社会の中心よりちょっと外れたところにいる人たちを描きたい。『セトウツミ』大森立嗣監督インタビュー<後編>しゃベルシネマ【第32回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

大森立嗣監督インタビュー<前編>では、本作でメガホンを取った大森監督ならでは撮影エピソードや、本作を手がけるにあたってのこだわりについて伺いました。
今回は、ダブル主演を務める池松壮亮さんと菅田将暉さんの素顔に迫ります。

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八雲ふみね(以下、八雲):池松壮亮さんと菅田将暉さんは、監督からご覧になってどういう俳優さんですか?

大森立嗣監督(以下、大森監督):池松くんは、映画が本当に好きなんだなぁ~という印象。
僕のようなタイプの演出家と一緒に映画作りをするのは久しぶりだったみたいで、結構楽しんでましたよ。映画制作って、作品ごとにルールが違う。監督が変われば、もちろんスタッフ編成も変わるし、演出の仕方や撮り方も変わってくる。
そんな中で“大森組”というものに興味を持ってくれているのが伝わってきました。
そしてやっぱり、芝居が上手い。

八雲:そうですね。どんな役でも、常に自分のものにしてらっしゃるのが伝わってきます。

大森監督:実年齢よりも大人っぽいんだけど、笑うととてもチャーミングな人ですよね。実は撮影を進めていくうちに、だんだん池松くんの笑顔が撮りたくなってきて。それで携帯電話の光を顔の下から照らす芝居を提案したんですけど…。

八雲:(池松さん演じる)内海にしてはハジけた行動ですよね。

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大森監督:うん。でもこのシーンを撮影することによって、池松くんも「こういう内海もアリなんだ」と思ったみたいで。それからさらに、内海のキャラクターが膨らんで存在感が増しました。芝居の勘がいいんでしょうね。

八雲:菅田さんはいかがですか?

大森:菅田くんは自分のことを「理系タイプ」だと言ってるように、頭の回転が早くて論理的に話が出来る人…という印象。でも芝居になると、それを全部壊せる不思議な人ですよね。

八雲:より自由度が広がるんですか?

大森監督:そうですね。テストの段階で「菅田はこのくらいの芝居をやるだろうな」って大体予測を立てるんだけど、それを遥かに超えてくるんです。

八雲:へぇ〜、監督の想像を越える芝居ってスゴイですね。

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大森監督:しかも若いんだけど、カッコつけたところが全然なくて。
自分がどう撮られているか、どう映っているか、俳優なら誰でも気になるところだと思うんですけど、彼はそういうことを気にせず自分の芝居を投げ出せるんですよね。
「どんな風に映ってても気にしない!」みたいな感じ。

八雲:思い切りがいいのでしょうか。関西弁での会話劇、というと、テンポのいいスピード感がある会話を連想する人もいると思うんです。でも二人の芝居は丁々発止の漫才風ではなく、じっくり間合いを取った会話として成立している。「そうか、この間合いか…。」と、映画を見たときにハッとしました。しかも私の場合、映画を見た後で原作の漫画を読んだんですが、その時も池松さんと菅田さんの『セトウツミ』の間合いでページをめくっていることに途中で気付いて…。ひとりでクスッと、ほくそ笑んでしまう面白さに溢れている、独特の間合いなんですよね。

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大森監督:僕も先日、上海国際映画祭での上映で観たとき「この間合いか…」と、あらためて思いましたね。観ているこちらがちょっと不安になるぐらい、じっくりと間を取ってますよね。

八雲:ジリジリとした感じ?

大森監督:そうそう。でも僕もこういう芝居は嫌いじゃないので、ニヤリとしてしまいました。

八雲:この独特の間合いも、お二人の芝居から自然に生まれたものなのでしょうか。

大森監督:そうです。「こういう空気感でやってほしい」とこちらからリクエストしてしまうと、どうしてもインチキくさいものになってしまうんですよ。やっぱり、俳優たちから自然に派生したものでないと…。
一般的に俳優さんたちは、ついつい間を埋めなきゃいけないような気になってしまう傾向がある。だから撮影中、「無理に間を埋めようとしなくていいよ」と、二人に言った記憶があります。

八雲:大森監督から見た「池松菅田コンビ」はどうですか?
完成披露試写会の舞台挨拶では、初対面でほとんど口を利かず不安になったとも仰ってましたが…。

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大森監督:いいコンビだと思いますよ(笑)。お互いにマイペースなところがいいですよね。撮影の合間も喋ったり喋らなかったり、ベッタリと仲がいいわけではなく。でも毎日、一緒にご飯を食べてたみたいだし…。
撮影中はキャストもスタッフも同じホテルに泊まってたんですけど、夜、僕が大浴場に行くと、風呂場で二人、次の日に撮影するシーンのセリフ合わせをしている時もありましたよ。

八雲:そういったコミュニケーションの積み重ねで、池松さんと菅田さんならではの「セトウツミ」コンビが見事に完成したんですね。
さて、いよいよ公開されました。お客さんには、この映画をどんな風に観てもらいたいですか?

大森監督:もう何も考えずに楽しんでもらえたら。上映時間も短いですし、気楽に観てもらえると嬉しいですね。

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写真は『セトウツミ』初日舞台挨拶の様子。
完成披露試写会にも登場した池松壮亮さん、菅田将暉さん、大森立嗣監督に加え、この日は中条あやみさんも登壇し、より華やかに。
菅田さんのおじいちゃんが撮影現場にやって来たエピソードを、何故か池松さんが嬉々として話し出すなど、相変わらずユル〜いリズムの“セトウツミ”トークに、満員のお客様も大喜びでした。

「この映画に限らず“世間からちょっと外れたところにいる人たちを描きたい”というのが、僕の中での共通テーマ」と語る、大森立嗣監督。
確かに、この『セトウツミ』の主人公たちも、一般的な学校生活の外側にいる人たちという感じ。劇中でも、学校の話は全然しませんしね…。

今回お話させていただいて、人物描写が巧みな監督さんだけあって、俳優さんの細やかな部分まで的確に捉えてらっしゃる印象を受けました。

池松壮亮さん、菅田将暉さん、大森立嗣監督。
このトライアングルだからこそ、些細な日常生活に転がっている面白みを体現することが出来た映画『セトウツミ』。
是非、映画館でお楽しみください!

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大森立嗣プロフィール
1970年東京都出身。
2005年『ゲルマニウムの夜』で監督デビュー。
独特の世界観と圧倒的な映像美でロカルノ国際映画祭コンペティション部門、東京国際映画祭コンペティション部門など、多くの映画祭に出品され、賞賛を浴びた。
ほか『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010年)、『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)、『まほろ駅前狂騒曲』(2013年)、『ぼっちゃん』(2013年)。
『さよなら渓谷』(2013年)ではモスクワ国際映画祭審査員特別賞を受賞。
鋭い人間観察と高い演出力で、日本映画界のみならず世界中が注目する実力派監督。
父は前衛舞踏家で俳優でもある麿赤兒。弟は俳優の大森南朋。

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<セトウツミ>
新宿ピカデリーほか全国公開中
監督:大森立嗣
原作:此元和津也 (秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ、宇野祥平 ほか
©此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013  ©2016映画「セトウツミ」製作委員会
公式サイト http://www.setoutsumi.com/

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