自見:日本医師会会長で、去年の10月、第68代世界医師会会長に
就任された横倉義武さんです。
私は参加できなかったんですけど、シカゴで行われた就任式で
横倉会長がスピーチされた原稿を頂きました。
まだ横倉会長が小さい頃、「国民皆保険」と言う制度が
日本に導入される前のご両親の姿が書かれていました。
「福岡県みやま」というところで、お父様が病院を開業された時に
地元の住人の方がお薬代を払えなかった。
その時にお母様が、ご自分の着物を売って薬代に充てていたと
いうエピソードから始まり、今日に至るまでの医療の発展に
言及されている一節があるんです。たいへん心を打たれました。
自見:このラジオをお聴きの方の中には「世界医師会」と聞いても
どのような組織なのかな?とご存知ない方も
いらっしゃるかもしれません。
淵澤:恥ずかしながら、よくわかりません。
横倉:世界医師会は第二次世界大戦の後、
1947年に組織されました。
戦時中に色々な犯罪的な医療行為というのがありまして、
その反省から、生命の倫理を尊重しないといけないという
ことから、スタートいたしました。
淵澤:役割は?
横倉:ひとつには命の倫理や医の倫理ということの
世界標準を作っていくこと。
そして、もうひとつは世界中の国々に必要な医療を
ちゃんと届けること。
現在114ヵ国の医師会が参加しています。
自見:世界医師会に立候補された想い、お聞かせください。
横倉:先ほど、自見さんが私の就任演説を紹介してくれましたが、
日本は国民皆保険の体制があるので、自分に負担できる範囲で、
世界でも最高に近い医療を受けられる体制が出来ています。
淵澤:助かっています。
横倉:そんな日本の優れた医療体制を世界中の人々が共有できるように
していこうといのうが、立候補を決意した一番の理由です。
自見:日本では当たり前のようなことが、
世界では当たり前ではないということですね。
横倉:実は日本で国民皆保険が出来たのは、1961年。
それまでは医療を受けようと思っても、
お金がないと受けられない。
医療を提供する私共にいたしましても
「この方は、この薬を使えば助かるのに。
高いお薬だから使えない」そのようなジレンマもありました。
国民皆保険体制になって、必要な医療を必要な方に
提供できるようになったということが非常に大きなことですね。
淵澤:その国民皆保険の体制を、世界に広げていくということですね。
自見:日本の使命ですね。