報道部畑中デスクの独り言

東日本大震災から7年① 首都圏の被災地はいま?

【報道部畑中デスクの独り言】

(今回の小欄は爆発の画像もございます。閲覧の際はご注意下さい)

コスモ石油千葉製油所 現在

現在のコスモ石油千葉製油所

2011年3月11日午後2時46分、あの東日本大震災から今年で7年となります。ニッポン放送報道部では今年も各番組の中で震災についてレポートしていくほか、11日には午後1時~3時20分まで特別番組「東日本大震災から7年『本気の備えはできていますか?』」を放送します。岩手・宮城・福島の東北各県で甚大な被害をもたらした震災ですが、関東地方でも茨城県や千葉県では津波の被害がありました。また、千代田区では九段会館の屋根が崩れたり、千葉県浦安市などの臨海部では液状化の被害も出ました。

番組では東北の被災地の“いま”をお伝えしながら、関東の被災地についても、そしていつ起きてもおかしくない首都直下地震に対する備えは十分か…?こうした視点でも迫っていきます。

私が取材した被災地の現状については放送の中でもお話ししていく予定ですが、小欄ではこれに先立ち、画像も交えてお伝えしたいと思います。今回改めて取り上げるのは…

製油所爆発 監視カメラ 市原市消防局

製油所爆前後の監視カメラの映像 爆発の瞬間 映像は「真っ白になった」(市原市消防局提供)

製油所 市原市消防局

2011年3月11日 製油所の様子(市原市消防局提供)

千葉県市原市

「空一面がオレンジ色になった」「逃げ始めている時に“爆発”が追いかけてきた」…

住民、消防関係者の生々しい証言です。市原市の当時の震度は5弱でしたが、臨海部にあるコスモ石油の千葉製油所が出火、本震発生後の約2時間後に爆発に至りました。午後5時4分、現場から約6km離れた監視カメラの映像は「オレンジ色」を通り越し、ハレーションを起こしたかのごとく、真っ白な絵を映し出していました。製油所は11日間燃え続け、市原市は爆発の11分後、五井地区の36367世帯、85024人に避難勧告を出します。現在に至るまで、市原市でこれだけの世帯・人数に避難勧告を出した例はありません。炎と黒煙だけでなく、避難所となった付近の小学校では爆風で窓ガラスが割れたと言います。そこに避難していた住民はさらに安全な場所への移動を強いられました。

消火活動 市原市消防局 震災

爆発から3日後の夜 消火活動が続く(市原市消防局提供)

コスモ石油のHPなどによりますと、原因となったガスタンクは当時、検査作業のために中に水を張っていました。当然のことながら水はガスより重い…揺れのため、重さに耐えられなくなったタンクの筋交いが破断して倒壊、出火・爆発に至ったということです。つまり、通常ではない状態という“不運”が重なったとも言えます。また、市原市消防局では再度の爆発など二次災害を防ぐため、必要な時間をかけて消火を行ったと話しています。

とは言え、うず高く上がる炎と黒煙は映像的に大きなインパクトを与えました。多くの教訓も残し、震災をきっかけに様々な対策が講じられるようになりました。その一つが…

防火水槽

防火水槽 地下から約10トン分の水をくみ上げる

ドラゴン・ハイパー・コマンド・ユニット

何やら物々しい名前ですが、石油コンビナートなど「エネルギー産業基盤」の特殊災害の対応に特化した態勢が整えられました。これまでの緊急消防援助隊に加えて、最新鋭の車両を投入、その中核となるのが、「大型放水砲搭載ホース延長車」と「大容量送水ポンプ車」です。防火水槽からくみ上げた水を1キロ先まで送ることもできるホースに、毎分8000リットル以上の放水能力を持ちます。ちなみに従来の緊急消防援助隊の能力は毎分3000リットル。2倍以上の放水能力となります。この放水訓練を見る機会がありましたが、防火水槽の水位は見る見るうちに下がり、放水のすさまじい勢いを目の当たりにしました。その勢いは軽自動車を横転させてしまうほどの威力だという説もあります。

大型放水砲搭載ホース延長車 放水 訓練

大型放水砲搭載ホース延長車からの放水(訓練)

このユニット、東日本大震災を契機に総務省消防庁、つまり国が配備を決定、その第一号は千葉県市原市と三重県四日市市でした。その後、静岡市、神戸市、岡山県倉敷市、鹿児島市に配備。まもなく北海道苫小牧市、横浜市にも配備され、2018年度末までに前記8カ所を含め全国12の地域の編成を目指しています。消防庁によると、1セットは製作に1年、予算は約1億5000万円という代物です。配備は消防庁が行い、自治体の消防にメインテナンス費用を除き「無償貸与」、その代わり、ひとたび災害が起きた場合、管轄外でも出動することが求められるということです。

大型放水砲 大型放水砲搭載ホース延長車

(左)大型放水砲搭載ホース延長車、車体後部に折り畳まれたホース 1㎞まで延長できる (右)大型放水砲

そして、このユニットはまだ「発展途上」、実は無人で消火や偵察を可能にする「消防ロボット」の開発が進められており、これをもってユニットは「完結する」ということです。近く実証配備も予定、ユニットは進化を続けているのです。

ちなみにこうした車両があれば誰でも毎分8000リットルという放水ができるというわけではありません。市原市消防局警防救急課の天野正次課長は、従来の緊急消防援助隊も加えて、体制を緻密に組むことで初めて実現できると話します。重要になるのは人材教育。震災、爆発事故から7年、当時消火の最前線に携わった人たちも年々少なくなっています。また、消防と言えども人事異動は避けられません、異動直後の人材は2カ月みっちり教育を施し、実践能力を身に着けます。司令塔としての役割は隊員の命を守り、士気が下がらないよう配慮することだと言います。

爆発 タンク 放水 市原市消防局

(左)爆発から6日、タンクへの放水続く(市原市消防局提供) (右)爆発から6日、消火活動(市原市消防局提供)

一方、市原市本体でも対策を講じています。第一本庁舎が新築、最新の耐震構造が施され、先月13日に運用を開始しています。食料などの備蓄品も従来の2日分から3日分に強化されました。さらに、7年前の震災で特徴的だったのは道路渋滞。市内の道という道が車で埋まりました。この反省から、住民や町会、自治会の人たちに避難所のカギをあらかじめ渡しておくことになったそうです。

市原市役所 第一庁舎

新装となった市原市役所第一庁舎

市原市危機管理課の佐久間重充課長によれば、市原市は「日本の縮図」と言われるそうです。臨海部に世界的な企業、市街地、田園風景、「チバニアン」に代表される歴史的なものも存在します。その一方で、災害は地震だけでなく、養老川の氾濫など土砂災害の危険もはらみます。それぞれの地域の特性に合わせて対策をとるために「市原防災100人会議」なる会合を開き、地域の住民が防災計画を立てる制度を進めていると話していました。

ドラゴン・ハイパー・コマンド・ユニット 訓練 大型放水砲搭載ホース延長車 大容量送水ポンプ車

(左)大型放水砲搭載ホース延長車(左)と大容量送水ポンプ車(右手前)ユニットの中核をなす (右)ドラゴン・ハイパー・コマンド・ユニット(訓練)

取材を通して改めて感じたのは、災害対策には終わりはないということ。よく震災の記憶を「風化させない」と申しますが、防災対策を絶えず進化させていくこと、そして対応能力を後進に伝え、維持していくこと…風化という「敵」と戦うために最も重要なことの一つではないかと考えます。

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