視覚障害者にとっての震災【報道部・後藤記者レポート】

「第41回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」(12月25日(日)午前8時台)に、ニッポン放送報道部後藤記者によるレポート「視覚障害者にとっての震災」を放送いたしました。その内容を再録します。


ことし3月で東日本大震災から5年が経ちました。
改めて、震災の恐怖というものを考えてから、間もない4月、また大きな地震が九州、熊本を襲いました。
4月16日午前1時25分に発生した熊本地震の本震では、多くの被害が出ました。
(人的被害は12月14日現在、関連死を含めて161人が死亡、住宅被害は全壊が8,369棟、熊本城などでも大きな被害)
4月14日に起きた前震の取材で、既に熊本入りしていた私も、この本震を熊本市内のホテルで体験しました。このときの震度は6強。
特に被害の大きかった熊本県益城町周辺は大きく道に亀裂が入ったり建物が道路にまで崩れたりしていまして、小さな余震でも恐怖を感じました。

そして今年は震度6クラスの地震が10月にも発生しました。
鳥取県中部地方、倉吉市周辺を中心とするマグニチュード6.6の鳥取県中部地震が発生。
倉吉市などで震度6弱を観測しました。
この地震では大きな人的被害は出ませんでしたが、多くの家の瓦屋根が落ちて、まだ多くの家が屋根にブルーシートをかけたまま年越しを迎えようとしています。
屋根の修理が終わるのは来年の5月頃になるのでは?という話もあり、雪の本格的なシーズンを前に不安が残ったままとなっています。

今回はこれまでの地震そのものに関する取材に加えてラジオチャリティミュージックソンということで「目の不自由な方にとっての『震災』」ってどんなものなのか、取材しました。

わたしは12月12日に、改めて鳥取県倉吉市におよそ2ヶ月ぶりに入りました。
まだブルーシートが街中に目立ちます。

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崩れかけたビルなどはテナントが退去しています。

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また応急危険度判定で「危険」と判断され、赤い張り紙をしてあるビルもありました。

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取材の中で、震源に近い三朝町(みささちょう)に住む門木光明(もんぎみつあき)さんにお話をうかがうことができました。
門木さんは目が不自由で、全く見えないそうです。
三朝町は三朝温泉という20軒ほどの旅館をもつ温泉街がありまして、ここで門木さんはマッサージの仕事をしていらっしゃいます。
当日、事務所で電話番をしていたという門木さん。
まず地震発生の瞬間について聞きました。

・かつてない揺れを体験した。
・この世の終わりかと思った
・揺れが収まるまで、とどまるのがいいと思った。

門木さんのご自宅にヒビが入った写真です。

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地震は、かなり視覚から得る情報が多いというのはご理解いただけると思います。
建物は倒れかけていないか?道は段差になってないか?など、仮に普段生活している範囲であったとしても、状況が変わっていることがあるし、旅先などであったらなおさらで、困る事がとても多いはずです。
門木さんは災害情報をメールの読み上げ機能がある携帯で得たとおっしゃっていました。
門木さんに災害時にはどんな事に苦労するのか、そして私達健常者が、どんなお手伝いが出来るのか、伺いました。

・避難所のトイレの場所など普段行かない場所ではどこにあるかわからず苦労する
・方向感覚がずれて道が分からなくなる
・特に風や雪によって音が遮られると方向感覚は普段から分からなくなってしまうことがある

雪などでは側溝などが分かりにくい為、足を踏み外さないようにあえて車道を歩くような事もあるようです。

門木さんにいろいろお話を伺っていますと、障害者の方のために鳥取県ではある運動が広がっているのだと分かってきました。
鳥取県では障害のある方にも暮らしやすい社会を実現する為に、障害を正しく理解して、障害のある方へ、ちょっとした配慮や手助けの出来る「あいサポーター」を増やす制度が平成21年11月から始まっています。
これを「あいサポート運動」といいます。発足からおよそ7年。この制度は中国地方5県や長野県、奈良県、和歌山県と北海道の登別市、そして埼玉県の一部市町村に広がっています。鳥取県の福祉保健部によりますとあいサポーターは12月現在全国でおよそ347,000人に増えています。

もっと全国にも広がらないものかと思いますが、一方で、東京都などでは支援を受ける側がPRする制度があります。
助け合いのしるし「ヘルプマーク」というものです。赤地に白い十字と白いハートマークを上下に配したこのマーク。
既に13万個以上配布されているという事ですが、これは障害をもつ方や難病を持つ方、また、妊娠初期の方など援助や配慮を必要とする方に配っているそうです。
ぜひ、この「ヘルプマーク」を見かけた場合には公共交通機関で席を譲ったり困っている場合には声を掛けるなど、私達にもできることがあると思いました。

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