老いも若きもリュック 鞄業界 “ビジネスリュック”が新たなユーザー獲得へ

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ひと昔では考えられない風景を見かけることがあります。リタイアした人たちが、ハイキングや山登りに行くときにリュックを背負う。これはずっと前からありました。しかし、スーツ姿のサラリーマンがリュックで通勤する。最近、こういう姿よく見ませんか?
これまでなら、スーツには手提げ型のブリーフケース。ところが今、20代から40代のサラリーマンに広がっているのがスーツにリュック。

男性向けのカバンというのは、なかなかヒットに恵まれてこなかったのですが、今、『サラリーマン向けのリュック』が大ヒットとなっているのです。その証拠に我が番組関係者も・・・報道部の畑中秀哉デスクは流行する前からリュック派、森田耕次解説委員、南條ディレクターも最近リュック派に変わりました。

こうしたサラリーマンが持つリュックに名前が付いています。その名も「ビジネスリュック」。なぜサラリーマンがビジネスリュックを持つようになったのか、その背景について探ってみました。

PORTER LIFT DAY PACK 吉田カバン YOSHIDA & CO., LTD.

PORTER LIFT | DAY PACK | 吉田カバン | YOSHIDA & CO., LTD.

まず、日本の大手カバンメーカーのエースでは、「ビジネスリュック」の販売売上高が、2011年と比べ、2016年は489%に増加。およそ5倍です。一言に「リュック」と言っても、サラリーマンが持つリュックは形に特徴があります。

山登りやハイキングに行く時のようなリュックは、赤や青、黄などカラフルで、ナイロンが柔らかくて、丸みがあるもの。一方で、ビジネスタイプのリュックは黒や紺、グレーなどが主流で、四角い。ですから、カチッとしたスーツにも合うようなデザインになっているのです。

では、スーツに合うようにデザインがよくなったので、ビジネスリュックが売れ始めたのか?いえいえ、それより前に決定的な理由がありました。それは、2011年の東日本大震災です

あの時、重い荷物を手提げ型の書類バックで下げて、家までの長い距離を歩いて帰るのは大変だと、誰もが思った。これが、リュックが大いに注目される、直接的なきっかけとなったのです。
さらには、震災以降に起こった自転車通勤の増加。自転車に乗るなら、やはりリュックが、負担がない。

TANKER 3WAY BRIEF CASE 吉田カバン YOSHIDA & CO., LTD.

TANKER | 3WAY BRIEF CASE | 吉田カバン | YOSHIDA & CO., LTD.

また2011年夏には、原発停止の影響で電気の節約を企業に求める動きもあり、「スーパークールビズ」という考え方も出始めた。覚えているかと思いますが、ノーネクタイでポロシャツを着るようになり、ビジネスシーンで「ファッションのカジュアル化」が見られるようになった。そこで「ダークスーツに書類バッグ」という従来の考え方が崩れ、「スーツにリュックもアリ」という考え方が定着してきたのです。

世の流行を見ますと、男性発信での流行というのは圧倒的に少ない。だいたいはOLや中高年の女性や女子高生なのですが・・・この『ビジネスリュック』は、数少ない、いわば1強の男性発信のブームなのです。

このビジネスリュックの流れに、本来なら山やハイキングを得意としてきたカジュアルなアウトドアメーカーも乗っています。アメリカ生まれの「グレゴリー」や「ザ・ノースフェイス」もこぞって、黒の四角四面のビジネスリュックを出し、大ヒットしています。

PORTER STAGE 2WAY RUCKSACK 吉田カバン YOSHIDA & CO., LTD.

PORTER STAGE | 2WAY RUCKSACK | 吉田カバン | YOSHIDA & CO., LTD.

さて、日本におけるビジネスバッグの老舗メーカー『吉田カバン』、ご存知の方も多い事でしょう。「PORTER」「Luggage Label」(ラゲッジレーベル)などのシリーズで有名で、メイドインジャパンのこれら製品をわざわざ海外から観光客が買いに来るくらいです。商品のメインターゲットは30代40代、7:3で男性が多い。

この吉田カバンは早くから、なんと1991年からリュック型のビジネスバッグを出していました。「ブリーフケース(書類バッグ)」でありながら、「肩掛け」にもでき、さらには「リュック」として背負える。3way(スリーウェイ)仕様の商品の先駆けだったのです。

こんなに早くから作っているとはいえ、やはり大ヒットとなったのは2011年の東日本大震災以降。

服装のカジュアル化や自転車通勤などリュックが見直された理由に加えて、吉田カバンがもう一つ理由として挙げるのは、スマートフォン。電車の中など、移動中でも、仕事でスマートフォンを使用する状況が増え、こうした場合においても、両手が使える仕様のリュックは、便利かつ実用的だからです。

PORTER HYBRID 3WAY BRIEF CASE 吉田カバン YOSHIDA & CO., LTD.

PORTER HYBRID | 3WAY BRIEF CASE | 吉田カバン | YOSHIDA & CO., LTD.

吉田カバンでも「ビジネスリュック」の需要がますます高まってるそうで、様々な機能やデザインを展開させています。

たとえば・・・「パソコンやタブレットのピッタリ収納できる」「電源やルーター、スマホなどが入る収納ポケットを多く設ける」「四角い形で書類が折れにくい構造」「スーツなどビジネスシーンでも差し支えない素材感」「背負うので、雨に濡れることも考えた防水・撥水性の高さ」「カバン自体の軽量化」そして、置いたときに「カバンがそのまま立つ=自立する仕様」

最近のポイントとしては・・・満員電車を配慮して「薄いフォルム」にこだわっています。

さらには、大切なスーツを痛めないように、リュックストラップやバッグの背面に、アタリの柔らかい素材を採用して、摩擦にも対応。たかがビジネスリュックといえども、これほどまで考えられているのかと驚くばかりです。

PORTER VIEW DAY PACK(S) 吉田カバン YOSHIDA & CO., LTD.

PORTER VIEW | DAY PACK(S) | 吉田カバン | YOSHIDA & CO., LTD.

こうしたビジネスリュックの定着・普及の一方で、就活真っ只中の学生たちが意外と頭を悩ませているのが・・・「就活にビジネスリュックを持って行ってイイのかどうか」

学生にとってリクルートスーツや靴など何かと物入りで、ビジネス用の書類バッグ・ブリーフケースをわざわざ買う必要があるのか。出来るなら学生時にも使えるリュックの方がありがたいので、ビジネスリュックにしたいところ。こうした悩みを聞きつけて、先日、日経新聞が、製造業やサービス業など大手の会社30社ほどにアンケートを実施したところ・・・

リュックNGは3社のみ。実に24社がリュックOKでした。学生の個性を尊重するという理由と、企業も「リュックの使い勝手の良さを認めている」という背景があった、ということです。

男性のビジネスリュックの定着が波及して、女性にもリュックのブームが広がっています。スーツに合うビジネスリュックは、デザインでも機能性でも日本で大変な進化を遂げています。最近ではインバウンド効果も期待できるのではないかという声も上がっていて、統計などがでるのはこれからですが、リュックを買いに来る外国人が増えているとカバン店では実感しているようです。

3月27日 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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