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【植田辰哉・うえた たつや】バレーボール 2週目(2010年3月22日〜26日オンエア)


毎週様々なアスリートをゲストにお迎えしてお送りしているスポーツリアルトーク。
この番組ホームページでは放送では触れることができなかった部分も含め、
インタビューの内容をお伝えしていきます。
先週のゲストはバレーボール男子日本代表の植田辰哉監督でした。
日本代表男子を指揮して7年、男子バレーボール復興に力を注ぐ植田監督から、熱いお話をたくさんお伺いいたしました。




【植田監督のバレーボール人生で一番の出会いは?】
素晴らしい指導者の方々に出会ってきましたけれども、今日は上野尚志先生を挙げさせていただきたいと思います。
もう何人ものオリンピック選手を育てられた先生で、私も高校大学で7年間指導を受け私の基礎を作ってくださった先生で恩師に当たります。
 〜先生から教わったことで一番心に残っている事は?
「自分の意思を相手に対してちゃんと表示しなさい」という事です。
物事を起こす前にちゃんと相手に「私が取ります」「私がこうします」という事を伝えないと、物凄く厳しく指導されましたね。
他には高校時代は技術的な事も沢山教わりました、バレーボールに必要な基本的な事を「徹底的に何度も何度も反復練習しないと人間は身に付かないんだ」と
宮本武蔵が書いた五輪書と言うのがあって、その中で極限状態に追い込んで追い込んで練習する事が精神を磨くことになると言っているんですよ。
 〜選手側ですと『信じてついていく』と言う事でしょうが、指導者側になると自身が鬼になって極限の状況を作らないといけないのは、また違う苦労があるんでしょうね?
そうですね、ただ現代の選手たちは“理解”しなければ動いてくれない部分がありますよね。
「なぜこの練習をしているのか?」「なぜ今こういう事をしなければいけないのか?」そういうことをちゃんとオープンにして、苦しい事もやるようにしています。
でも、私たちのころは「今日どんな練習をするのか?」「明日どんな練習をするのか?」全くわかりませんでしたから、終わりの見えない強化ですからこれは辛いですよ。
 〜今はそのプランを見せて練習しているんですね
はい、一年間のマクロ的なプラン、そして数カ月のメゾサイクル、最後はミクロ的な数週間から数日の計画を見せて、そして「今日の練習内容はこういう内容で目的はこうだから全員が力を合わせないと達成できない」という事を約束して確認したうえでやるんですよ。
明確な目標を見せる事ですね、終わりがないところで集中力が切れる事もありますから。だから質を高めて量を少なくする時は、そういうことに神経を集中してプランを立てています。



【植田監督が今までのバレーボール人生でぶつかった壁・挫折は?】
選手時代は、ソウルオリンピックが開催された1988年、、、もうずいぶん昔になりましたね。
この時僕はオリンピック代表の15名の最終選考まで残っていたんです。
それで私は香川県の小さな町の出身なんですが、15人に選ばれた事で新聞には載るし、垂れ幕がかかったんですよ「オリンピック出場間近」と、それを見て町の人は「辰っちゃんオリンピック行くでー!」と盛り上がってるんですよ。
ところが最後の最後15名から3名が外され12名がメンバー登録されるのですが、僕はそこで外れてしまったんですよ。
一番脂の乗りかけた時期で結構自信があったんですけど、これは選ぶ側の思いですからしょうがないのですが、それが僕が一番傷ついて一か月ぐらいバレーボールやりたくなくなり、おじいちゃんもおばあちゃんも親父にもオフクロにも電話して「申し訳ない」と謝りましたね。
それが選手時代の挫折、一番大きな壁ですね。
 〜みんなの期待が大きい分その思いに応えられなかった事で余計にですね
そうですね、中学校卒業してからバレーボール留学をしてずーっと大阪で過ごしましたけど、小さいころから両親が働いていたので僕おじいちゃん子だったんです、おじいちゃんの自転車の前のかごに乗せてもらっていろんなところに行くような。
なのでそのおじいちゃんやおばあちゃんが最初はすごく喜んでいてくれたのですが、だからおじいちゃんおばあちゃんが「辰哉が落とされて」と寂しいそうな顔をしているだろうなと想像時に「本当に申し訳ないな」と言う気持ちがありましたね。
 〜地元香川で「トップアスリート発掘育成事業」を開催されていますが、家族のほかにも応援してくれた地元の方への恩返しの意味もあるのでしょうか?
そうですね、選手としても監督としても一回づつオリンピックに出させていただきましたが、後援会があったからできた事だと思います。その地元の方たちのために何かと思い今年第一回目を始めたんです。


【先日は選手としての壁・挫折を伺いましたが、監督としての壁・挫折は?】
やはり北京オリンピックに16年ぶりに出場する事が出来たのですが、そこから準備がうまくいかなかった、それによって勝つ事が出来なかった。成功の後には挫折ありというか、この事が自分の中では非常に大きな反省材料で挫折となっています。
全敗と言うのは非常に苦しい結果です、16年間のブランクが「オリンピックってそんなものじゃないんだ」という事を我々にわからせてくれたと言う事では大きなプラスになったかもしれませんが、やはり国民の期待にこたえられなかったという点では挫折としてすごく大きな刺激になりました。
 〜収穫として得たものはなんでしょうか?
今も、清水・福澤と言った若い選手たちがたまに言っているのですが、オリンピックに出たからわかった事がたくさんあります。
1971年にミュンヘンオリンピックに出る前監督の松平さんが言っていたのですが「オリンピックに出たことないものがメダルを取るなんて言ってはダメ」なんですよ
参加するのに意義があるではないですけど、選手たちがオリンピックに出場し経験した事、これか必ずロンドンオリンピックにつながると思います。
ただロンドンに行くためには予選を勝たなければいけません、予選のためにまた努力しないといけません。
今年の世界選手権は大事ですし、来年のワールドカップも大事です、ですのでこれからの一年一年が非常に重要な年になっていくと思います。


【植田監督にとって思い出の一曲はなんでしょうか?】
ゆず栄光の架け橋です。アテネオリンピックの体操競技の時にアナウンサーの方が実況のフレーズに使った事でも話題になった曲です。
このアテネの時はバレーボールの全日本男子は出場できなかったのですが私は現地に勉強しに行き、さびしく全日本が出ていないバレーを見ていました。
自分がもし将来この場で戦うとしたらどうなるのだろう、という意味で現実的に目に焼き付けて置きたかったといのが一番の理由なんですが、それでも羨ましかったですね、オリンピックのマークの入ったジャージを着た選手たちが目の前を通ると「なんで俺たちはここにいないんだろう?」と言う思いになりましたね。
なのでそれ以降この曲がイメージソングになって、自分たちが苦しい事を乗り越えていって最後に目標を達成した時にみんなで歌いたいね、とスタッフと酒を飲みながらカラオケで歌ったりしました。
 〜植田監督もカラオケを歌われるんですが?
めったに歌わないんですが、たまにですよ(笑)酒を飲みすぎた時に歌う曲ですね。
ただオリンピック予選を突破した時はよく歌いましたけど、オリンピックで惨敗して帰ってきてからはしばらく歌いませんでした。歌える心境ではなかったですね。
 〜北京のショックですね、そのショックはもう?
昨年いろんな大会に出て選手たちが頑張って結果を出してくれたので、そういう意味では少しだけは。でもオリンピックの借りはオリンピックでしか返せませんから、北京の挫折はロンドンオリンピックにつなげなくてはいけないと思っています。


【植田監督の今後の大きな目標は?】
ロンドンオリンピックに出場し、そこで5位以内の入賞を目指しています。
8位以内が入賞なんですが、今はまだメダルなど言えないので5位以内をキープしていきたいという考えがあります。
そのためにも1年1年を大事にしていきたいですね。
 〜今年2010年のチーム作りのテーマは?
9月でイタリアで行われる世界選手権が行われます、前回は24年ぶりにベスト8に入りましたのでそれをイタリアと言うアウェーの地で上回りたいなと思っています。
1万1千人入る体育館で行われるのですが、開幕でイタリアと当たるんですよ。イタリアにはオリンピック予選でも24−17からポイントを取られ負けた事がありますし、オリンピックでも開幕で当たり負けていますし、3度目の正直という事で何とか勝ちたいと思っています。
 〜現在の仕上がりはいかがでしょうか?
結果としては昨年いい結果を残せましたので選手たちは自信を持ってくれていると思います。
ただし、メンバーもさらに若手も入れながら必要な時はベテランも呼び、さらに少数精鋭のチームを作っていかないといけないと思っています。
ですから去年は多くのメンバーを集めましたけど、今年は合宿も少なく絞り込んで行きたいと思っています。
切磋琢磨という言葉がありますけれど、現在我々は「琢」ぐらいかな、と荒削りなものから角が取れてきて、最後に仕上げる前、良いチームができる前の段階だと思っています。そういう事が選手たちにもだんだん見えてきているとは思います。
 〜監督のメンタルも非常に重要だと思いますけど、どのようにコントロールされるんですか?
やはり家庭ですね、めったに家に帰る事が出来ないんですが家庭に戻って妻とか子供に会うと自分をリセットする事が出来ますよね、そこで1日か2日充電して、でも3日超えると妻に「そろそろ出てって」と言われますけどね(笑)僕の足の前でそー時期がブーブー言っていますけどね。
だけどそこで気持ちの切り替え、リフレッシュするという方法は非常に重要ですよね、家庭は大切にしましょう(笑)

今週も先週に引き続き植田監督にお話をうかがっていきます。


インタビューを終えて
怒る時はもちろん、誉める時も『個人』を主語にしない。

あるプレーや、態度など具体的なことを誉める…など『ほーーーーーぉ』と唸らされるリーダーとしての格言がインタビューの中にたくさん飛び出してきました。

男子バレーボール界を再生させた監督には、やはり「植田流の極意」があったのですね。


丹念に練られたロンドンオリンピックへにむけた行程表の中で着実に結果を出し、バレーボール男子を復活させている監督。2012年まで目が離せませんね!
(政井マヤ)

政井マヤ
パーソナリティ:
政井マヤ
メキシコ生まれの元フジテレビアナウンサー。フジテレビ時代には、スーパーニュース、ワッツ!?ニッポンなど情報番組を主に担当。2007年3月に俳優の前川泰之さんと 結婚、女児を出産。2008年からスポーツリアルトークのパーソナリティを務めている。
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