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【西村雄一・にしむらゆういち】サッカー国際審判員(2010年8月9日〜8月13日オンエア)

夢に向かってチャレンジするアスリートをクローズアップ!
先週のゲストはサッカー国際審判員の西村雄一審判でした。
アスリート並の努力と自己管理が必要なサッカー審判員の西村さんに、たっぷりお話を伺いました。


【西村雄一・にしむらゆういち】
東京都出身、1972年生まれで現在38歳
社会人として仕事を続けながら1999年一級審判員の資格を取得すると
2004年にはプロ審判に当たるJリーグのスペシャルレフェリーに、
先日開催されたFIFAワールドカップ2010南アフリカでは計4試合で主審として笛を吹き世界中から高い評価を得ました。



【ワールドカップお疲れさまでした、大会の疲れは取れましたか】
そうですね、大会の疲れは取れてきて体は日本の暑さにも慣れてきました。ですけれども日本の皆さんが色々な形で盛り上がっていただけたのが改めてわかり、まだ自分の中で余韻が残っています。
 〜今回西村さんの活躍もかなり報道されました、帰国後は取材ラッシュといった状況にびっくりされましたか?
本当に皆さまには沢山の応援をいただき感謝しています。
今までの審判の注目のされ方とは帰国してからは変わりましたのでそれに関しては本当に驚いています。
 〜今回のワールドカップで一番印象的だったシーンは何でしょうか?
やはり私が担当していた試合の中でオランダ対ブラジル戦があったのですけども、その戦いの中で1つ非常に難しい判定でレッドカードにしなければならない、そういった厳しい状況になった事が今でもすぐに思い出されますね。
 〜事実上の決勝戦と言われた試合でブラジルの選手がオランダ選手を踏みつけたシーンですね。このシーンが目に入った時にイエローカードなのか退場のレッドカードなのかという判断は瞬時にされたんですか?
あの時はブラジルのチームが逆転されてしまいましてかなりイライラしているなと言う事をピッチ上で感じましたし「逆にそれをオランダが上手く利用してプレーするのではないか?」と言う気持ちを持って見ていましたので、あの時そのファウルがあった時に「もしかしたらオランダの選手が何かやり返すのではないかな?」と思って良く見ていたらファウルした選手がもう一度相手を踏みつけに行ったので「あれ?今、踏んだ!?これは赤だな」と言う事を1〜2秒足らずの所で判断しレッドカードを提示しました。
 〜審判にとってもレッドカードを出す時は凄く覚悟がいるものなのでしょうか?
そうですね、イエロー・レッドどちらのカードもそうなんですけれども気持ち良くカードを出すレフェリーはいないんですよね、やはり「選手にフェアプレーでプレーしてもらいたい」と言う心が一番ありますから、カードを出す時には「残念だけれども」と言う思いを持ちながら提示しています。
 〜そういったカードや注意で試合の流れがグッと変わってきますよね?
正しい判定の元に、それぞれ正しい対応をしていく事でゲームがスムーズに流れていくと思います。
 〜でも海外の選手達の試合を見ていると凄く上手ですよね、上手く引っかけられたように転んだり(笑)
そうですね(笑)でも、やられた選手にフォーカスすると「大げさに倒れた」とか「上手くファウルもらいに行った」と言う風に見えるのですけれども、実際我々レフェリーは逆の方の選手を見ているんですね、ぶつかりに行った選手がどんな意図でぶつかっているのか、倒そうとしているのか?それとも偶然当たってしまったのか?そういう事をしっかり見ていないと正しい判定には繋がったりはしませんので。
 〜まさにゲームの引き締め役ですね
そうですね、今大会は特に詳しく見ていただいていると思うのですけれども、レフェリーのゲームコントロールの為の色々な手法に注目していただけたのは大変ありがたいですね。
 〜大会を終わってみていかがでしたか?
結果的に言うと開幕の日から、最後の閉幕の日まで全ての期間において携われました。
実際は開幕のセレモニーは見れなかったですし、閉幕のセレモニーも見れなかったので「いつ始まっていつ終わったのかな?」というあっという間に過ぎてしまった大会です。


【西村雄一さんが審判を目指されたきっかけはなんでしょうか?】
私は審判になる前、17〜8才の頃ですが出身のクラブチームで後輩の面倒を見ると言う形で少年サッカーの指導者をしていて、その時に試合である誤審に巡り合ったんです。
そして選手たち子供たちの夢を奪うような判定に出会った時に子供たちの残念な表情を見て「自分が審判を目指して選手たちの夢を壊す事のないようにしていきたい」と思った事が一番最初のきっかけです。
 〜その後は社会人になられました、サラリーマンとの二束のわらじも可能だったのでしょうか?
企業の非常に暖かい協力が無ければ審判を続けていく事は凄く難しかったですね。
私の今の職業で言うと“プロフェッショナルレフェリー”なのですが、実際は日本の多くの審判員は二束のわらじで日本のサッカーを支えているので審判員という存在は決して楽ではないと言う事をわかっていただけたらありがたいですね。
 〜皆さんがプロと言う訳ではないのですね?
プロフェッショナルの審判と言うのは日本に12人しかいませんので、それ以外の何万という審判員の方々は仕事をして大好きなサッカーを審判という立場から携わっていると言う形です。
 〜審判の方は試合を見ていると一番走っているのではないか?と言うぐらい良く動いていますよね?
やはり正しい判定と言うのが一番大切なので、その正しい判定を下すためにも一番良い場所から判断をしたいと言う事で良く走りまわっていますね。
大体一試合で12キロぐらい走るのですけれども、それでもまだミスがあったりしますので中々フィジカル的にはハードですね。
 〜審判をされていて「難しいな」と思われる局面はどんなところでしょうか??
何かが自分の目の前にあって判定が出来ない時、要するに見えなかった時はどうしようもないんですね、例えば「多分こうだろう」と思ってギャンブルで判断するわけにはいかないですし、見えるか見えないかと言うところは非常に重要な所ですね。
なので得点のシーンでそういった見えないと言う事が起きないように、そこは最低限なんとか自分で判断できるようにしています、そこは自分では譲れない所ですね。
 〜審判が冷静でないと試合も破綻してしまいますよね?
我々の冷静さが選手たちにも伝わりますし、逆に冷静に落ち着いて判断していれば選手たちも「ちょっと納得できないけど受け入れるか」という気持ちになってくれたりもしますので、我々のアプローチは大切だと思っています。


【西村雄一さんにとって最大の努力は?】
今でもこれからも努力は続いて行くのですが、やはり今までで一番の努力はこの南アフリカワールドカップに向けた選考の3年間ということですね。
日本を代表しての選考に残りましたのでこの3年間の努力は本当に大きかったですね。
 〜選手も4年に1度の出場を目指していますが、審判もそれほど長いスパンで選考されているのですね?
3年間FIFAが主催する国際試合を用いて審判の技能を実際に見られます。
そして後は3年間の期間中フィジカルトレーニングをやっているかどうかをデータを提出すると言う形でずーっと毎日追いかけられましたし、それから審判専用のインターネットサイトがありビデオクリップが見られるようになっているのですがそれに対しての自分の考えを述べなさいとか、もちろんルールも大切ですのでルールのテストを毎週提出したりとか、そんな形で3年間をやってきているんです。
 〜それでは最初からどんどん人数が絞られて行く形なんでしょうか?
最初は我々はアジアの連盟ですので、アジアから8人の選考がありましてその8人から5人、最終的には4名の主審が大会の方に派遣されたという形になります。
 〜想像以上に厳しいんですね?
やはり、毎日ワールドカップの為の何かの努力をしていた、と言う事を今でも思います。
何が正解か、どうすれば残れるか、と言う事は我々には全くわからないので日々努力を重ねていく事、後は選ぶ側の考えもあります、大陸関係であったり出場国であったり出場国でなかったり、いろいろな条件の中から最後選考の中から残ると言う形になりますので本当に自分の名前があった時には「良く残ったなぁ」と言うのが実感ですね。
 〜それでは決勝戦まで立ちあえられると言う事は?
ファイナルなんて言う事は最初は全く考えていませんでしたね(笑)
 〜その3年間で一番辛かった事は?
ワールドカップの選考の最後のフィジカルテストと言うのがありまして、ワールドカップに参加するために課せられるテストがあるんです。
ただその一週間前に割当たった試合でちょっとアクシデントでケガをしまして、そのテストで走れるかどうかギリギリの状態になったんです。
その時には色んな人の思いが感じる事もありましたし、まず治すことに専念して後は根性で走りきるしかないという状態で、それは本当に厳しかったですね。
 〜本当に走ってタイムを計るテストなんですね、どういった基準があるのでしょうか?
ショートスプリント40メートルを6秒を切るとか、それから150メートルを30秒で走って50メートルを35秒で歩いてと言うのを繰り返しトラックを12周以上するのですけど、そういったところでただ走る能力だけではなくプラスして心拍データを見られるとか、平均値を出されるとか。
本当に総合的に判断されるようなテストなので良いコンディションが備わってないとなかなか難しいですし、そういったところはナーバスになる所ではありましたね。


【西村雄一さんに審判の生活について教えていただきたいのですが】
例えばゲームが土曜日にありますと、その3日前にハードなトレーニングを行います、翌日には少し負荷を落とし体を動かします。
そして前日には本当に軽く体を動かし明日の試合でピークに持っていくといったフィジカルトレーニングをして各試合会場へ移動します。
ゲーム日にベストの状態で臨みまして試合の翌日は体を動かすことによって回復を促し、その次の日に完全に体を休め休養するという形で一週間のスケジュールを組んでおります。
 〜週末の試合がある時だけ頑張れば良いという訳では無いのですね?
それでは全然ゲームになりません、我々としてはコンディションを整えるには3日前、そしてプラスして2日、これは非常に大切です。
我々の判断一つで選手の運命が変わってしまうのでそこに絶対迷惑をかけないようなフィジカルのコンディションをいつも整えておく、それが私達がやらなければならない事だと思っています。
 〜週単位で伺いましたが年単位では?例えばご自宅にはどのくらいいらっしゃるのでしょうか?
私は国際審判員でありますので、実際には海外に出ているのが100日ちょっと、日本国内でも自分の住んでいる地域以外に行くのが100日ちょっと、ですので家にいるのは年間で100日ちょっとくらいです。
海外へは、アジアの国際審判としてアジアのチャンピオンズリーグと言う試合があるのですけどニュートラルな立場で行く事になりますから主に中東方面、サウジアラビアですとかUAEなどに赴いて、ニュートラルな対戦の審判をする事が多いです。
ですので日本代表や日本のチームが海外の大会で試合をする場合は僕らは審判する事が出来ません、その時はどこか違う国で行われている試合の審判をしている事が多いので日本のチームの試合を見れていない事が多いんです。
 〜中立性を守るために選手との接触もなるべく控えていらっしゃるのでしょうか?
普通に会話をする事は出来るのですけど、やはりいろんな目がありますのでそういった面で疑いをかけられてしまうような事にならないようしています、それは我々のマナーとして必要な事だと思っています。
しかしピッチの外では距離を置いていますが公の場ではちゃんと話を出来ます、やはり我々も選手たち同様にサッカーが大好き存在なので選手たちと話をしてみたいなとは思っているんです。
 〜審判としてのやりがいはどんな所に感じていますか?
審判は毎試合毎試合新しい出会いになるんです、同じ試合は一試合もありません。
ですので常に新しい者に向けて挑戦して日々の努力をしていく、これが審判員をやっていく上での醍醐味になっています。
審判員は本当に沢山に良いプレーを見たいと思っている人たちの集まりだと思っています、審判員としてまた次のゲームに当たると言う事はワクワクしますし前向きにもなれますので、そういった面で「サッカーに携われているな」と実感する事ですね。


【西村雄一さんの今後の大きな目標は?】
大きな目標という言い方に合うかどうか分かりませんが、私がいつも目指している事は次に当たった試合に全力で臨むこと、そして誠心誠意選手に尽くす事を目標にしています。この1つ1つの積み重ねが、また次の何かに繋がっていると思って頑張っています。
審判と言うのはその試合をしっかりコントロールできればまた次の試合を頂く事が出来ると思っていますので、一番大切なのは次の試合です。
 〜ワールドカップから帰られたばかりですが、4年後というのは思い描いていますか?
そうですね、Jリーグの試合を1つ1つコントロールしていく事で4年後そこに繋がっていたらまた素敵な事だと思います。
 〜体力的には大変な審判ですが年齢制限などはあるのでしょうか?
国際審判員の定年は45才です、現在私は38才ですのでそれまでの間は高いフィジカルコンディションをキープしていき高い志をキープしていくことが大事だたと思っています。
 〜経験や年齢によって大きなものを得られるのでしょうか?
やはり沢山の修羅場をくぐり抜けることになりますので、年齢が増えるにつれて経験や度胸や自身が大きくなっていきます、それらの事はゲームをコントロールする上でとても大切な事ですね。
 〜やはり45歳まではやりきりたいと思いますか?
大好きな事なので選手に迷惑がかからないようにそれを継続していきたいと思います。
 〜審判の立場から日本のサッカーへはどのような思いがありますか?
やはり強い国のレフェリーと言うのはステータスがあると言う感じがあるとおもいます「イングランドのレフェリーはしっかりしている」「スペインのレフェリー上手いよね」と言った形で、なので日本が強いと「日本のレフェリーっていいよね」と言われるはずなんです。
ですから代表チームが強いと言う事は我々にとって非常に誇らしい事だと思います。
 〜今大会の試合も応援されていましたか?
今回ワールドカップ滞在期間中には日本代表の活躍を心から願っていました、代表チームが勝ち進めばその国の審判は帰らなくてはなりませんがそれは凄く正しい事だと思います。
今回は日本代表のチームの活躍があって私も最後まで残るそういったところで凄く相乗効果もありましたが、決勝に残ったスペインとオランダこの2カ国の審判は決勝戦を担当できませんので、決勝戦をやったレフェリーがナンバーワンとか一番上手いと言う事ではないと言う事が言えます。
 〜最後に西村さんの思う良い審判と言うのはどんな審判でしょうか?
試合終了後に皆さんの記憶に残らないような、具体的に言うと「あの判定が」とか「今日はレフェリーのおかげで」とそういった風に記憶に残らないような事が一番大事だと思います。
ゲームが終わった後に選手やサポーターが素直に判定を受け入れられる、そういったゲームを作る事が出来るのが良い審判だと思います。やはり選手が主役であくまでも我々は選手のサポート役ですから。

政井マヤ
パーソナリティ:
政井マヤ
メキシコ生まれの元フジテレビアナウンサー。フジテレビ時代には、スーパーニュース、ワッツ!?ニッポンなど情報番組を主に担当。2007年3月に俳優の前川泰之さんと 結婚、女児を出産。2008年からスポーツリアルトークのパーソナリティを務めている。
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