18歳選挙権と消費税【イイダコウジ そこまで言うかブログ】

 いよいよ今週末、10日(日)に参議院選挙の投票日を迎えます。すでに様々な報道をされていますが、今回の選挙は選挙権年齢が18歳からに引き下げられて初めての国政選挙。初めて選挙に臨む若者たちがどう考えているのか、あるいは政治の側が若者に向けてどんな政策を打つべきかなど、いろいろな角度からの解説が出ています。一方で今回の参院選は総理から「2017年4月に予定されていた消費税増税を延期する決断をした。その是非を民意に問いたい」という投げかけがありました。ということで、この2つを重ね合わせ、消費税増税延期が若者にどういった影響を与えるのかを書く記事が多く見られます。
『世代格差、解消先送り=消費増税延期、進まぬ再配分【16参院選】』(6月18日 時事通信)http://goo.gl/Fi3igL
<消費税増税で得られる増収分は、年金を含め増え続ける社会保障費用に充てることが決まっている。「持てる者」から「持たざる者」へ富を再配分するのが税の機能。消費税増税の先送りで、子育て支援や医療・介護の低所得者支援などの財源確保が不透明となった。
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の吉川洋会長(立正大教授)は「とにかく格差が拡大している。これは公平性や社会の安定性の観点から大問題だ」と指摘。「社会保障制度は格差のストッパー。その社会保障が財政面から行き詰まっている」と語る。>
『18歳選挙権 社会保障負担増 その先のために』(6月19日 毎日新聞)http://goo.gl/ujFAaq
<未来は急には来ない。消費増税が延期され、年間4兆円程度の借金返済が先送りになったことで、後で返す借金が増えることにもなりかねない。一方で、格差や貧困が大きな問題になっている。未来を少しでも明るくするには、今を考えるしかない。>
 18歳選挙権と社会保障負担、消費税増税を絡めた記事には大体今挙げた記事と同じような論立てをする傾向があります。まとめると、
①消費税は社会保障の財源とされている
②消費税の税率を上げた分で社会保障の充実を図るとしていた
③ところが、増税を延期した
④したがって、社会保障の充実も完全には実施できない
⑤すると、再配分が十分にできず、格差は解消されないまま
⑥さらに、財政健全化の道のりも遠のき、国債が暴落する~!
⑦それらのしわ寄せは若者に押し寄せる
といったもの。若者の側もこれに沿った発言をしている記事もありました。
『<参院選 大人って…>(上)世代と負担 借金膨張で若者にツケ重く』(6月27日 東京新聞)http://goo.gl/cQAR0c
<安倍晋三首相は消費税率10%への引き上げを再延期した。増税で充実させると約束した社会保障政策への悪影響はもちろん、負担先送りに伴う若者の痛みも増えかねない。
 「上げるべきだった。目先ばかり考える人間が多いから、将来の話につながらない」(斎藤さん)
 「私たちの下の世代の負担が少しでも減るのなら上げるべきだった」(藤本さん)
 若者二人はいずれも首相の判断に否定的だった。>
 ここで若者を批判するのは趣旨ではありません。私は増税のリスクについてろくに説明することなく、増税延期のリスクのみを言い募る大人の側に憤っているのです。
 今挙げた記事を煎じ詰めれば、「格差解消のために消費増税が有効」という言説ですが、これがいかに詭弁かというのは少し考えればわかることです。消費税は所得に関係なく、基本的に買い物をすれば取られる税金。食費や光熱費といった生活必需品を買えば所得が低くても取られてしまいます。所得が低い層は入りと出がトントンか少し貯金が出来れば御の字という家計の状況。その出の部分に税金がかかってきますから、負担感は大きい。
 一方、所得が高い層は入りは大きいけれど出の部分は収入ほど大きくは変わりません。収入が100倍であっても、食費を100倍にまですることは容易ではありませんからね。その分、所得が高い層は消費税の負担感は小さいわけです。
 さらに問題なのは、もともと負担感の大きい消費税を増税されると、所得の低い層の暮らし向きがさらに悪くなるということ。支出をさらに切り詰めに切り詰めるとなると、そんな中で貯金が出来るのか?異性と付き合えるのか?結婚できるのか?子供を作れるのか?「負担の先送りで将来の痛みが増える」と言いますが、まずは今足元の痛みを取り除かなければ将来の芽を摘むことになってしまわないでしょうか?たとえば、経済的な事情で結婚をあきらめる、出産をあきらめるとなれば、そもそも将来世代の社会への登場の可能性を積んでいることになります。そうまでして消費増税することにどんな正義があるのでしょうか?「将来世代への負担先送りをやめろ!」と言って行った政策が、その将来世代の社会への登場を妨げているとすればこんな皮肉はありません。事実、我が国の合計特殊出生率は残念ながら今後も上がる気配がありません。
 消費税には逆進性がある以上、税率を上げて行けば低所得層と若年層への負担感が増していきます。その事実を言わず、「君たちの将来のために消費増税が必要だ」というのは詭弁以外の何物でもありません。有権者教育が重要だと繰り返されていますが、このように教えることの中身によっては正確なことが伝わらない恐れもあるようです。

(飯田浩司アナウンサー「そこまで言うかブログ」 2016年7月4日)

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