先端技術でメロンを育て、街の活性化に貢献したエンジニア。 【10時のグッとストーリー】

番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】

きょうは、先端技術を使ったまったく新しい栽培方式でメロンを育てることに成功し、街の活性化に貢献している、あるエンジニアのグッとストーリーです。

メロンと箱(w680)

今、「甘くておいしい」と話題を呼んでいる東京産の新しいフルーツがあります。
その名も「まちだシルクメロン」。

2009年東京・町田市の商工会議所が中心になって、土を使わない水耕栽培による地元産メロン栽培のプロジェクトがスタートし、試行錯誤の末、ついに開発に成功し、去年の9月から出荷が始まりました。
甘みを示す糖度は、高級メロンに匹敵する14度以上で、中には16度以上のものも。
濃厚な味ととろけるようななめらかさがまるで絹のようだ、ということで「まちだシルクメロン」と名付けられました。

林社長 (w680)

その開発の中心になったのが、町田市で「大浩研熱」(だいこうけんねつ)という会社を経営する林大輔さん・62歳。
精密機器を作る際に欠かせないエアーノズルを製造する会社ですが、林さんは本業と並行して、新たに立ち上げた「まちだシルク農園」の代表も兼任しています。
それまで農業の経験はゼロ。
それがなぜ、未経験のメロン作りに取り組むことになったのでしょうか。林さんはこう言います。

「私は、人がやっていないことを実現させるのが好きなんです」

この「シルクメロン」プロジェクトは、リーマンショックなどで景気が低迷していた2009年、町田市周辺の企業が持つ高い技術を応用して、新しい農作物を作り、街を活性化させようという趣旨で始まりました。
当時、町田市商工会議所の工業部会長だった林さん。
専門は「流体力学」で水の流れを制御する技術です。
その技術を応用し、水だけで育てる水耕栽培で、何か作れないかと考えた林さん。
まずは何を作るか?地元の農作物と競合しないもので、話題性のあるもの…検討の末、浮上したのが「メロン」でした。
メロンは普通に土で栽培した場合、1株から2〜3個までしか実がなりませんが、水耕栽培で育てると、理論上は、通常より実が大きいものを作ったり、1株から何十個もの実を収穫することが可能になります。
ところが実際の栽培は難しく、トマトでは成功例がありましたが、「メロンでは不可能」だと言われていました。その困難さが林さんのチャレンジ精神に火をつけます。 

「できないと言われると、技術者としては燃えるんです。『ようし、やってやる!』と」

発足当時集合写真(w680)

さっそく、地元の中小企業が参加して、プロジェクトチームによるメロンの水耕栽培がスタート。
土を使わないので、肥料は水の中に「液肥(えきひ)」として混ぜて与えますが、水の流れが悪かったのか、液肥が均等に行き渡らず、根腐れを起こしてしまいました。
条件を変えて何度も試行錯誤を重ねましたが、何とか実はなっても、甘みが足りなかったり、商品として販売できるものはできませんでした。資金の問題もあり、結局、プロジェクトは一旦解散することに…。

しかし、林さんの胸には、モヤモヤとしたものが残っていました。

「自分の中では『あと一歩』だったんです。うちの会社の技術を使って、こういうシステムを作れば、液肥が全体にまんべんなく流れるのに・・・という設計図が頭の中に出来上がってきたので、これで終わるのは納得がいかないなと。」

③ヒモがけ(w680)

林さんは、自腹を切って栽培実験を続けようと決意。肥料の入った水をバランスよく全体に行き渡らせるには、流体力学でいう「ゆらぎ」の状態を作ってあげればいいのでは…。
いろいろ困難はありましたが、林さんの予測は正しく、1年かけて根腐れの問題は解決。
収穫量も増えて、1個4キロの巨大なメロンも誕生しました。さらに、液肥にあえてブレーキをかけることで、より甘みを増すことにも成功。
商品化にメドがついたところで、地元企業も参加して再びプロジェクトが組まれ、去年の夏に「まちだシルクメロン」の初めての収穫が行われました。
その数、1,000個以上。
小さな農園でもこれだけたくさんのメロンを作ることができたのは、水耕栽培だからこそです。

D棟北側(w680)1収穫メロン(w680)

今年の収穫量はおよそ6,000個近くになる見込み。まだ店舗での販売は行われていませんが、すでに町田市内の飲食店と提携して、まちだシルクメロンを使ったメニューやスイーツが開発されていて、おいしいと好評です。林さんは言います。

「メロンの栽培は、実はそんなに儲からないんです。それよりも、われわれが開発したこの水耕栽培システムが普及して、新たな雇用が生まれ、地元の中小企業が活性化してくれたらいいですね」

【10時のグッとストーリー】

八木亜希子 LOVE & MELODY 2016年7月9日(土) より

八木亜希子LOVE&MELODY