に車を壊さないでくれ」と言われました。
自分も亜久里さんがチームを運営していく中で毎日大変な思いをしているのを目の前で見ていましたので、その中でチームが最善の動きができる中で合わせて行けないといけないなとは思いましたね。
でも、せっかく世界で一番上のレースF1に出れたけれどライセンスの問題で出られなくなった、というのは寂しかったというか「ここまでやってきたのにこれで終わりなのか」と悔しかったし、そうなった直後はあまりなにも考えられなかったですね。
それでもっと辛かったのは国内に戻ってきて国内のレースに出ても何やってもうまくいかないというか、人に迷惑ばっかかけるというか不思議な時期でしたね。
自分がステップアップして行ってF1に出て、周りから人がガーっとくるじゃないですか、その時にも「僕がうまくいかなくなったときにどうなるのかな?」と思っていたけれども、想像通りだったので余計にさびしかったです。
当時31歳で年齢的には決して若くはないですから、だけどやっぱり絶対這い上がって見返したいなという風に思いましたね。
 〜一番支えになったというか、心の中にあったものはなんでしたか?
「自分がなぜレースをやっているのかな?」と考えた時に「早い車に乗ってそれを操って人より早く走る」という気持ちで小さい頃に憧れて始めたので「だったらまだまだ精いっぱいそれに向かってやって、それでダメならやめてもいいな」という風に気持ちを切り替えたらうまくいくようになりましたね。
あとは亜久里さんをはじめ周りで助けてくれる人はいっぱいいたので、その方たちには本当に感謝しています。


【井出選手にとってのマイチャレンジソングは?】
やっぱり一番大変だった時期に聞いていたMr.Children星になれたらという曲ですね。
 〜この曲を聴いていたころはどんな状況だったんですか?
その頃は当然レースで生活できる状況ではなかったですし、アルバイトとかしていたころですね。
その頃に「レーシングドライバーになりたい」と思ってこの曲を聴いていましたね。
あと、フランスのF3に参戦した事もあったのですが。このときはチームにだれも日本人がいなくて全員フランス人という中でやっていて、寂しくなったり辛くなったりする時があったんですけど、そんな時にもよく聴いていましたね、いじけながら(笑)
 〜いじけてなんですね(笑)
それですっきりして次から頑張ろう!と、でも当時は本気で泣いていましたね。
 〜普段レースの前などはどのように集中されるんですか?
レース前は、早めに食事をして昼寝ですね。10分でも寝るとホントにすっきりとするし、レースの日の朝はフリー走行というのがあるんですがフリー走行を走るだけでも体は少し疲れるんです。
それで昼寝して睡眠をとって、スタート前に歯を磨くんです。
 〜歯を磨くんですね、これは井出さんならではのリラックス法でしょうか?
はい(笑)周りでしてる人を見たことないので、よく突っ込まれるんですけどね(笑)


【最後に今後の目標をお願いします】
まずは今シーズン、スーパーGTというカテゴリで亜久里さんのチームで走ることになったんですが、このカテゴリで亜久里さんのチームで走るのは初めてなんですよ。
今までもずーっとお世話になってきていますし、これからもお世話になっていきたいので、結果を残したいなと思っています。
 〜このスーパーGTというのは普通の車に近い車でレースをするんですよね?
そうです、F1のように1からレース用に作られたマシンではなく、普段町を走っている車をベースにそれをレース仕様にチューニングして行うレースなんです。
来週の日曜21日から開幕なので空回りして開幕からずっこけないように気をつけています、とにかく年間通してポイントをきちんと取ってシリーズチャンピオンをとりたいと思っているので逆に今は気持ちを抑えています。
 〜そして子供たちに教える無料カート体験教室も主催されているんですね?
きっかけはファンの方に「子供をカートに乗せたいんですがどうしたらいいんですか?」という事をよく聞かれるようになってきんです。
それで自分も小さい時ポケットバイクに乗りたい!と思った時期があったんです。でも親に「危ないからダメ」「お金がかかるからダメ」という風に言われて、それがずーっと心の中に残っていたんですよ。
それで同じような気持ちを持っている子供も絶対にいると思ったんで、お父さんお母さんの財布に負担をかけないように無料で、それで危なくない形で僕らがやっている感覚を子供たちに少しでも分かってもらえたらいいな、と思っていたらいろんな人が協力してくれて今も続けてやっているんです。
 〜なんという名前で活動されているんですか?
Yuji Ide GO! CARTという名前です。最初の頃はホントにレンタルで借りてきたボロボロのカートしか用意できなかったのですが、今はきれいでパワーも抑えられた危なくないカートを用意できるようになりました。
不定期で開催していますが、スーパーGTのレースの会場でもやっています。
子供たちも、レースの会場に来て僕らが走っているのを見たら興奮してくると思うんですよ、そしたらこのカートで走ってもらって少しでも興奮と楽しさをわかってもらえたらいいな、と思います。
そこからレーシングドライバーを目指してくれたら、それはそれですごく嬉しいですし、そうでなくてもレースは面白いという風に思ってくれてもいいですし、普段町を走っている車に興味を持ってくれてもいいですし、何かのきっかけになってくれたらいいなと思ってやっています。
本当に子供たちもその親もみんなが楽しんで帰ってくれているので、それがあるのでまだまだ続けようと頑張ってやっていますね。



インタビューを終えて
レーサーは『イケメン』が多いとの印象が(勝手ながら)ありますが、その中でもイケメンとの誉れ高い井出選手。噂にたがわぬカッコ良さでした。
他にレーサーは小柄…とのイメージもあったのですが、井出さんは大柄で「ドン」とした存在感。
レースの前は歯を磨いて、軽く寝る…というところには「繊細さ」と「太さ」を感じました。
高い技術とタフさが求められるレースを考えるとその二面性(もちろんいい意味で…)に納得。
鈴木亜久里さんに憧れ、また亜久里さんに導かれての選手人生。また今期、亜久里さんのチームで、気持ちも新たに挑戦されるのでしょうね!!『ファイト!』でがんばってください!
(政井マヤ)


政井マヤ
パーソナリティ:
政井マヤ
メキシコ生まれの元フジテレビアナウンサー。フジテレビ時代には、スーパーニュース、ワッツ!?ニッポンなど情報番組を主に担当。2007年3月に俳優の前川泰之さんと 結婚、女児を出産。2008年からスポーツリアルトークのパーソナリティを務めている。
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