光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」

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第2回  光GENJI『ガラスの十代』  

最近、ますます加熱するアナログ盤ブーム。そしてシングル盤が「ドーナツ盤」でリリースされていた時代=昭和の楽曲に注目する平成世代も増えています。
子供の頃から歌謡曲にどっぷり浸かって育ち、部屋がドーナツ盤で溢れている構成作家・チャッピー加藤(昭和42年生)と、昭和の歌謡曲にインスパイアされた活動で注目のアーティスト・相澤瞬(昭和62年生)が、ターンテーブルでドーナツ盤を聴きながら、昭和の歌謡曲の妖しい魅力について語り合います。

光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」

チャ:どうも、皆さん、一週間のごぶさたでした……って、これも昭和のフレーズだなぁ。こんにちは、チャッピー加藤です。

相澤:あ、僕、それわかりますよ! こんにちは、玉置宏じゃなくて、相澤瞬です(笑)。

チャ:さすが、わかってらっしゃる!……てなわけで、今週も気合入れて銀座のスナックを借りたんだけど、「先週と服がいっしょ!」とか、そういう野暮なツッコミはしないように。

光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」

相澤:で、先週に続いて、光GENJIの話をしたいんですけど……当時のファンの方からも、かなり反響をいただきまして本当に嬉しいです。皆様ありがとうございます!

チャ:やっぱ、時代を創ったグループだからなあ……。改めて光GENJIの凄さを思い知らされたけど、じゃ、さっそく始めますか。


■『ガラ十』は立浪の応援歌

光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」

チャ:さて、今回取り上げる曲は『ガラスの十代』。1987年11月26日発売、光GENJIのセカンドシングルで、作詞・作曲は飛鳥涼。先週取り上げた『パラダイス銀河』と並ぶ彼らの代表曲だけど……さっそく聴いてみますか。(♪ターンテーブルで演奏)

相澤: もう、冒頭からもの凄く好みですね! 旋律は歌謡曲なんだけど、ニューウェーヴっぽいというか。

チャ:ああ、なるほど。当時デュラン・デュランとか流行ってて、「ニューロマンティック」って言ってたけど、確かにもろ影響受けてるね。

相澤:「ニューロマンティック」、なんていい言葉なんだ……(しみじみ)。アレンジャーさんはどなたですか?

チャ:編曲は佐藤準で、チャゲアスも手掛けたり、おニャン子クラブの『セーラー服を脱がさないで』もこの人の仕事だけど、こういうアレンジはお手の物だから。

相澤:この頃の歌謡曲って、ビートが強くなってくるというか、骨組みがシッカリしてますよね。後のビーイング系にもつながってきますけど。いい歌で、踊れる。この時代に青春したかったです!

チャ:あと『ガラ十』ってね、ドラゴンズファンの自分にはまた別な思い入れがあって……実は、立浪の応援歌だったんですよ。

相澤:タツナミ、ですか・・・!

チャ:そう、この曲が出た87年に、PL学園で甲子園春夏連覇を達成して、鳴り物入りでドラゴンズに入団したんだけど、高卒1年目で、開幕戦からいきなりレギュラーになっちゃったのね。

相澤:へー、スゴいですね!

チャ:しかも、ショートという難しいポジションで、だよ。それまで宇野っていう選手が守ってたんだけど、キャンプで立浪の守備を見て「オレより上手い…」と(笑) 。ちなみに宇野は「ヘディングキャッチ」で有名な選手ね。

相澤:ヘディングキャッチ……(笑)!? ベイスターズが優勝した時期の話はよく分かるんですが(笑)。駒田、谷繁、波留……

チャ:あ、いかん、野球の話になってる(笑)。で、当時立浪はまだ18歳だったから、『ガラスの十代』がぴったりハマったというね。

相澤:チャッピーさんにとっては、野球ソングでもあるんですね。

チャ:あとこの曲って、高校野球の応援で、今でもブラバンがよく演奏するんだよね。先週も言ったけど、光GENJIのピュアなところが、高校野球にマッチするのかも。


■光GENJIは「心の浄水器」

相澤:アイドルさんって、きっと普段は自分が全然思ってもいないことを歌っていたりもするじゃないですか。いろんな方々に、観たり聴いたりしていただく中で、色々イメージが勝手についてしまう。

チャ:うんうん。

相澤:けれど、そういった色々な期待を背負って、職業を全うするアイドルさんを、個人的に凄く尊敬していて。「アイドルでい続ける」って、本当にエネルギーのいることだと思うんです。

チャ:確かにそうだよね。そこを割り切ってシレッと歌いあげるから、アイドルは凄い。

相澤:彼らは自分たちのことを「ガラスの十代」なんて日常生活では絶対呼ばないと思うんですけど、光GENJIさんは逆に、大人に代弁されたことで、彼らの心の中にある本当の繊細さだったり、真の美しさが出たのかなと思ってます。

チャ:なるほどねー。深いな。

相澤:実は自分自身より、他人のほうが自分のことを知っていたりしますからね。

チャ:飛鳥涼が光GENJIをイメージして書いた詞が、彼らの当時の心情とぴったりシンクロしていた、ってことなんだろうね。レコーディングのとき、この歌詞を読んで泣いたメンバーもいたそうだけど、そういうことか。

相澤:この組み合わせだからこそ生まれた、傑作ですよね!

光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」

チャ:光GENJIって、売り出す側にとっては、ずっと命題を抱えてたグループだと思うのね。

相澤:と、いいますと?

チャ:この『ガラスの十代』と、次の『パラダイス銀河』があまりにも売れてしまったがために、「ピュアな少年」っていうイメージが世間に定着しちゃって、そこから彼らをどう成長させていくかが、すごく難しかったんじゃないかな。

相澤:さっき話してたイメージがあまりにも強すぎたんですね。全員いつか、『ガラスの十代』ではなくなりますもんね。

チャ:そう。で、実際、彼らはアーティストとして成長していったけれど、売り上げ枚数では『ガラ十』と『パラ銀』を超えられなかったんだよね。きっと悔しい思いもあったと思うよ。

相澤:その辺もなんか、切ないですね……。

チャ:オレ、今年51になったんだけど、今もこの曲聴くと、グッと来るんだよね。自分がピュアだって言うんじゃなくて、こんなに汚れちゃってるんだけど(笑)、光GENJIを聴くと心洗われるんだよ。
なんでだろ?

相澤:それは、チャッピーさんの心の奥底にあるピュアな気持ちがよみがえってくるからじゃないですか?

チャ:そうなのかな……。いわば、浄水器みたいなもんか。この歌って、オレみたいに薄汚れた人間ほど心に響くんだよね。

相澤:(笑)。飛鳥さんは、光GENJIというグループを通して、疲弊しきった人々に大切なことを伝えたかったのかもしれませんね。

チャ:これから、心が濁ってきたと思ったら、このレコードを聴くことにします。ドーナツ盤セラピーだね(笑)。


……次回は、太田裕美『木綿のハンカチーフ』について二人が熱く語ります。お楽しみに!

【チャッピー加藤/Chappy Kato】
光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」
昭和42年(1967)生まれ。名古屋市出身。歌謡曲をこよなく愛する構成作家。好きな曲を発売当時のドーナツ盤で聴こうとコツコツ買い集めているうちに、いつの間にか部屋が中古レコード店状態に。みんなにも聴いてもらおうと、本業のかたわら、ターンテーブル片手に出張。歌謡DJ活動にも勤しむ。
好きなものは、ドラゴンズ、バカ映画、プリン、つけ麺、キジトラ猫。

【相澤瞬/Shun Aizawa】
光GENJI『ガラスの十代』は「心の浄水器」
昭和62年(1987)生まれ。千葉県出身。懐かしさと新しさを兼ね備えた中毒性のある楽曲を、類い稀なる唄声で届けるシンガーソングライター。どこまでもポップなソロ活動、ニューウェーヴな歌謡曲を奏でる「プラグラムハッチ」、 昭和歌謡曲のカバーバンド「ニュー昭和万博」など幅広く活動。
好きなものは、昭和歌謡、特撮、温泉、うどん、ポメラニアン。

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