元ロシア・スパイ襲撃~宿命的なイギリスとロシアの敵対関係とは?

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3/15(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①

予想される英・露外交官の追放合戦
6:31~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター佐藤優(元外務省主任分析官・作家)

元ロシア・スパイ襲撃~宿命的なイギリスとロシアの敵対関係とは?

政治 国家安全保障会議特別会合 英国のメイ首相

元ロシア人スパイが襲撃される~ロシア政府、情報機関あるいはマフィア絡みか?

イギリス南西部ソールズベリーで、ロシア人の元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんが襲われ、重体となった事件。襲撃には神経剤が使われていた。この事件に関してロシア政府は一切の関与を否定している。イギリスとロシアの宿命的な関係について、佐藤優がイギリス軍学校での経験をもとに解説する。

高嶋)ロシアの元スパイが、イギリス南西部のソールズベリーで、娘と2人でいたところを猛毒で襲われ重体。神経剤が使われていたようです。メイ首相がロシア側にいろいろ説明を求めましたが、「神経剤がどのように英国内で使われるに至ったか」について、何も説明がなかった。大統領選挙も目前ですが、素朴に考えてロシアがこんな時期にこんなことをやりますか?

佐藤)ロシア人の誰かがやったのはほぼ間違いないと思います。ただ、そこにロシア政府、あるいはロシアの情報機関が関与しているのか、それともマフィア絡みか? そこは誰にも分からないですね。いずれにせよ重要なのは、仮に「ロシア政府がやった」とイギリスが合理的に推定していても、表に出すかどうかは、けっこう高いハードルがある。裏で処理してしまうこともよくある。イギリスもロシア領内で相当のことやっていますからね。
そうなると、表に出すというのは、必ず追放を食らいますから。ロシアの外交官を追放すれば、必ずロシアもイギリスの外交官を追放してきますからね。

高嶋)ロシアの外交官23人が追放?

佐藤)すると、数合わせでイギリスの外交官23人が追放されるのです。

高嶋)数合わせですね。

メイ首相が事件を表に出したのは「強いイギリス」を演出するため

佐藤)ここのところに持ってきたということは、政治上、分かります。このタイミングでロシアに対して強く出る。つまり「強いイギリス」を演出する計算がありますね。
もちろんロシアの「まったく無関係」という言い分も、私は信用していません。なぜなら、こんな危険な物質が入手可能なのは、軍や諜報機関が保有している物に接近し、これを入手できたということです。となると、ロシア内の犯罪組織や情報機関の関係ということになりますよね。

高嶋)Novichok(ノビチョク)というそうですね。神経剤で、VXより危険だとか。

佐藤)ええ。私も初めて聞きました。ようするに、通常のお店で売っている物ではないし、普通に作れるわけでもない。そこは、ロシアの何らかの政府機関の管理不行き届きみたいなものがあるわけです。

高嶋)素朴な質問です。戦時中とか、一触即発の時期ならスパイの活動、活躍はわかる気がするのですが、いまは共に戦争する気はないと思うのです。いまスパイが奪い合うのは、「技術」とかですか?

仮想敵国である英・露~日常化している外交官の追放合戦

佐藤)いや、そうではなく。あの人たちは常に性悪説の原理なのですよ。ロシアにとってもイギリスにとっても、互いに仮想敵国なのです。これは19世紀から変わっていません。「グレート・ゲーム」というのをやっていて。ペルシャやインドでも、互いの影響力争いをした。地政学上、ぶつからざるを得ないのです。なぜなら、イギリスは海洋国家で、ロシアは大陸国家。海洋国家と大陸国家というのは、宿命的に勢力圏争いをやる。そこから来ているのです。私はイギリスの軍学校で勉強したのですが、その軍学校にある外国語の学科は、ロシア語科とアラビア語科とドイツ語科。これらはドイツも含め、イギリスにとっての仮想敵国です。私の同級生でイギリス軍の将校がいたのですが、何人もロシア語の専門家を作っている。「そんなにポストがいるのかな?」と思ったら、「いるんだよ。我々は追放要員なんだよ」と。「互いにときどき、ロシアとイギリスは追放合戦があるから、追放のときに備えている要員だ」と。それで、彼はモスクワに行ったのですが、ある日いなくなってしまった。「追放」ですよ。だから、その追放要員を、最初から何十人も毎年作っている。それで送り込んで、追放になったら次々に送り込む。それくらい追放が日常的にある前提で準備しているのです。

高嶋)「仮想敵国」に「いつものこと」ね。

佐藤)いつものことなのです。メイさんというのは、ロシアに対して強く出ることで、自分の権力基盤を強化しようとしているのでしょうね。

高嶋)そんな関係にも関わらず、ロシアのスパイがイギリスに逃げてくるわけですね?

佐藤)逃げてくるのは、「関係が悪いから、イギリスが守ってくれるだろう」という計算ですからね。ただ、今回の被害者はそんなに大物じゃないですからね。合理的な理由が見つからない。もう1つ、「マフィアの線で何かあったのか」をちゃんと潰しておかないと、これはよく分からないですね。

 

高嶋ひでたけのあさラジ!
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